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1. 面会交流調停とは
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2. 面会交流の取り決め(調停条項)の例
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3. 面会交流調停の流れ
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3-1. 【STEP1】申立て
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3-2. 【STEP2】期日の決定と開催
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3-3. 【STEP3】成立または不成立
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4. 面会交流調停のメリットとデメリットは?
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4-1. メリット
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4-2. デメリット
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5. 面会交流が認められないケースは?
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6. 相手が面会交流調停で決まったことを守らなかった場合の対処法
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6-1. 履行勧告の申出をする
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6-2. 強制執行(間接強制)を申し立てる
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6-3. 再度調停を申し立てる
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7. 面会交流調停を有利に進めるポイントや注意点
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7-1. 子どもにとっての利益を最優先に考える
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7-2. 現実的な条件で折り合いをつける
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7-3. 調停委員と対立しない
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8. 2026年5月までに導入の共同親権が面会交流に与える影響は
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9. 面会交流調停は弁護士なしで対応できる?
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9-1. 面会交流調停を弁護士に委任するメリット
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9-2. 弁護士費用の相場
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10. 面会交流調停に関してよくある質問
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11. まとめ 面会交流に関してトラブルを抱えている場合は弁護士に相談を
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1. 面会交流調停とは
面会交流(親子交流)とは、子どもを養育していない親(以下、非監護親)が子どもと会って話をしたり、遊びに行ったり、手紙や電話などの方法で交流を図ったりすることを指します。
非監護親が子どもと面会交流を行うかどうかに加え、面会交流を行う場合の頻度やそのほかの条件については、子どもの利益を最優先に考えたうえで、子どもを養育している親(以下、監護親)と非監護親の話し合いにより決めることとされています(民法766条1項)。
しかし、面会交流は夫婦が別居したり、離婚したりする場合に問題になるものです。監護親と非監護親が激しく対立し、当事者だけではうまく話し合いができないケースも多々あります。
このように、当事者だけでは面会交流についての話し合いが難しい場合に、家庭裁判所で面会交流について話し合いを行う手続きを「面会交流調停」と言います。
2. 面会交流の取り決め(調停条項)の例
面会交流調停において取り決められる条項には、次のようなものがあります。
【面会交流の頻度を定め、具体的な日時や場所は協議により定める場合の条項例】
甲は乙に対し、乙が当事者間の子●(●年●月●日生)と1カ月に1回程度、面会交流をすることを認める。その具体的な日時、場所、方法等については、子の福祉に配慮し、当事者双方で協議して定める。
もっともシンプルな形式であり、日時や場所については状況に応じて柔軟な対応をするものです。
【面会交流の時間や回数まで定める場合の条項例】
甲は乙に対し、当事者間の子●(●年●月●日生)と面会交流することを認め、その時期及び回数を次のとおり定める。
(1)●年●月●日以降、毎月第二日曜日の●時に、相手方は●●市●●駅改札前で子●を乙に引き渡す。(2)同日●時に、乙は●●市●●駅改札前で子を甲に引き渡す。
こちらは面会交流の日時を詳細に決めておくものです。このようなかたちにしておくと合意成立後の協議が少なくて済む一方、柔軟な対応が難しいというデメリットもあります。
