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1. 子なし夫婦の離婚率は高い?
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2. 子なし夫婦の離婚の特徴
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2-1. 離婚を決断しやすい
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2-2. 離婚時の取り決めが少ない
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2-3. 離婚後に再就職や再婚がしやすい
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2-4. 離婚後に配偶者との関係を切りやすい
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3. 子なし離婚を決断する前のやることリスト
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3-1. 本当に離婚すべきかどうかよく検討する
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3-2. 相手に離婚原因があれば証拠を確保する
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3-3. 離婚時に見込まれる支出を見積もっておく
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3-4. 離婚後の生活について考える
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4. 子なし離婚を決断した後のやることリスト
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4-1. 夫婦の共有財産を把握する
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4-2. 希望する離婚条件を検討する
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4-3. 配偶者に離婚を切り出し、離婚条件について話し合う
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4-4. 弁護士に相談する
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5. 子なし夫婦の離婚の流れと必要書類
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5-1. 協議離婚|夫婦で協議を行い合意で成立する離婚
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5-2. 調停離婚|家庭裁判所の調停を通じた合意に基づく調停
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5-3. 裁判離婚|調停不成立後の訴訟を通じた離婚
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6. 子なし離婚での慰謝料相場
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7. 子なし離婚でよくある質問
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8. まとめ 子なしの離婚は決断しやすいからこそ慎重に判断や準備を
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1. 子なし夫婦の離婚率は高い?
厚生労働省が公表している「離婚に関する統計」によれば、令和2年(2020年)に提出された離婚届の件数は、子あり夫婦(子どもがいる夫婦)で11万1,335件、子なし夫婦で8万1,918件でした。離婚届けの全体数のうち、子なし夫婦が40%超を占めています。
出典:令和4年度「離婚に関する統計」の概況 p12|厚生労働省
一方で、国立社会保障・人口問題研究所が公表している「第16回出生動向基本調査」によれば、結婚持続期間5~9年の夫婦において、子どもがいない割合は12.3%にとどまっています。
