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1. 離婚調停における陳述書とは? 提出が必要?
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2. 調停を有利に進めるための効果的な陳述書の書き方
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2-1. 陳述書の形式
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2-2. 陳述書に記載すべき事項
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2-3. 陳述書の例文とサンプル(離婚したい場合/離婚したくない場合)
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3. 離婚調停の陳述書を作成する際のポイント
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3-1. 事実関係や主張を冷静に整理して記載する
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3-2. 陳述書の記載内容は、口頭でも説明できるようにする
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3-3. 悪口や過度な批判、嘘や不合理な反論を記載しない
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4. 離婚調停の陳述書の作成について、弁護士に相談するメリット
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5. 離婚調停の陳述書についてよくある質問
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6. まとめ 弁護士にサポートしてもらえば、法的に整合性のある陳述書が提出できる
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1. 離婚調停における陳述書とは? 提出が必要?
「陳述書」とは、離婚に関する事実関係のほか、自身の主張や要望などを整理してまとめた文書です。
離婚調停をはじめとする民事調停は基本的に口頭で進めるため、陳述書の提出は必須ではありません。調停の場で自身の主張を口頭で伝えているのに、さらに陳述書を提出する意味があるのか疑問が浮かぶかもしれません。
しかし、提出することで以下のようなメリットがあります。
調停委員に経緯を的確に伝えやすくなる
限られた調停時間を有効に活用でき、手続きを円滑に進められる
早期解決につながる可能性が高まる
緊張してうまく話せない場合でも、事前に内容を整理することで主張の抜け漏れを防げる
不用意な発言をするリスクを減らせる
弁護士に依頼している場合、法的な主張を伴う書面は弁護士が作成し、その補助資料として陳述書を提出するケースがあります。陳述書には、本人にしかわからない事実や心情を記載することが重要です。弁護士である筆者の経験では、本人が遠方に住んでいる、体調が優れないなどの理由で調停に出席できない場合、裁判所から陳述書の提出を提案された事例があります。
弁護士に依頼していない場合は、主張書面と陳述書を厳密に分ける必要はなく、自身の主張を整理したものとして陳述書を作成しても問題ありません。
2. 調停を有利に進めるための効果的な陳述書の書き方
調停委員に伝わる陳述書の書き方としては、形式や記載すべき事項などに注意する必要があります。陳述書の例文とサンプルも紹介しますので、ぜひご活用ください。
2-1. 陳述書の形式
裁判所に提出する書類は、基本的にA4サイズで作成します。裁判所では記録をA4サイズのファイルで管理しているため、これ以外のサイズで提出すると、適切に保存し、管理するのが難しくなります。
また、以下の点を意識し、読みやすい書類作成を心がけましょう。
手書きよりもパソコンやワープロを使用するのが望ましい
やむを得ず手書きする場合は、楷書で丁寧に書く
文字サイズは10~12ポイントを推奨。小さすぎると読みづらくなるため注意
分量はA4サイズで最大5枚程度にまとめる。 それ以上になる場合は、ページ番号をつける
項目ごとに整理し、小見出しを付ける。視認性を高め、要点が伝わりやすくなる
日付を必ず記載する。書類の作成日がわかるようにする
自筆で署名し、捺印する
読みやすい書類を作成することで、裁判所に自身の主張を的確に伝えられます。内容が伝わらなければ、適切な判断につながりません。
2-2. 陳述書に記載すべき事項
