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1. 司法書士とは? 弁護士との違い
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1-1. 司法書士|登記関係の業務がメイン
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1-2. 弁護士|法律全般の業務に対応可能
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2. 離婚問題で司法書士ができること
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2-1. 離婚協議書の作成
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2-2. 公正証書の作成サポート
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2-3. 財産分与による不動産の名義変更
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2-4. 140万円以下の慰謝料請求
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3. 離婚問題で司法書士ができないこと
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3-1. 離婚に関する法律相談
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3-2. 代理人としての離婚交渉
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3-3. 離婚調停や裁判の代理
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4. 離婚問題を司法書士に依頼するメリットがある人
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5. 離婚問題を司法書士ではなく弁護士に相談すべき人
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5-1. 離婚に関して法的な助言やサポートが欲しい人
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5-2. 離婚そのものや離婚条件でもめている人
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5-3. 離婚の交渉を専門家に任せたい人
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5-4. 離婚問題で裁判をする人
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6. 司法書士と弁護士に離婚問題を依頼したときの費用
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6-1. 司法書士にかかる費用
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6-2. 弁護士にかかる費用
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7. 離婚問題と司法書士に関連して、よくある質問
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8. まとめ 離婚問題を総合的に相談したいなら弁護士がお勧め
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1. 司法書士とは? 弁護士との違い
まずは、司法書士について知りましょう。弁護士との違いなどを簡単に説明します。
1-1. 司法書士|登記関係の業務がメイン
司法書士は法務省管轄の専門職で、主に登記手続きや書類作成を担当します。登記の種類には不動産登記や商業登記、法人登記などがあります。
離婚後、不動産の名義変更や離婚協議書の作成などが必要な場合は、司法書士に依頼することが可能です。
1-2. 弁護士|法律全般の業務に対応可能
弁護士は弁護士法に基づいて活動する専門職で、法律全般に対応可能です。
離婚問題においては、弁護士は法的知識に基づいて適切なアドバイスを行い、養育費や財産分与、親権などの問題を公正に解決できます。また、交渉や裁判手続きをサポートし、相手とのトラブルを円滑に処理します。弁護士に依頼することで、離婚相手との交渉を一任できるため、精神的なストレスを軽減できるのもメリットのひとつです。
2. 離婚問題で司法書士ができること
離婚問題に関して、司法書士ができることは具体的に以下の4つです。
離婚協議書の作成
公正証書の作成サポート
財産分与による不動産の名義変更
140万円以下の慰謝料請求
2-1. 離婚協議書の作成