【第三者機関を利用して面会交流を行う場合の条項例】
(1)甲は乙に対し、乙が当事者間の子●(●年●月●日生)と第三者機関の●の付添(又は受け渡し等)の援助の下、1カ月に1回程度、面会交流することを認める。
(2)当事者双方は、面会交流の日時、場所、方法及び禁止事項等については、第三者機関の援助者の指示に従う。
(3)第三者機関の利用にかかる費用は、申立人と相手方が●対●の割合で負担する。
第三者機関とは、監護親と非監護親との間で面会交流を行うのが難しい場合に、その間に入って面会交流の実施をサポートしてくれる機関を言います。
第三者機関の援助を利用する場合には、合意する前に必ず第三者機関に連絡し、費用や利用できる頻度、受けられる援助の内容、面会交流の合意時に定めておくべき内容など、利用の条件を確認する必要があります。第三者機関の利用の要件を満たしていない場合、援助を受けられないケースもあります。
面会交流調停で合意をしたあと、強制執行(間接強制)をすることが想定される場合には、行うべき面会交流の内容を明確にするなどの条件が必要になるため、注意が必要です。面会交流における間接強制とは、面会交流を行わない監護親に対して制裁金を課すことで、面会交流のスムーズな実施を促すものです。
なお、面会交流を行う際には、以下のような項目について決める必要があります。なお、面会交流の取り決めにあたり、すべての項目について決める必要はなく、必要になったタイミングで協議することもあります。
面会交流の頻度
面会交流の時間
面会交流の場所
元夫婦の連絡方法
子どもの受け渡し場所や方法
都合が悪い場合の対応
宿泊や旅行
学校行事への参加
直接交流以外の方法での交流について

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3. 面会交流調停の流れ
当事者間で面会交流についての話し合いが進まない場合は、面会交流調停の申立てを検討することになります。面会交流調停の流れは次のとおりです。
3-1. 【STEP1】申立て
裁判所に面会交流調停を申し立てる場合、申立てをする裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意により定めた家庭裁判所です。相手方の住所地を管轄する裁判所は、裁判所の公式ホームページなどで確認できます。
面会交流調停を申し立てる際には、調停申立書およびその写し1通、子どもの戸籍謄本が必要です。当事者が自分で申立てを行う場合には、裁判所の公式ホームページに記載されている申立書の書式や記載例を確認すると便利です。
なお、家庭裁判所によっては、申立書と戸籍謄本のほかにも事情説明書や進行に関する照会回答書といった書類の提出を求められる場合もあります。申立書の提出前に必要書類について管轄裁判所に確認をするのが望ましいです。
申立てに必要な費用は、子ども1人につき1200円の印紙代と、相手方に申立書を送付するときなどに使う連絡用郵便切手代です。この費用は申立人が準備します。郵便切手代は裁判所により異なるため、申立書に添付する書類を確認する際、併せて裁判所に確認するとよいでしょう。
3-2. 【STEP2】期日の決定と開催
裁判所に申立書を提出し、不備がなければ1カ月から2カ月後くらいに調停期日が決まります。調停期日とは、実際に裁判所で話し合いをする日を言います。
調停期日では、男女1名ずつの調停委員が調停室という裁判所の部屋で当事者の話を一人ずつ聞き取り、話し合いを進めることになります。当事者が同席して話をすることはあまりありません。多くの場合、申立人か相手の一方のみが調停室に入り、調停委員と話をします。一方の話が終わったら、その当事者は調停室から退室し、もう一方の当事者のみが調停委員と話をし、これを交互に繰り返して話し合いを進めます。
調停委員から聞かれる内容は事案によりさまざまですが、これまでの面会交流の実施状況、片方が面会交流を拒否している場合にはその理由、当事者の希望などについて聞かれるパターンが多いように思います。
初回期日後は、おおむね1カ月半から2カ月程度のペースで期日を設け、初回期日と同じように調停委員を通じて話し合いを行います。場合によっては、家事案件などについて調査を行う家庭裁判所調査官という専門家が子どもや当事者と面談し、面会交流に関する調査を行うケースもあります。
3-3. 【STEP3】成立または不成立
面会交流の実施やその条件について合意ができれば、合意した内容を調停調書に記載します。調停調書に記載されると確定判決と同じ効果を持ち、履行すべき内容が特定されている場合には、強制執行(間接強制)の申し立てをすることもできます。
合意ができない場合には、審判手続きに移行し、裁判所が面会交流の可否や条件について判断することになります。
4. 面会交流調停のメリットとデメリットは?
面会交流調停を行うことで冷静に話し合いが進められる一方、デメリットもあることを知っておきましょう。
4-1. メリット
面会交流調停のメリットは、裁判所という第三者が入って話し合いを進められる点にあります。特に監護者と非監護者の感情的な対立が激しく、当事者のみでは話し合いが難しい場合でも、第三者の視点が入ることで面会交流について進捗が見られるケースはよくあります。
また、面会交流について合意できた場合、合意内容を調停調書に記載することになります。調停調書は債務名義になるので、もし相手方が合意に従った面会交流を行わない場合、条項の内容によっては強制執行の申し立てもできます。そのため、調停で合意をすることで、相手方に任意の履行を促す効果も期待できます。
4-2. デメリット
面会交流のデメリットの一つ目は、当事者が自分で申立てを行う場合、自ら裁判所に出頭する必要があることです。調停期日は平日に設けられるため、仕事をしている人は有給休暇をとるなどして時間を確保しなければなりません。
デメリットの二つ目は、調停期日は1カ月半から2カ月に1回程度というペースで行われるため、どうしても時間がかかってしまう点です。面会交流調停が成立するまでに1年程度かかるケースもあります。
5. 面会交流が認められないケースは?