出典:第16回出生動向基本調査 p48|国立社会保障・人口問題研究所
上記のデータを総合的に分析すると、子なし夫婦における離婚率は、子あり夫婦に比べて高いと考えられます。
2. 子なし夫婦の離婚の特徴
子なし夫婦は子あり夫婦に比べて、スムーズに離婚しやすい傾向があると考えられます。その理由について解説します。
2-1. 離婚を決断しやすい
一般的に、子どもにとっては、大きくなるまで両親と一緒に過ごした方が教育上好ましいと考えられています。そのため子あり夫婦は、子どものことを考えて離婚を思いとどまるケースが多いです。
これに対して子なし夫婦は、子どもへの影響を考慮する必要はなく、自分たちの今後を考えて判断すればよいので、離婚を決断しやすい傾向にあります。
2-2. 離婚時の取り決めが少ない
子あり夫婦が離婚する際には、子どもに関するさまざまな離婚条件(親権・養育費・面会交流など)を取り決めなければなりません。
これに対して、子なし夫婦が離婚する際には、子どもに関する離婚条件を取り決める必要がありません。決めるべき離婚条件が少ない子なし夫婦の離婚は、子あり夫婦の離婚よりもトラブルのリスクが少なく、スムーズに離婚が成立しやすい傾向にあります。
2-3. 離婚後に再就職や再婚がしやすい
子どもの親権を得て離婚した場合、再就職や再婚に当たっては基本的に子どもを基準に考えるでしょう。再就職を考える際には、子育てと両立できる仕事を探す必要がありますし、再婚を考える際には、子どもの年齢や、相手と子どもの相性を考慮することが大切です。
これに対して、子なし夫婦が離婚した場合には、再就職や再婚に当たって、自分の今後を基準に考えることになります。再就職や再婚の選択肢の幅が広いため不安を感じる面が少なく、離婚に踏み切りやすい側面があります。
2-4. 離婚後に配偶者との関係を切りやすい
子あり夫婦が離婚する場合、離婚後も子育てについて元夫婦間で協力しなければなりません。養育費の支払いはもちろん、面会交流を実施する場合は、その際の受渡しやルール作りなどにも気を配る必要があります。
これに対して、子なし夫婦が離婚した後は、お互いが望まなければほとんど交流する必要がなくなります。完全に新たな生活へと移ることができるため、スパっと離婚を決断するケースが多いように考えられます。
3. 子なし離婚を決断する前のやることリスト
子なし夫婦は、子あり夫婦に比べて、取り決めも少なく揉めにくい傾向があるでしょう。ただし、事前に準備を整えずに離婚してしまうと、後々後悔をするかもしれません。
配偶者との離婚を決断する前に以下の検討と準備を行いましょう。
本当に離婚すべきかどうかよく検討する
相手に離婚原因があれば証拠を確保する
離婚時に見込まれる支出を見積もっておく
離婚後の生活について考える
それぞれについて解説します。
3-1. 本当に離婚すべきかどうかよく検討する
相手との関係修復が困難であれば離婚もやむを得ないですが、まだ話し合って関係を修復する余地がある場合は、本当に離婚すべきかどうかをよく検討しましょう。
離婚は人生の重大な決断です。そのため、本当にはっきりした離婚したい理由があるのか、修復は無理なのか、そして配偶者と二度と会えなくなっても後悔しないのか、よく考えてみましょう。例えば、片方が子どもを望んでいて、片方が望んでいないような場合は、年齢や、今後の人生にも関わってくるため、離婚を検討する必要があるかもしれません。
相手と離れることによるメリット・デメリット、反対に一緒にいることによるメリット・デメリットを挙げた上で、どちらを選択すべきか自分の中で整理して結論を出しましょう。配偶者とも話し合いを重ねて、お互いにとって良い選択は何かをすり合わせることも大切です。
3-2. 相手に離婚原因があれば証拠を確保する
不倫・DV・モラハラなど、配偶者の不適切な行為が離婚を考える原因となっている場合は、その行為の証拠を確保しましょう。その証拠を基に、配偶者に対して慰謝料を請求できるほか、配偶者が離婚を拒否しても裁判で離婚を成立させられる可能性があります。
不倫の証拠は、探偵に調査を依頼することで、有力な証拠を得られる確率が高まります。また、弁護士に相談することで、慰謝料や離婚を見据えたアドバイスをしてもらえるでしょう。
3-3. 離婚時に見込まれる支出を見積もっておく
配偶者よりも自分の方に多くの資産や収入がある場合は、離婚時の財産分与などにより、多額の支出が発生することがあります。離婚が成立したらどの程度の支出が見込まれるのかをあらかじめ検討し、その後の生活に困らないような備えをしておきましょう。
3-4. 離婚後の生活について考える
配偶者と離婚をしたら、配偶者の収入に頼ることなく生活していかなければなりません。特に、結婚を機に家庭に入り、配偶者の生活のサポートを主としてきた専業主婦(主夫)の場合は、離婚前に仕事を見つけるなどして、金銭的な問題を解決しておく必要があります。