陳述書には、以下のような項目を具体的に記載します。記載内容を裏づける証拠資料も併せて提出するかたちが望ましいです。
基本情報(年齢、職業、勤務先、収入など)
子どもに関する情報(氏名、年齢、学校など)
結婚に至った経緯(出会った時期や経緯、結婚までの経過)
別居している場合は、その経緯(別居開始時期、理由)
離婚を決意した理由(性格不一致、モラハラ、DV、不貞行為など)
相手への反論
今後の希望(以下の項目について具体的に記載)
親権(どちらが取得するか、共同親権か)
面会交流(頻度や方法)
養育費
婚姻費用
財産分与
慰謝料
年金分割
2-3. 陳述書の例文とサンプル(離婚したい場合/離婚したくない場合)
離婚したい場合と離婚したくない場合の陳述書の例文とサンプルを紹介します。
下記は、あくまで一般的な参考例に過ぎません。実際には、個々の事情によって必要な記載や望ましい表現などは異なるため、基本的には弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
【離婚したい場合のサンプル】
令和〇年(家〇)第〇〇〇〇号 婚姻関係調整(離婚)調停
申立人 氏名
相手方 氏名
陳述書
令和〇年〇月〇日(※作成日)〇〇家庭裁判所〇〇支部 御中
署名 捺印
第1 夫婦関係について1 結婚の経緯について
私は、平成〇年〇月頃、アルバイト先の同僚として相手方と知り合い、平成〇年〇月頃に交際を開始し、平成〇年〇月〇日に結婚しました。同居開始は平成〇年〇月〇日です。
結婚当初、私は平成〇年〇月まで建築会社の事務職に従事し、年間〇万円程度の収入を得ていました。
平成〇年〇月〇日、相手方が有限会社〇〇を設立したのを機に、私も会社を退職し、その後、相手方と別居する平成〇年〇月まで、同社の経理を担当していました。
平成〇年〇月〇日に長男、平成〇年〇月〇日に次男が誕生しました。
2 夫婦関係が破綻した経緯・暴力、モラル・ハラスメント
・不貞行為
・性格の不一致
・浪費、借金
(1)モラル・ハラスメント相手方は、私に対し、度重なる暴言や精神的な圧力をかけてきました。特に、育児と経理業務を両立して多忙を極めていた中で、家事の不備を厳しく責められたり、不貞を疑われて執拗に問い詰められたりすることがありました。例えば、以下のような発言がありました。
「〇〇〇〇〇〇〇〇」
「〇〇〇〇〇〇〇〇」
このような発言により、私は精神的に追い詰められ、自宅が安らげる場所ではなくなっていきました。
(2)不貞行為令和〇年頃から、相手方の帰宅時間が遅くなり、週に3~4日は深夜0時を過ぎ、週に1回は朝帰りをするようになりました。
令和〇年〇月〇日、相手方が「男性の友人と旅行に行く」と言ったため、探偵を雇ったところ、若い女性とラブホテルに入っていく証拠が得られました。この事実を問い詰めると、相手方は謝罪するどころか、探偵をつけたことに激怒し、ご近所に聞こえるほどの大きな声で以下のような暴言を浴びせました。
「〇〇〇〇〇〇〇〇」
「〇〇〇〇〇〇〇〇」
この出来事を契機に、私は夜眠れなくなり、令和〇年〇月〇日、〇〇病院の精神科を受診し、適応障害の診断を受けました。
この頃から、顔を合わせれば口論になる毎日になり、相手方に対する愛情もなくなっていきました。
(3)別居の経緯私は、相手方と婚姻生活を続けていくことは困難と判断し、令和〇年〇月〇日、子どもたちを連れて家を出て別居を開始しました。現在、子どもたちは私とともに生活しており、私が主たる監護者として育てております。
3 別居後の相手方との関係別居後、相手方から関係修復の申し出や具体的な提案は一切ありませんでした。
令和〇年〇月〇日、私から相手方に「離婚に向けた話し合いをしたい」とLINEで連絡しましたが、無視されています。
以上のことから、相手方にも夫婦関係を修復する意思はないものと考えます。
第2 今後について1 離婚について
私はすでに相手方に対する愛情が無く、婚姻関係を継続することはできません。早期の離婚成立を希望します。
2 親権・面会交流について長男および次男の親権は私が持つことを希望します。
相手方は、子どもたちに愛情を注いでいたため、離婚後も子どもたちのことについては協力関係を築きたいと考えています。
面会交流については、以下を希望します。
・月1回の面会を原則とする。・長期休暇時には宿泊を伴う面会を認める。
・誕生日にはプレゼントを渡す機会を設ける。
3 養育費について子どもたちは現在〇歳と〇歳であり、日々の生活費、教育費、医療費などが不可欠です。
相手方は私立の高校と大学を卒業しており、私も同様です。そのため、子どもたちにも両親と同等の教育環境を提供したいと考えています。
したがって、養育費として月額〇〇円を、子どもたちが大学を卒業するまで支払っていただきたいと考えます。支払期限は毎月末日限りとし、銀行振込での支払いを希望します。
