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1. 離婚後も同居することは可能?
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2. 離婚しても一緒に住む理由は?
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2-1. 子どものことを考えて同居を続けるケース
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2-2. 新しい家や仕事が決まるまで一時的に同居するケース
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2-3. 復縁を望み同居を再開するケース
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2-4. 婚姻後に姓を変更したことの支障が大きく離婚したケース
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3. 離婚後に同居するメリット・デメリット
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3-1. メリット
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3-2. デメリット
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4. 離婚しても一緒に住む場合の留意点
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4-1. 生活費
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4-2. 親権
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4-3. 養育費
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4-4. 財産分与
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4-5. 扶養
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5. 離婚後も同居を続ける場合は世帯分離すべき?
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5-1. 世帯分離とは
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5-2. 世帯分離のメリット・デメリット
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5-3. 世帯分離の手続き方法
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6. 離婚後も同居した場合の手当はどうなる?
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7. 離婚後に同居を考えている場合は弁護士に相談
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8. 離婚後の同居でよくある質問
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9. まとめ 離婚後の同居はメリット・デメリットを考慮して判断しよう
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1. 離婚後も同居することは可能?
法律上、離婚した場合でも、必ず別居をしなければならないという規定はありません。そのため、離婚後も同じ住居に住み続けること自体に法的な問題はありません。実際、さまざまな家庭の事情によって、同居を続けるケースは存在します。
2. 離婚しても一緒に住む理由は?
離婚をしても家族で一緒に住む理由はさまざまです。例えば以下のようなケースが考えられます。
子どものことを考えて同居を続けるケース
新しい家や仕事が決まるまで一時的に同居するケース
復縁を望み同居を再開するケース
婚姻後に姓を変更したことの支障が大きく離婚したケース
2-1. 子どものことを考えて同居を続けるケース
両親が別居をした場合、子どもへの影響を完全に防ぐことは難しいものです。子どもはどちらか一方の親と暮らすことになるため、どれほど面会交流が充実していたとしても、別居中の親と気軽に顔を合わせる機会が減ってしまいます。
こうした影響を考慮し、子どもが自立するまで同居を続ける夫婦もいます。この場合、子どもが自立する年齢を迎えるまで、親として協力し合い、子どもが自立した後に別居することが多いようです。
2-2. 新しい家や仕事が決まるまで一時的に同居するケース
離婚が成立したものの、新生活の準備が整うまでの間、一時的に同居を続けることがあります。この方法を取ることで、新居や仕事をじっくり探しながら、同居解消時の片付けなども余裕をもって進められます。
2-3. 復縁を望み同居を再開するケース
離婚後、復縁を希望して同居を再開するケースもあります。結婚や離婚は個人の気持ちに大きく左右されるため、このような状況もあり得るでしょう。
筆者の経験でも、離婚調停まで至った後に、復縁を希望する側の真摯な気持ちが相手側に伝わり、再び同居を再開し、夫婦が関係修復に努める形で解決した例がありました。ただし、一度離婚した場合は法律上、他人の状態になるため、きちんと再婚の手続きが必要です。
2-4. 婚姻後に姓を変更したことの支障が大きく離婚したケース
日本では婚姻時にどちらか一方の姓を選ぶ必要があります。しかし、婚姻後の姓がどうしても馴染まず、仕事や生活に支障が出たため、苦渋の決断で離婚をしたケースも存在します。この場合、関係が悪化したわけではないため、夫婦として同居生活を続けることになります。
3. 離婚後に同居するメリット・デメリット
離婚後の同居には以下のとおり、それぞれメリット・デメリットがあります。
3-1. メリット
離婚後に同居する最大のメリットは、以下のように経済的な負担を軽減できる点です。
同居することで別々にかかる住居費が抑えられる
引っ越し代がかからない
食費や日々の生活費も複数人分をまとめることで節約できる
また、子どもを理由に同居を続けるケースでは、子どもへの心理的な影響を抑えられる点が大きなメリットです。さらに、離婚したことが周囲にわかりづらいことや、離婚後の同居をきっかけに、お互い気楽に接するようになり関係が良好になるなどのメリットもあります。
3-2. デメリット
一方で、離婚後の同居には以下のデメリットがあります。
公的扶助や税金の控除を受ける際に偽装離婚を疑われるリスクがある
元夫婦間の関係が悪いと子どもに悪影響を与える
住居費や生活費を負担する側が経済的に強い立場になりやすい
離婚後に同居する場合はメリットだけでなく、社会的な面や経済的な面のデメリットも含めて総合的に判断することが重要です。