民法766条1項に、面会交流については「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定められているとおり、面会交流は子どものために行われるべきものです。
したがって、非監護親が子どもに暴力をふるったことがあったり、一定以上の年齢の子どもが面会交流を拒否していたり、非監護親が過去に子どもを勝手に連れ去ったことがあるなど連れ去りの可能性が高いような場合には、面会交流が子どもに対し悪影響を及ぼすと考えられ、面会交流が認められないこともあります。
当事者の一方から、面会交流が子どもにとって悪影響を及ぼすという主張がされた場合には、家庭裁判所調査官が監護親の自宅を訪問して子どもと面談するなどして、面会交流が子どもに与える影響について調査を行い、調査結果について裁判所に対する報告書を提出するケースもあります。調停や審判においても、この調査結果を尊重して話し合いや判断が行われます。
6. 相手が面会交流調停で決まったことを守らなかった場合の対処法
面会交流調停で定めた条項が守られなかった場合にとれる対処法として、主に次の3つが考えられます。
履行勧告の申出をする
強制執行(間接強制)を申し立てる
再度調停を申し立てる
6-1. 履行勧告の申出をする
履行勧告とは、当事者が家庭裁判所の調停や審判で決められた面会交流などの義務を実施しないときに、裁判所が履行をしない当事者に対し、義務を履行するよう勧告をすることを指します。
裁判所に履行勧告をしてもらいたい場合には、履行勧告を求める当事者が裁判所に対し、履行勧告の申出をする方法が考えられます。申出に費用はかかりませんが、義務を履行しない当事者が勧告に応じない場合でも、履行は強制できません。
6-2. 強制執行(間接強制)を申し立てる
調停調書や審判書で行うべき面会交流の内容が特定されている場合には、調停調書や審判書に基づき強制執行の申立てができます。
この場合の強制執行とは、間接強制を指します。監護親が面会交流に応じない場合に、1回あたり一定額の金銭の支払いをさせることで、間接的に面会交流の実施を促す効果が期待できます。
強制執行の申立てを行うことができるかどうかは、義務の内容が条項で定まっているか、履行を求められる条項になっているかという点によって異なるため、強制執行も視野に入れる場合には、文言について弁護士に相談するのが望ましいです。
また、仮に強制執行が可能な場合でも、申立てをすることで相手の態度がより硬化する可能性もあるため、申立てを行うかどうかは慎重に判断しなければなりません。
6-3. 再度調停を申し立てる
調停や審判により面会交流の条件が決められたものの、面会交流が行われない場合には、あらためて調停の申立てをすることも選択肢の一つです。調停を申し立てることで、相手が面会交流を拒否する理由が明らかになったり、話し合いが進んだり、新たに条件を設定したりできるケースもあります。

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7. 面会交流調停を有利に進めるポイントや注意点
面会交流についての話し合いを有利に進めるために、次の3点を考慮して調停に臨みましょう。
子どもにとっての利益を最優先に考える
現実的な条件で折り合いをつける
調停委員と対立しない
7-1. 子どもにとっての利益を最優先に考える
面会交流は、あくまで子どもの利益を最優先にして実施されるべきものであり、非監護親が子どもに会いたいという理由だけで実施されるものではありません。同様に、監護親が非監護親と子どもを会わせたくないという理由だけで、拒絶できるものでもありません。監護親と非監護親の双方が、子どもにとって一番よい選択肢は何かを考える必要があります。
7-2. 現実的な条件で折り合いをつける
面会交流を希望する側は、できるだけ頻繁に面会したい、休日や長期休みのときには泊まりがけで一緒に旅行したい、祖父母とも会わせたい、といろいろなことを希望します。しかし、相手方が面会交流を全面的に拒絶している場合、この条件で合意できることはまずありません。
電話やメールによる間接交流から試行してみたり、短時間の面会交流を実施し、軌道に乗ってきたら長時間の面会交流を行ったりするなど、徐々にステップアップしていく方法も考えたほうがよいでしょう。
一方、面会交流が認められない事情がない場合に、全面的に面会交流を拒絶することも現実的ではありません。実際に、特段の事情がない場合には、面会交流を行う方向で調停委員から説得されるケースが多いです。短時間の面会交流から実施し、気持ちに整理をつけるなど、現実的な条件で折り合いをつけなくてはなりません。
7-3. 調停委員と対立しない
面会交流の可否やそのほかの条件で、当事者と調停委員の意見が異なる場合もあります。このような場合に、感情的になってしまい調停委員にいら立ちをぶつけてしまう人もいますが、調停委員に話し合いのできない人物であるという印象を与えてしまうだけで、メリットはありません。
調停委員と意見が異なる場合でも、しっかりと調停委員の話に耳を傾け、自身の主張を整理して伝えることが重要です。
8. 2026年5月までに導入の共同親権が面会交流に与える影響は
2024年5月に民法等の一部を改正する法律が成立し、同月中に公布されました。改正法は2026年5月までに施行される予定です。
この改正により、離婚後に父母の一方のみを親権者と指定するのではなく、父母の双方を親権者と指定できるようになりました。面会交流に関しては、離婚後だけではなく、婚姻中に父母が別居した場合の面会交流に関する規定が明文化されたほか、面会交流の試行的実施に関する制度が設けられました。
共同親権が導入されても、子どもの利益を最優先にして面会交流について定めることに変わりはなく、当事者双方の話し合いが重要です。
9. 面会交流調停は弁護士なしで対応できる?
