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1. 離婚調停にかかる期間は平均してどのくらい?
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2. 離婚調停の流れと、各段階でかかる期間の目安
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2-1. 事前準備|離婚調停の申立て
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2-2. 調停申立て|調停期日前の準備期間
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2-3. 調停期日|調停成立または不成立
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3. 離婚調停が長期化しやすいケース
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3-1. いずれかが離婚を拒否している場合
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3-2. 子どもの親権を争っている場合
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3-3. 多くの論点について意見が食い違っている場合
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3-4. 当事者の態度が強硬である場合
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4. 離婚調停をできる限り長引かせないための方法
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4-1. 離婚条件の優先順位を明確化し、必要に応じて譲歩する
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4-2. 調停委員を味方につけて、相手を説得してもらう
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4-3. 弁護士を代理人として同伴する
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5. 離婚調停が長引いている場合、生活費の分担はどうなる?
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6. 離婚調停の期間に関してよくある質問
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7. まとめ 離婚調停を早期にまとめるには弁護士のサポートが重要
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1. 離婚調停にかかる期間は平均してどのくらい?
離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員の仲介によって離婚条件などを話し合う手続きです。合意が得られれば調停成立となり、離婚が成立します。
令和5年度の司法統計年報(家事編)の「第16表 婚姻関係事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所」によると、同年度において終局した婚姻関係事件のうち、調停成立、調停不成立、調停に代わる審判となったものの審理期間は、下表のとおり分布しています。
婚姻関係事件の審理期間(令和5年度)
調停成立 | 調停不成立 | 調停に代わる審判 | |
---|---|---|---|
審理期間 | 481件 | 76件 | 1050件 |
3カ月以内 | 5869件 | 1830件 | 564件 |
6カ月以内 | 8857件 | 3748件 | 1546件 |
1年以内 | 8231件 | 3212件 | 1929件 |
2年以内 | 3017件 | 1269件 | 843件 |
2年超 | 281件 | 140件 | 85件 |
合計 | 2万6736件 | 1万275件 | 6017件 |
上記の分布からは、婚姻関係事件の調停が成立する場合でも3カ月以内で終了することは少なく、4カ月〜1年程度の期間を要するケースが多い傾向がわかります。また、1年を超えて調停が続いているケースや、長期間にわたって調停を行っても結局不成立になってしまうケースも少なくありません。
2. 離婚調停の流れと、各段階でかかる期間の目安
離婚調停を申し立てる前には、財産調査に加え、必要書類の作成や取得などの準備を整えなければなりません。
その後、実際に家庭裁判所へ調停申立てを行い、調停期日において具体的に離婚条件を話し合います。調停において合意が得られれば調停成立、合意の見込みがない場合は調停不成立となります。
離婚調停の各段階において、実際にかかる期間はケースバイケースですが、おおまかな目安を紹介します。
2-1. 事前準備|離婚調停の申立て
離婚調停を申し立てる前に、どのような条件で離婚を求めるかを検討する必要があります。特に財産分与や養育費などの金銭的な条件を検討する際には、配偶者の財産や収入などを調査するのにある程度の時間を要します。
また、離婚調停の申立てにあたっては、申立書や戸籍謄本類、財産に関する資料などの必要書類を準備しなければなりません。家庭裁判所に対して多くの資料を提出する場合は、その準備に時間がかかることも想定されます。