離婚協議書は、司法書士でも作成できます。離婚協議書とは、夫婦間で離婚条件をまとめた覚書のようなものです。
ただし、司法書士には相手方と離婚条件の交渉をする権限がありません。従って、夫婦間で離婚の条件が固まっている場合に限り、その合意内容を書面化できます。離婚の条件を整理し、法的に意味のある文言に整え、お互いが署名押印することで、離婚協議書が作成されます。
2-2. 公正証書の作成サポート
公正証書とは、公証役場において公証人が作成する証明力の高い公文書です。離婚協議書を公正証書にすることで、養育費や慰謝料の支払いが滞った場合に、裁判を経ずに強制執行が可能になります。強制執行とは、相手が持つ財産を差し押さえて回収する手続きのことです。
司法書士は、離婚協議書を公正証書にする手続きを行うことができます。しかし、養育費の不払いがあった際などの強制執行手続きは、弁護士にしかできません。
2-3. 財産分与による不動産の名義変更
離婚時に財産分与を行う場合、不動産の名義を変更することがあります。例えば、結婚してから妻と共有名義で買ったマンションを、離婚にともない夫名義に変更する場合などが考えられます。
不動産の名義変更は自分で行うことも可能ですが、専門的な手続きのため、司法書士に依頼するのが一般的です。
名義変更をする際は、相手の印鑑証明書や実印を押した委任状などが必要となるため、相手が協力をしてくれないと手続きは進みません。この場合、相手に対して離婚協議書または公正証書に基づき所有権移転登記手続請求訴訟を提起することになりますが、これは司法書士ではなく弁護士の対応業務です。
2-4. 140万円以下の慰謝料請求
認定司法書士であれば、相手に140万円以下の慰謝料や婚姻費用、養育費を請求することができます。認定司法書士とは、2002年に導入された制度で、法務大臣の認定を受けた司法書士のことを指します。この認定により、140万円以下の範囲内で簡易裁判所が管轄する民事事件について、弁護士と同様に代理人として業務を行うことができます。
認定を受けていない司法書士は、140万円以下であっても慰謝料請求を行うことができません。また、認定司法書士ができるのは金銭の請求のみであり、離婚の条件交渉などは対象外です。
3. 離婚問題で司法書士ができないこと
司法書士が対応できる業務は、弁護士と比べると限定的です。ここでは、離婚問題で司法書士が対応できないことについて説明します。
3-1. 離婚に関する法律相談
離婚に関する相談内容は、親権や財産分与など多岐にわたりますが、司法書士にこれらの問題を相談することはできません。法律相談で司法書士が対応できるのは、140万円以下の慰謝料請求に限られます。しかし、離婚時の慰謝料が140万円以下になることは少ないため、司法書士に相談するのは現実的ではありません。よって、離婚の具体的な内容についての相談は、司法書士ではなく弁護士に相談するのが適切です。
3-2. 代理人としての離婚交渉
司法書士は依頼者の代理人となって相手方と交渉することができません。
離婚においては、未成年の子どもがいる場合は親権問題、未成年の子どもがいない場合は財産分与が問題となることが多いです。これらの問題は司法書士の業務範囲外ですので、弁護士に相談することをおすすめします。
3-3. 離婚調停や裁判の代理
離婚調停や審判、訴訟手続においても、司法書士は代理人となることができません。ときどき、司法書士が法廷の外で待機し、実質的に訴訟活動を行う場面が見られます。裁判所はこのような場合に寛容な対応をとることが多いですが、弁護士として不信感を抱くことも少なくありません。
140万円以下の慰謝料請求や婚姻費用・養育費の請求であれば、司法書士でも対応可能です。しかし、離婚事件は多岐にわたる問題を含むため、慰謝料や養育費が低額かつ未納の場合を除いて、司法書士に依頼するメリットは少ないといえるでしょう。
4. 離婚問題を司法書士に依頼するメリットがある人
司法書士に依頼するメリットがある人は以下の通りです。
【離婚の条件がすでに固まっている人】
離婚の条件が固まっている場合、離婚協議書の作成は司法書士に依頼するのがおすすめです。法律の専門家である司法書士に依頼することで、後に紛争が起こった場合に備えて有効な書面を作成してもらえます。この場合の費用は、弁護士に依頼するよりも安く済むことが多いでしょう。
【不動産の名義変更が必要な人】
不動産の登記名義の変更は司法書士に依頼するのが一般的で、弁護士に依頼することは少ないです。不動産の登記名義の変更だけを依頼する場合は、司法書士に依頼しましょう。
そのほか、140万円以下の慰謝料請求を行いたい人も考えられますが、この場合の着手金は弁護士と同程度であると思われるので、あまりメリットはないかもしれません。
5. 離婚問題を司法書士ではなく弁護士に相談すべき人
離婚問題を弁護士に依頼すべき人や、そのメリットについて説明します。
5-1. 離婚に関して法的な助言やサポートが欲しい人
離婚したいけどどうしたらいいかわからない人や、法的な相談に乗ってほしい人は弁護士に相談すべきです。離婚問題に関して、相談すべき内容は多岐にわたりますので、以下に例をあげます。
離婚に同意してもらうにはどうしたらいいか
慰謝料の金額は妥当か、もっと増やす(減らす)ことはできないか
親権を獲得することはできないか