どの程度の貯蓄があるのか、仕事によってどの程度の収入を得られるのか、離婚に伴って配偶者から受け取れる金銭はいくらくらいか、毎月の支出はどのくらいかなどを踏まえてシミュレーションを行い、離婚後の生活が成り立つという確信を得てから離婚手続きを進めましょう。
4. 子なし離婚を決断した後のやることリスト
子なし夫婦が離婚を決断したら、離婚に向けて準備を進めます。離婚決断後にやるべきことや流れを解説します。
4-1. 夫婦の共有財産を把握する
夫婦が離婚する際には、共有財産を公平に分ける「財産分与」を行います(民法768条、771条)。
婚姻期間中に取得した財産は、原則として財産分与の対象です。夫婦いずれかの単独名義で取得した財産(例:配偶者の口座にあるお金、配偶者が単独名義で購入した住宅など)も、夫婦の協力によって築いた財産として、財産分与の対象となります。
公平に財産分与を行うには、夫婦の共有財産を漏れなく把握しなければなりません。離婚を切り出す前に、配偶者がどのような財産を所有しているのかを調べておきましょう。
4-2. 希望する離婚条件を検討する
子なし夫婦が離婚する際に決めるべき離婚条件は、財産分与・年金分割・慰謝料・婚姻費用など、金銭に関するものが中心です。
財産分与:夫婦の共有財産を公平に分ける
年金分割:婚姻期間中の厚生年金保険加入記録(≒将来の厚生年金)を公平に分ける
慰謝料 :離婚の原因を作った側が、相手の精神的損害を賠償するために支払う
婚姻費用:離婚成立前の別居期間における生活費などを精算する
これらの離婚条件について、具体的にいくら支払うのか、どのような内容を希望するかをあらかじめ検討しておきましょう。
4-3. 配偶者に離婚を切り出し、離婚条件について話し合う
共有財産の調査や離婚条件の検討が完了したら、配偶者に対して離婚を切り出します。
離婚したい旨を配偶者に伝える際には、感情を抑えて冷静を保ちましょう。事前に離婚したい理由を整理した上で、それを冷静に配偶者へ伝えれば、離婚の話し合いがスムーズに進むことが多いです。
離婚に向けた話し合いが始まったら、希望する離婚条件を配偶者に伝えましょう。離婚協議をまとめるためには、配偶者の希望にも耳を傾けた上で、お互いが納得できる落としどころを探ることが必要です。
4-4. 弁護士に相談する
配偶者が離婚に関する話し合いに応じない場合や、離婚条件で揉めてしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士が間に入って離婚協議を進めれば、冷静な話し合いの末に離婚の合意を得られる可能性が高まります。離婚協議がまとまらないときも、調停や訴訟の手続きへスムーズに移行した上で、離婚に向けた対応を任せることができます。弁護士を代理人とすれば、配偶者と直接やり取りする必要がなくなり、精神的な負担が軽減されることもメリットの一つです。

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5. 子なし夫婦の離婚の流れと必要書類
子なし夫婦に限らず、離婚は、協議・調停・裁判のいずれかの手続きを通じて成立します。離婚の流れと必要書類について解説します。
5-1. 協議離婚|夫婦で協議を行い合意で成立する離婚
夫婦が直接話し合った上で、合意に基づいて成立させる離婚を「協議離婚」といいます。話し合いで離婚届に判を押して役所に提出する一般的な離婚が、この協議離婚です。
協議離婚は、離婚する旨および離婚条件の話し合いがまとまったら、合意内容をまとめた離婚協議書を作成することが重要です。
離婚協議書を公正証書で作成すれば、離婚の条件を明確にでき、のちにトラブルを防止することができます。また、紛失や改ざんなどを防げるほか、慰謝料などが不払いとなった際には直ちに強制執行を申し立てることができます。
公正証書は、公正役場で公証人という専門家が作成してくれる公文書のことで、法的な効力を持ちます。協議離婚の必要書類は原則として離婚届のみですが、公正証書を作成する場合は戸籍謄本などが必要です。
協議離婚を目指す段階から、弁護士に代理交渉を依頼することもできます。
5-2. 調停離婚|家庭裁判所の調停を通じた合意に基づく調停
協議離婚の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
離婚調停では、調停委員が夫婦双方から主張を聴き取り、離婚の合意が得られるように話し合いを仲介します。離婚の合意が得られたら、合意内容をまとめた調停調書が作成されて「調停離婚」が成立します。