弁護士に依頼して上記の準備を進める場合、依頼から調停申立てまでに1カ月〜2カ月程度の期間を要するケースが多いです。
さらに、離婚調停に先立って配偶者と協議を行う場合には、協議に要する時間も想定しておかなければなりません。論点の多少や重要度などによりますが、1カ月〜2カ月ほど協議してまとまらないようであれば、調停への移行を検討したほうがよいでしょう。
2-2. 調停申立て|調停期日前の準備期間
離婚調停の申立てを受理した家庭裁判所は、調停期日を指定して当事者に通知します。調停期日は、申立てから約1カ月後に設定されることが多いです。
調停期日前の期間においては、家庭裁判所に対して主張書面を提出するなどの事前準備を行います。
2-3. 調停期日|調停成立または不成立
調停期日では、夫婦それぞれが調停委員と個別に面談し、調停委員を介して離婚条件などの調整を行います。
すべての離婚条件に合意が得られれば調停成立となりますが、まだ話し合うべき事項がある場合は、2回目以降の調停期日に持ち越されます。合意成立の見込みがある限り、調停期日は繰り返し開催されます。合意成立の見込みがなくなった場合は、調停が不成立とされて終了します。
なお、調停不成立となる場合でも、離婚条件のうち細かい部分についてのみ主張が異なっているに過ぎないときは、家庭裁判所が審判を行って離婚を成立させることがあります。
調停期日にかかる期間は事案によって異なるので一概に言えませんが、前掲の司法統計のデータによれば、4カ月〜1年程度を要するケースが多くなっています。調停が不成立となり、その後も離婚訴訟を通じて離婚を請求する場合には、さらに長い期間がかかります。
3. 離婚調停が長期化しやすいケース
以下に挙げる4つのようなケースでは、離婚調停が長期化しやすいと考えられます。
3-1. いずれかが離婚を拒否している場合
夫婦のうちいずれかが離婚を拒否している場合には、そもそも離婚するかどうかの話し合いから始める必要があるため、離婚調停が長期化しやすい傾向にあります。
離婚を拒否する姿勢が変わらない場合は調停が不成立となり、裁判所に対して離婚を成立させる判決を求める離婚訴訟に発展するケースも少なくありません。その場合、離婚成立までに1年〜2年以上の期間がかかってしまうことがよくあります。
3-2. 子どもの親権を争っている場合
夫婦間で子どもの親権を争っている場合には、家庭裁判所調査官が家庭訪問や面談を行い、どちらが親権者にふさわしいかを調査します。調停期日に加えて、調査官による調査に要する期間も加わるため、結果的に離婚調停が長期化するケースが多いです。
また、親権争いをする親は、子どもに対して強い思いを持っている場合が多く、お互いに譲歩しない傾向があるように思われます。そのため、調停を通じて合意できず、離婚訴訟に発展してしまうことが少なくありません。
3-3. 多くの論点について意見が食い違っている場合
離婚条件について夫婦間で揉めている論点が多ければ多いほど、離婚調停は長引く傾向にあります。
離婚時に取り決めるべき離婚条件は、財産分与、年金分割、慰謝料、婚姻費用、親権、養育費、面会交流など多岐にわたります。多くの論点で夫婦の意見が食い違っている場合には、離婚調停に入る前の段階で、お互いの代理人弁護士の間で論点を整理しておくことが望ましいです。
3-4. 当事者の態度が強硬である場合
離婚調停の目的は、離婚条件に関して夫婦間の合意を得ることです。そのため、お互いに何らかの譲歩をすることが求められますが、非常に強硬な態度で譲歩を拒否する人もいます。
夫婦のいずれか、または双方の態度があまりにも強硬だと、離婚調停が長引いたり、調停不成立となって離婚訴訟へ発展したりする可能性が高いです。離婚調停の段階で解決したいと考えている場合には、相手の言い分にも耳を傾けたうえで、状況次第で譲歩も検討すべきでしょう。
4. 離婚調停をできる限り長引かせないための方法
離婚調停をできる限り長引かせないようにするには、以下の3つのポイントを心がける必要があります。
離婚条件の優先順位を明確化し、必要に応じて譲歩する
調停委員を味方につけて、相手を説得してもらう
弁護士を代理人として同伴する
4-1. 離婚条件の優先順位を明確化し、必要に応じて譲歩する
離婚調停を早期にまとめるためには、相手の言い分も一部は受け入れて、互いに歩み寄りながら合意形成をめざすことが大切です。
あらかじめ離婚条件の優先順位をつけて、譲歩できる条件と譲歩できない条件を区別しておくと、明確な方針をもって離婚調停に臨めるはずです。
4-2. 調停委員を味方につけて、相手を説得してもらう
調停委員は中立ですが、合理的な主張をしている側に与する傾向にあります。調停委員を味方につけられれば、相手に対して譲歩を説得してもらえるケースも多いです。
自分の主張を補強する客観的な資料を提出し、事実関係をわかりやすく説明することによって調停委員を味方につければ、有利に離婚調停を進められます。
4-3. 弁護士を代理人として同伴する
離婚調停を通じて、さまざまな離婚条件を着実に決めていくためには、法的な観点から主張を整理して伝えることが大切です。そのためには、弁護士に依頼して事前検討を行い、調停期日にも弁護士を代理人として同伴することをお勧めします。
弁護士を通じて主張を伝えることで、調停委員の理解を得やすくなり、適正な条件による早期の調停成立につながります。

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5. 離婚調停が長引いている場合、生活費の分担はどうなる?