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4. 離婚しても一緒に住む場合の留意点
離婚後も同居を続ける場合には、生活費や親権、養育費、財産分与など、さまざまな点に留意する必要があります。以下の点についてルールを明確化しておけば、トラブル防止に役立つでしょう。
4-1. 生活費
法律では、生活費のことを「婚姻費用」と呼び、夫婦間で分担すると定められています。婚姻関係があれば、その規定を根拠に、年収の低い側、経済力の弱い側が他方に対して生活費の支払いを求めることができます。
しかし、離婚後は婚姻関係が解消されるため、生活費の支払いを求める法的な根拠はありません。そのため、離婚後も同居を続ける場合には、生活費の分担やその他の生活ルールについて、事前に合意しておくことが重要です。
なお、事実婚状態にある場合は生活費の請求が可能ですが、一度離婚した場合には「事実婚」として同居を継続していると立証するのは困難な場合があります。
4-2. 親権
現行の民法では、離婚後は元夫婦のうち一方を親権者として決める必要があります。そのため、子どものために同居を続けている場合でも、法律上の権利は親権者に限定される点に注意が必要です。
ただし、2026年5月までに施行される改正民法により、離婚後も元夫婦双方が共同で親権を持つ「共同親権」が可能になります。この改正により、子どものための同居が選択しやすくなる可能性があります。
4-3. 養育費
養育費は、未成熟の子どもの生活費のことです。離婚後同居している場合は、裁判所が作成した「標準算定表」に基づき養育費を決定します。しかし、離婚後も同居を続ける場合には、この方法をそのまま適用することはできません。
標準算定表で算出できる養育費には、別居に伴う住居費や生活費が含まれています。同居している場合は住居費や食費、光熱費など、同居によって実質的に負担している費用を差し引く必要があります。このように、同居の場合の養育費計算は少しややこしくなる点があります。
4-4. 財産分与
財産分与は、離婚時に請求できる権利として法律で定められています。同居を続ける場合でも、財産分与の話し合いを進めることに問題はありません。ただし、例えば同居している住居が財産分与の対象となる場合、別居後であれば「売却」という選択肢を取れますが、同居を続ける場合にはその自由度が制限される可能性があります。
なお、財産分与の請求は離婚後2年以内に財産分与請求調停を申し立てることで、裁判所で解決を図ることも可能です(※2024年5月までに施行される改正民法で「5年以内」に延長)。
4-5. 扶養
社会保険や年金の面では、離婚後元夫(妻)の扶養から外れるため、国民健康保険に加入し、自身で保険料を支払う必要があります。
ただし、事実婚状態であると認められる場合には、「内縁の妻(夫)」として扶養に入ることが可能です。この状態を証明するには婚姻関係が事実上続いていることを示す必要があるため、手続きには注意が必要です。
5. 離婚後も同居を続ける場合は世帯分離すべき?
5-1. 世帯分離とは
世帯分離とは、現実には同じ住居に暮らしていても、住民票上で世帯を分ける手続きを指します。公的扶助の対象になるかどうかは、書類上の状態ではなく実態に基づいて判断されるため、離婚後に同居を続ける場合でも、世帯分離をする実益は薄いと考えられます。ただし、「住民票上でも世帯を分けた方が気持ちがすっきりする」といった心理的な理由で手続きを希望する場合は、一度検討してみてもよいでしょう。
5-2. 世帯分離のメリット・デメリット
世帯分離のメリットは以下の通りです。
精神的に「世帯を分けた」という区切りを感じられる
国民健康保険料が安くなる可能性がある
同居者が要介護者の場合、介護費用の自己負担額が軽減される可能性がある
一方、デメリットとしては、国民健康保険が逆に高くなったり、介護費用が増加したりする可能性もあります。結局のところ、世帯分離をすることで自身にどのような影響があるのか、費用負担などを考慮することが重要です。
5-3. 世帯分離の手続き方法
世帯分離の手続きは、住民票のある市区町村の役所で行います。手続きの際には、本人確認書類や印鑑などが必要になる場合があるため、事前に必要書類を確認しておくことをおすすめします。
6. 離婚後も同居した場合の手当はどうなる?
児童扶養手当やひとり親家庭への支援制度は通常、離婚後に受けられるものです。しかし、元配偶者と同居している場合、これらの支援の対象外となる可能性があります。もし、本来受けられない支援を受けた場合、それは違法行為となるおそれがあります。そのため、自分が支援対象になるかどうか、必ず自治体の担当部署に確認しましょう。
さらに、支援を受けるために意図的に離婚を装うような行為(偽装離婚)は、詐欺罪などの犯罪に該当する可能性があります。このような行為は絶対にやめましょう。
7. 離婚後に同居を考えている場合は弁護士に相談
離婚後に同居を続けるべきかどうかは、家庭ごとに事情が異なるため、一概に判断するのは難しいものです。離婚は法律上さまざまな変化をもたらすため、不安がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することで、自分の状況に合った具体的なアドバイスを受けることができ、安心して手続きを進められます。

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8. 離婚後の同居でよくある質問
法律上、離婚後は婚姻関係が解消されているため、新しく恋人ができても原則として不貞行為には当たりません。ただし、離婚後も同居している関係が事実婚だと認められる場合、不貞行為と判断される可能性があります。この場合、不貞行為を主張する側が事実婚の立証を行う必要があります。
離婚後も同居を続けるのはかなり珍しいケースですが、話し合いの上で同居の継続に合意したのであれば、周囲の目を気にしすぎる必要はありません。
いわゆる偽装離婚とは「公的扶助を不正に受ける目的」で離婚をすることです。単に離婚後も同居を続けているだけでは偽装離婚に該当しませんので、問題はないといえます。
法律上、離婚後も同居を続けること自体に問題はありません。ただし、公的扶助を受ける資格がないにもかかわらず、資格があるように見せかけて扶助を受けること(不正受給)は違法です。
離婚後は元配偶者の扶養に入ることはできません。税金についても、離婚後はそれぞれが個別に支払うことになります。ただし、離婚後の同居が事実婚なのであれば、「内縁の妻(夫)」として扶養に入れる可能性があります。
9. まとめ 離婚後の同居はメリット・デメリットを考慮して判断しよう
離婚後の同居自体に法的な問題はありません。子どもへの心理的影響を抑えたり、生活費の負担を軽減できたりするといったメリットがあります。ただし、公的扶助の対象外になる場合や、元配偶者との関係が悪化するリスクもあるため、注意が必要です。離婚後も同居を続ける場合は、トラブル防止のために生活費の分担や養育費の支払い、家庭内のルールを事前に明確化しておくことが大切です。不安がある場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)