離婚調停の申立てに当たっては、申立書およびその写し1通や戸籍謄本などを家庭裁判所に提出します。また、財産に関する資料などを併せて提出すれば、調停委員に離婚に関する事情を理解してもらいやすいでしょう。
調停離婚が成立した場合は、離婚成立後10日以内に離婚届を提出する必要があります。その際、調停調書の謄本を添付しなければなりません。
離婚調停で離婚が成立するまでの期間はおおよそ半年ほどかかるケースが多いですが、両者がどの程度揉めているのかによっても、成立までの期間は左右されます。
なお、弁護士に依頼することで、調停の申し立てから、調停委員に自分の意見を主張してもらうことが可能です。
5-3. 裁判離婚|調停不成立後の訴訟を通じた離婚
離婚調停が不成立となった後に、引き続き離婚を求めたいときは、裁判所に離婚の裁判を申し立てます。裁判を通じて成立する離婚は「裁判離婚」と呼ばれます。
離婚裁判を通じて離婚を成立させるためには、原則として「法定離婚事由」(不貞行為・悪意の遺棄・婚姻を継続し難い重大な事由など。民法770条1項)が必要です。法定離婚事由を立証できた場合に、強制的に離婚を成立させる判決が言い渡されます(=判決離婚)。また、配偶者が離婚請求をすべて認めた場合は「認諾離婚」、離婚訴訟を通じて和解した場合は「和解離婚」が成立します。
離婚裁判を提起する際には、訴状2部や戸籍謄本などを裁判所に提出します。また、法定離婚事由や財産関係に関する証拠を提出して、自分の主張する事実の立証に努めましょう。
裁判離婚が成立した場合は、離婚成立後10日以内に離婚届を提出する必要があります。その際、判決離婚では判決書謄本と確定証明書、認諾離婚では認諾調書、和解離婚では和解調書という裁判所が交付する書面を添付しなければなりません。
なお、裁判で離婚が成立する期間は、統計によると約1年から1年半ほどです。裁判に関しては、専門的な知識を求められることになるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
6. 子なし離婚での慰謝料相場
不貞行為やDVなど、配偶者が離婚の原因を作った場合には、配偶者に対して慰謝料を請求できることがあります。
慰謝料の金額は50万円から300万円程度が標準的で、個々のケースにおける金額は具体的な事情によって異なります。子なし夫婦の場合、子あり夫婦に比べると慰謝料は低く抑えられる傾向にありますが、配偶者の行為が悪質である場合は、高額の慰謝料が認められることもあります。
離婚する場合の慰謝料の目安金額(原因別)
不倫 | 150万円~300万円 |
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悪意の遺棄 | 50万円~300万円 |
DV | 100万円~300万円 |
モラハラ | 50万円~200万円 |
慰謝料を請求する際には、配偶者の不法行為を立証し得る証拠を確保することが大切です。離婚を切り出す前に、どういった証拠が必要なのか、弁護士の助言を得ながら慰謝料請求の準備を進めるのがおすすめです。
7. 子なし離婚でよくある質問
子なし夫婦は子あり夫婦に比べて離婚のハードルが低いため、性格の不一致や価値観の違いを理由に離婚するケースが多い印象です。その一方で、不貞行為・DV・モラハラなど、いずれか一方の問題行動が理由で離婚に至るケースも見られます。
離婚した方がよいと確信でき、離婚後の生活のめどが立ち、さらに希望する離婚条件について整理できた段階で離婚を切り出すのがよいでしょう。また、相手の不倫やDVで慰謝料を請求する場合は、離婚を切り出す前に、しっかりとした証拠を押さえておきましょう。事前に弁護士に相談をすることで、慰謝料の請求や、離婚を切り出すタイミングについてアドバイスを受けることができ、スムーズに離婚できる可能性があります。
子なし夫婦は離婚時に決めるべき条件が少ないので、スムーズに離婚しやすい傾向にあります。ただし、子なし夫婦であっても離婚協議がこじれてしまうことはよくあるので、どうしても揉めてしまい長期化しそうな場合は、弁護士のサポートも検討しましょう。
8. まとめ 子なしの離婚は決断しやすいからこそ慎重に判断や準備を
子なし夫婦は、子あり夫婦に比べて、条件で揉めにくく、離婚しやすい傾向があります。双方が離婚に合意していればスムーズに離婚できるでしょう。
ただし、離婚協議書などを作成せずに離婚をすると、後から支払いが滞るなどトラブルに発展する可能性があります。また、離婚の判断が下しやすいからこそ、後悔しないかどうか、慎重に考えることも大切です。
協議離婚で揉めてしまったり、慰謝料の請求を検討していたり、懸念材料がある場合は、弁護士への相談も検討しましょう。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)