離婚調停が長引いている場合、離婚が成立するまでは、夫婦は互いに結婚生活にかかる生活費(婚姻費用)を分担する義務を負います。夫婦が別居している場合は一般的に、収入の少ない側が、収入の多いほうに婚姻費用を請求できます(収入の多い側が子どもと一緒に暮らす場合は、収入の少ない側が婚姻費用を支払うこともあります)。
別居期間の婚姻費用の額を計算する際には、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を用いるのが便利です。子どもの有無や人数に応じた表を選択し、夫婦それぞれの収入が交差する点を確認すれば、婚姻費用の目安額を知ることができます。
6. 離婚調停の期間に関してよくある質問
離婚調停の期日は、すべての離婚条件に合意できれば、理論上は1日で終わることもあります。しかし実際には、1回の調停期日ですべての離婚条件を合意することは難しく、4カ月〜1年程度の期間を要するケースが多いです。
離婚調停の最長期間は不明ですが、司法統計年報(前掲)のデータによると、少数ながら2年を超えて調停が続くケースもあります。
離婚調停では、調停委員から主に以下のようなことが聞かれます。
・離婚に至るまでの経緯
・求める離婚条件の内容
・夫婦の共有財産の状況
・子どもの養育の状況
それぞれ自分の言葉で説明できるように、十分な準備を整えて調停期日に臨みましょう。うまく説明できる自信がない場合は、調停委員に伝える内容をまとめた書面を提出する方法もあります。また、弁護士を代理人として同伴させ、代わりに説明してもらうことも可能です。
別居中の婚姻費用を長く受け取りたいなどの理由から、離婚調停を意図的に長引かせるケースも稀に見られます。
相手に調停を引き延ばすような姿勢が見られる場合には、早めに調停を打ち切って離婚訴訟へ移行することも検討しましょう。
ただし、訴訟において離婚を認める判決を得るためには、不貞行為や悪意の遺棄などの法定離婚事由(民法770条1項各号)を立証する必要がある点に注意が必要です。
離婚事件は調停前置とされているため、原則として離婚訴訟を提起する前に離婚調停を申し立てる必要があります(家事事件手続法257条1項)。したがって、離婚調停を経ずに離婚訴訟を提起することは、原則として認められません。
ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと判断したときは、例外的に離婚調停を経ることなく、離婚訴訟の提起が認められることもあります(同条2項)。たとえば相手が行方不明の場合や、重度の精神障害を患っている場合などには、離婚調停を経ずに訴訟の提起が認められる可能性が高いでしょう。
7. まとめ 離婚調停を早期にまとめるには弁護士のサポートが重要
離婚調停に要する期間は、準備段階で1カ月〜2カ月程度、調停申立てから調停成立までで4カ月〜1年程度が標準的です。夫婦のいずれかが離婚を拒否している場合や、多くの離婚条件で揉めている場合は、離婚調停の期間が長引きやすいと言えます。
離婚調停をできるだけ早くまとめるためには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。弁護士があらかじめ論点を整理したうえで、調停委員に対して説得的に主張を伝えることにより、適正な条件で早期に調停が成立する可能性が高まります。
離婚調停の申立てを検討していたり、配偶者から離婚調停を申し立てられて困っていたりする場合は、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)