面会交流調停は当事者自身でも行えますが、弁護士に依頼したほうがよいケースも少なくありません。弁護士に依頼するメリットと弁護士費用について説明します。
9-1. 面会交流調停を弁護士に委任するメリット
面会交流調停は当事者の方が自身で行うことも可能です。しかし、弁護士に委任することで、以下のようなメリットがあります。
①手続きを任せられる
申立書やそのほかの資料の作成、期日への出頭を弁護士に任せられます。弁護士にこれらの手続きをまとめて委任することで、当事者の主張を適切に調停委員に伝えることが可能です。また、当事者本人が出席できない場合に代理人が出席できるため、出頭の負担が大きく減ります。
②精神的な負担が軽減される
当事者が自身で調停を進める場合、手続きの進め方や事件の見通しがわからず、精神的な負担が大きくなります。弁護士に委任することで、これらの問題が解消され、当事者の精神的な負担が軽くなります。
9-2. 弁護士費用の相場
面会交流調停の手続きを弁護士に委任する場合、費用は当事者がそれぞれ負担することになります。
弁護士報酬の定め方は大きく「着手金+報酬金方式」「タイムチャージ方式」の2つに分けられます。
現在は弁護士報酬が自由化されており、報酬額は弁護士事務所によって異なりますが、30万円~60万円程度としているところが多いように思います。時間制報酬方式とも呼ばれるタイムチャージ方式の金額は事務所によって異なるため、相談の際に金額を確認するのがよいでしょう。
10. 面会交流調停に関してよくある質問
調停手続きはあくまで話し合いを行う手続きであるため、調停の相手方が裁判所に出頭しない場合には、手続きを進められません。この場合には、面会交流調停は終了し、審判手続に移行します。面会交流の可否や条件については、裁判官が判断することになります。
審判手続きにも相手方がまったく反応しない場合には、申立人の主張を基に裁判官が判断をすることになります。しかし、面会交流を実施するという審判が出されたとしても、相手方がそれに協力する可能性は低いため、実際に面会交流を行うのは困難です。
面会交流調停で面会交流の条件について合意したあとでも、その条件は、監護親と非監護親の協議により変更できます。したがって、生活状況の変化により、面会交流の頻度や条件を変更したいときには、当事者でまず話し合いを行うことをお勧めします。
話し合いができなかったり、話し合っても合意に至らなかったりするときは、あらためて調停を申し立てるのがよいでしょう。
離婚調停とともに、面会交流調停を申し立てることも可能です。夫婦の一方が子どもを連れて別居している場合には、離婚を求める側が離婚調停を申し立て、面会交流を求める側が面会交流調停を申し立てるケースがよくあります。離婚調停と面会交流調停は別の案件ですが、実際には同じ日時に期日を設け、同時に話し合いを行うことが多いです。
面会交流調停を申し立てる際には、調停申立書に相手方の住所を記載する必要があります。そのため、相手方の戸籍の附票を取得したり、住民票を取得したりして、相手方の住所を確認する必要があります。
ただし、相手方がDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)による被害を理由として住民票の閲覧制限をかけている場合には、住民票を取得できないケースもあります。
11. まとめ 面会交流に関してトラブルを抱えている場合は弁護士に相談を
面会交流の協議の場面では、監護親と非監護親の感情的な対立が激しく、なかなか話し合いが進まないケースが多いです。
しかし、別居や離婚をしても親子である事実に変わりはありません。面会交流調停では、子どもにとって一番よい選択肢は何かを考え、実施が可能な条件で折り合いをつけるなど子どもの利益を最優先して話し合うことが重要です。
面会交流についてトラブルになりそうな場合や、面会交流調停の申立てを検討している場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)