また、物価の上昇や進学等により、養育費の増額が必要となる場合には、適宜協議し、相当な増額を検討するものとしたいと考えています。
4 財産分与について相手方は有限会社〇〇の株式を100%保有しています。私は〇年間経理として貢献してきたため、株式の50%に相当する現金を分与していただきたいと考えています。
その他、相手方名義の預金、保険の解約返戻金、自動車、ロレックスの時計なども分与対象となると考えています。
また、現在相手方が居住している自宅は、子どもたちが生まれたとき時から住み慣れた家であるため、売却せずに私と子どもたちが自宅に戻り、継続して住むことを希望します。
5 慰謝料について相手方は、平成〇年〇月~令和〇年〇月まで不貞を継続していました。また、モラル・ハラスメントによって私の精神状態が悪化し、適応障害の診断を受けるに至りました。
相手方の行為によって婚姻関係が破綻に至ったため、慰謝料として〇〇〇万円の支払いを求めます。
6 年金分割について年金分割の按分割合を0.5とすることを希望します。
以上
【離婚したくない場合のサンプル】
令和〇年(家〇)第〇〇〇〇号 婚姻関係調整(離婚)調停
申立人 氏名
相手方 氏名
陳述書
令和〇年〇月〇日(※作成日)〇〇家庭裁判所〇〇支部 御中
署名 捺印
第1 夫婦関係について1 私の意向
私は、離婚を望んでおりません。結婚以来、一貫して家族に対して誠実に接してまいりました。もちろん、一時的なすれ違いによって申立人と口論になることはありましたが、その都度話し合いを重ね、解決してきました。今回も、冷静に話し合いを行うことで婚姻関係を改善できると考えております。
2 夫婦関係が破綻していないこと本調停において、申立人は私の不貞行為及び夫婦間の性格の不一致を理由に離婚を望んでいます。しかし、不貞については事実無根であり、具体的な証拠も提示されていません。
申立人は、令和〇年〇月以降夫婦関係が冷え切っていると主張しておりますが、そのような事実はありません。夫婦関係が破綻していない根拠として、以下の事実を挙げます。
・直近の結婚記念日では、昨年までと同様に子どもたちを祖父母に預け、夫婦二人でレストランで食事をしました。・週に5日は家族全員で食卓を囲み夕食をともにし、週末は必ず家族で過ごすなど、家族との交流を大切にしています。
・令和〇年〇月〇日には、二泊三日で〇〇旅行に行きました。
・学校行事には夫婦で参加しており、令和〇年〇月〇日に行われた長男の運動会にも二人で参加しました。
・申立人の両親とも年に2回程度食事をするなど、親族間の交流を続けています。
3 離婚による子どもたちへの悪影響私たち夫婦には〇歳と〇歳の子どもがいます。子どもたちはまだ幼く、両親からの愛情を受けることが健全な成長に不可欠であると考えます。
両親が離婚し、別々に暮らすことになったと知れば、子どもたちは大きなショックを受ける可能性があります。また、「自分が良い子にしていなかったからかもしれない」と自責の念を抱くことも考えられます。
このような悪影響を子どもたちに与えないためにも、離婚ではなく、関係修復に向けて努力をするべきであると考えます。
4 夫婦関係改善に向けて努力する意向があること私は、相手方が不満に思っている点があるのであれば、可能な限り修復に向けた努力をする意向です。具体的には、以下の取り組みを考えています。
・夫婦カウンセリングへの参加・同居再開に向けた約束事項の設定
・家族の時間を増やすための取り組み
私に不貞の事実はありませんが、申立人を不安にさせてしまったことについては真摯に受け止め、家族との時間を大切にする努力を続けたいと考えています。
5 結論以上の理由から、私は離婚を望んでおらず、可能な限り婚姻関係の維持・修復に向けて努力する考えです。
裁判所におかれましては、私の意向を十分にご考慮いただき、公正なご判断をお願い申し上げます。
以上
3. 離婚調停の陳述書を作成する際のポイント
離婚調停の陳述書を作成する際のポイントは主に次の3点です。
・事実関係や主張を冷静に整理して記載する
・陳述書の記載内容は、口頭でも説明できるようにする
・悪口や過度な批判、嘘や不合理な反論を記載しない
3-1. 事実関係や主張を冷静に整理して記載する
文章作成のポイントは、以下のとおりです。
①時系列を先に示す
事実を時系列順に整理すると、読み手に伝わりやすくなります。
例:2018年に結婚し、2020年頃から別居するまでの間、夫から「無能」などの暴言を受けることが増えた。
②5W1Hを意識する(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)
相手の行動を明確にすることで、深刻な状況がよりはっきりします。
NG「いつも帰りが遅い」→OK「週に4日程度、23時を過ぎて帰宅する」
NG「ひどいいことを言う」→OK「『無能』『小学生からやり直せ』と発言」