財産はどのように分与すべきか
弁護士に相談することで、自分に損がなく、後悔しない形での離婚が望めます。また、離婚協議書を作成することで、離婚後のトラブルも予防できるでしょう。
5-2. 離婚そのものや離婚条件でもめている人
離婚するかしないかで合意ができていなかったり、財産分与や養育費などの交渉がうまくいってなかったりする場合は、弁護士に相談することが重要です。弁護士は依頼人の代理人として交渉をまとめ、双方が納得できる解決策を見つける手助けをしてくれます。
また、各種金額の相場を示して、配偶者を説得するためのアドバイスをしてくれるため、より有利な条件で解決に導くことが可能です。
5-3. 離婚の交渉を専門家に任せたい人
離婚の交渉を専門家に任せたい人は、弁護士に依頼するのが適切です。自分で離婚の交渉をするのが嫌な場合や、配偶者との接触を避けたい場合は、弁護士に依頼することですべてを代行してくれます。
5-4. 離婚問題で裁判をする人
離婚するかしないか、または離婚条件について裁判になる場合は、弁護士に依頼すべきです。司法書士は離婚裁判に関与できないため、専門的なサポートを受けられません。相手が弁護士をつけている場合、こちらも弁護士をつけないと不利な条件で決着がついてしまう可能性が高いため、適切な代理人を立てることが重要です。

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6. 司法書士と弁護士に離婚問題を依頼したときの費用
離婚問題を司法書士と弁護士に依頼した際にかかる費用相場を紹介します。
6-1. 司法書士にかかる費用
【離婚協議書や公正証書の作成】
離婚協議書の作成を依頼する場合の費用は10万円程度です。そのほか、公証人役場に支払う手数料も別途必要になります。
【財産分与に伴う不動産の名義変更】
不動産の名義変更手続きに関する費用は、おおよそ5万円から10万円程度です。登記手続きは司法書士が担当しますが、弁護士との連携が必要な場合もあります。
【140万円以下の慰謝料請求の代理人】
140万円以下の慰謝料請求の代理人を司法書士に依頼する場合、費用はおおよそ10万円から30万円程度です。依頼内容に応じて変動します。
6-2. 弁護士にかかる費用
【法律相談】
弁護士への法律相談料は30分5000円から1万円であることが多いです。トータルで1万円から5万円ほどかかると考えておきましょう。当然ですが、相談が長引けば費用が高くなります。初回相談は無料で対応する事務所も多いです。
【書類作成】
離婚に関する書類作成の費用は、依頼内容によって変わります。例えば、離婚協議書を正しい法的効果を持つものにするために弁護士に依頼した場合、費用は約10万円程度です。内容が複雑でない場合は低額で済むこともあります。
【離婚の調停】
私の事務所の場合、離婚調停の着手金は35万円〜、また、離婚が成立した場合の成功報酬は35万円〜となります。調停が不成立となり訴訟に移行する場合は、追加で10万円の着手金が発生します。
離婚調停では、面会交流や婚姻費用の支払いを求める調停も併せて行うことがあります。これらを個別に行う場合、各調停に対して25万円〜の着手金がかかりますが、まとめて行う場合はセット割引が適用されます。
また、離婚が成立し、財産分与や慰謝料を受け取る場合は、金額に応じた成功報酬が別途発生します。例えば、受け取る金額が300万円以下であればその20%、300万円から3000万円の場合は12%+20万円の成功報酬が目安となります。
費用は事務所によって異なるため、事務所のホームページや無料相談などであらかじめ確認しておくとよいでしょう。
7. 離婚問題と司法書士に関連して、よくある質問
無料相談に対応している司法書士も多くいます。ただし、親権や財産分与などの離婚問題は、司法書士の対応範囲外なため、相談することはできません。離婚問題全般について相談したい場合は、無料相談に対応している弁護士に相談してください。
司法書士には、離婚調停の代理人になる権限はありません。誤って依頼してしまうと、調停室に入ることすらできず、裁判所の書記官から退席を求められることになります。離婚調停を依頼したい場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
一部のサービスに関しては、司法書士の方が安いといえます。しかし、離婚問題を総合的に扱う場合、最終的には弁護士に依頼した方が費用対効果が高くなることが多いです。状況に応じて、適切な専門家を選ぶことが大切です。
行政書士は代理権を持っていないため、離婚問題に関する書類を代わりに作成することはできますが、交渉や裁判所での代理はできません。
8. まとめ 離婚問題を総合的に相談したいなら弁護士がお勧め
離婚問題において、司法書士は書面作成や140万円までの慰謝料請求など、限られた業務に対応できますが、それ以外は弁護士でないと対応できません。
弁護士は、法律相談、交渉、調停や裁判での代理など、幅広い業務に対応しています。費用は司法書士の方が安価な傾向にありますが、離婚の全体的なサポートを受けるには弁護士が適しています。離婚問題を包括的に解決したい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)