NG「協力してくれない」→OK「帰宅後は食器洗いもせずに自室にこもる」
NG「事あるごとに責める」→OK「週に1回以上」
③主観的な評価を書かない
「ひどい」「冷たい」「協力しない」といった主観的で曖昧な評価は避けましょう。具体的な事実を記載することが大切です。
例:子どもが話しかけても、夫は顔を向けず、「早く寝ろ」とだけ言って話を聞かなかった。
④評価をどうしても書きたければ、事実と分ける
事実のあとに、別の文章として評価を書きましょう。文章の客観性が保たれ、論理的でわかりやすくなります。
例:
事実:20xx年に長男が受験に落ちた際、夫は「お前の遺伝子のせいで落ちた」と言った。
評価:この発言は非常に心を傷つけるものであり、許しがたいと感じた。
3-2. 陳述書の記載内容は、口頭でも説明できるようにする
陳述書の内容については、調停期日に調停委員から具体的な質問を受ける可能性があります。
そのため、第三者である調停委員にもわかりやすく伝えられるよう、陳述書の記載内容を自分の言葉で説明できるよう準備しておきましょう。
3-3. 悪口や過度な批判、嘘や不合理な反論を記載しない
陳述書の内容は自由に記載できますが、必要以上に感情を吐き出していないかを意識することが重要です。
特に、悪口や過度な批判、あるいは虚偽の記載や不合理な反論は、以下のようなリスクを伴うため、避けるべきです。
相手方が感情的になり、調停の進行が妨げられる
主観的な記載が多いと、内容の信ぴょう性が疑われる
記載内容が後に虚偽と判明した場合、ほかの主張の信用性にも影響し、裁判秩序を乱したものとして調停委員や裁判官の心証を損ねる
せっかく調停委員の理解を得るために作成した陳述書が、逆に悪印象を与えたり、信用に欠けると判断されたりしてしまっては本末転倒です。節度を持ち、陳述書を有利に活用しましょう。

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4. 離婚調停の陳述書の作成について、弁護士に相談するメリット
弁護士に相談を依頼するメリットは以下です。
法的に整理された内容で作成できる
証拠と整合し、不利な要素を排除した陳述書を作成できる
弁護士が陳述書の作成を代行することで、心理的負担を軽減できる
相手の主張や今後の見通しを予測し、戦略的な法的主張を組み立てられる
弁護士に相談することで、戦略的かつ適切な表現の陳述書を作成でき、調停を有利に進める可能性が高まります。 特に、親権、財産分与、養育費、慰謝料など争点が多岐にわたる場合や、双方の主張に大きな隔たりがある場合は、弁護士の助言を受けることが望ましいでしょう。
5. 離婚調停の陳述書についてよくある質問
陳述書の提出時期に決まりはなく、いつでも提出可能です。また、提出は一度限りという決まりもありません。
申立時に申立書とともに提出すれば、調停委員が事案を把握しやすくなります。また、調停の進行に応じて必要だと感じたタイミングで提出することも可能です。
ただし、期日直前や当日に提出すると、調停委員が十分に目を通せないおそれがあります。余裕をもって事前に提出することで、相手方や調停委員が内容を確認しやすくなり、調停がスムーズに進む可能性が高まります。
事前に提出することが望ましいため、一般的には郵送での提出が推奨されます。送り先がわからない場合は、事前に家庭裁判所へ電話で問い合わせましょう。また、家庭裁判所の窓口へ直接持参したり、調停の期日に持参して提出したりする方法もあります。
提出時には、原則として裁判所用と相手方用の2部を用意し、コピーを添えて提出してください。
裁判所に提出した書類は、原則として記録につづられるため、相手が閲覧請求をすれば閲覧される可能性があります。内容を相手に見られたくない場合は、家庭裁判所に「非開示の希望に関する申出書」を提出することができます。
ただし、非開示が認められるかどうかは、家庭裁判所の判断によるため、必ずしも認められるとは限らない点に注意が必要です。
また、裁判官は非開示の陳述書の内容を審判の前提にできません。そのため、特別な事情がない限り、相手に開示されても問題のない内容で作成することをお勧めします。
6. まとめ 弁護士にサポートしてもらえば、法的に整合性のある陳述書が提出できる
離婚調停における陳述書は、事実関係や主張を整理し、調停委員に的確に伝えるための重要な書類です。提出は必須ではないものの、調停の円滑な進行や早期解決に役立ちます。
作成時は、客観的な事実を時系列で整理し、5W1Hという具体性を意識した明確な記述が求められます。感情的な表現や誇張を避け、冷静かつ論理的に記載することが重要です。
弁護士に依頼することで法的に整合性のある内容に仕上げることができ、調停を有利に進める可能性が高まります。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)