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子の引き渡しを請求する方法とは? 手続きの流れや成功例

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配偶者や元配偶者にわが子を一方的に連れ去られたら、調停や審判で「子の引き渡し」を求めます(c)Getty Images
夫婦間に問題があるときに配偶者が子どもを連れて家を出ていったり、離婚した相手が一方的に子どもを連れて行ってしまったりなど、自身の意に反して配偶者や元配偶者が子どもを連れ去り、子どもと離ればなれになってしまうことがあります。そうした際に裁判所に救済を求める方法が「子の引き渡し」調停や審判です。 子の引き渡しを求める際にはどのような条件が必要なのか、またどのような流れで手続きが進むのかなどについて、弁護士が詳しく解説します。
目 次
  • 1. 「子の引き渡し」とはどういう意味?
  • 2. 自力で子どもを連れ戻すことはできる?
  • 3. 「子の引き渡し」を求める方法
  • 3-1. 子の引き渡し調停と審判の違い
  • 3-2. 子の引き渡し事件の申立ての状況
  • 4. 子の引き渡しを実現するまでの流れ
  • 5. 子の引き渡し審判とは?
  • 5-1. 父母の離婚が成立していない場合
  • 5-2. 父母の離婚が成立している場合
  • 6. 子の引き渡し審判の流れ
  • 6-1. 【STEP1】申立て
  • 6-2. 【STEP2】審判期日
  • 6-3. 【STEP3】審判の言い渡し
  • 7. 子の引き渡し審判における判断基準
  • 8. 子の引き渡し審判で聞かれること
  • 9. 子の引き渡し審判にかかる期間
  • 10. 審判前の保全処分
  • 10-1. 審判前の保全処分とは
  • 10-2. 保全処分が認められる条件
  • 11. 子の引き渡しの強制執行とは
  • 12. 国境をまたぐ子の連れ去りとハーグ条約
  • 13. 子の引き渡し案件のハードルはなぜ高い?
  • 14. 子の引き渡しについて弁護士に相談するメリット
  • 15. 子の引き渡しに関する弁護士費用
  • 16. 2026年5月までに導入される共同親権制度が子の引き渡しに与える影響
  • 17. 子の引き渡しに関してよくある質問
  • 18. まとめ 子の引き渡し請求には専門的な知識と技術が必要
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1. 「子の引き渡し」とはどういう意味?

数年前、元棋士が子どもをめぐって別居していた妻とトラブルになった件や、国際離婚した元卓球選手が子どもを日本に連れ帰り元夫に返さないといった問題が、ニュースになったことを記憶している人も多いでしょう。どちらも、男性側が「子の引き渡し」を求めて家庭裁判所に申し立てました。

当事者間の話し合いで合意できない場合に、裁判所を活用する手続きが「子の引き渡し」を求める調停や審判です。

「引き渡し」というと、何かを物理的に一方から他方へ移動させるイメージが浮かぶかもしれません。しかし「子の引き渡し」はそのイメージとは少し異なり、別々に暮らす両親の間で「子どもの取り合い」状況が生じているときに、子どもの身体のみならず、生活圏を一方の親元から他方の親元に移すことを言います。

2. 自力で子どもを連れ戻すことはできる?

相手が無断で子どもを連れ去ったり、子どもを返さなかったりと勝手なことをした場合、「自分も対抗手段として自力で子どもを連れ戻してもよいではないか」と考えたくなるのはもっともです。しかし、親子関係について定める民法に「自力救済の禁止」の大原則があるため、それは認められません。

「自力救済の禁止」とは、仮に自分の権利が他者に妨害されていたとしても、その権利を実行するために実力行使に訴えることを禁じるルールです。そのため、権利を回復したい場合には、裁判所など公的機関の手続きをふまなければなりません。面倒に見えますが、自力救済を禁止しないと、子どもの奪い合いが永遠に繰り返されたり、争いが激化したりして、子どもの心身の安全に危険が生じてしまいます。

3. 「子の引き渡し」を求める方法

親同士で子どもの取り合い状態になった場合の解決方法としては、以下の3通りがあります。

  • 話し合いでの解決を図る

  • 裁判所に調停を申し立てる

  • 裁判所に審判を申し立てる

別居中あるいは離婚後の夫婦や元夫婦の間で、子どもをどちらが育てるかをめぐって紛争になった場合、当事者間で話し合いを試みても、解決にいたらないケースが多いのが現状です。

当事者間では話し合いがつかず、裁判所を使って子の引き渡しを求める方法について、以下で解説します。

3-1. 子の引き渡し調停と審判の違い

子の引き渡しを望む親が、その目的達成のために裁判所を利用する手続きには、調停と審判があります。

調停は、最終的には当事者が合意して問題を解決する手続きです。当事者同士の単なる話し合いとは異なり、裁判所において調停委員2人と裁判官1人が中立の立場で当事者の話し合いを導き、合意形成をサポートしてくれます。調停で合意ができなければ、審判手続きに移行します。

審判は、当事者双方の主張を聞いて、裁判所が引き渡しを命じるかどうかを決定します。細かな点は異なりますが、訴訟と判決に近いイメージです。

子の引き渡しについて調停と審判のいずれを申し立てるかは、事案の緊急性や当事者間の対立の程度などに応じて判断し、まず調停から始めることも、最初から審判を申し立てることも可能です。

3-2. 子の引き渡し事件の申立ての状況

2023年の司法統計によると、子の引き渡しを求める調停の申立件数は1370件で、審判申立は2260件です。2013年の調停申立は1197件、審判申立は1570件で、10年間で調停利用は微増、審判利用は1.5倍程度に増えていることがわかります。

審判を申し立てるのは、調停での話し合いによる解決が見込めないと判断した場合です。審判申立の件数が増えていることから、対立の激しい事件が増えていると言えそうです。

4. 子の引き渡しを実現するまでの流れ

子の引き渡しを実現する手順としては、まず、子の引き渡しの調停あるいは審判を裁判所に申し立てます。引き渡しに緊急性を要する場合は、調停を経ずに最初から審判を申し立てて、あとで解説する「審判前の保全処分」として、審判が出されるまでの暫定的な引き渡しを求めることもできます。

審判で引き渡しを命じられたにもかかわらず相手が応じない場合は、引き渡しの強制執行を裁判所に申し立てます。子の引き渡しの強制執行には、間接強制と直接強制の2種類があり、間接強制から申し立てるのが原則とされています。

間接強制とは、一定期間内に子の引き渡しを実現しないと、引き渡しを実行するまで間接強制金を課すことを警告することで相手に心理的圧迫を加え、自発的な引き渡しを促すものです。

直接強制とは、裁判所の執行官が実際に子どものところへ行き、引き渡しを命じられた親から子どもを受け取って、強制執行を申し立てた親に引き渡すことで、いわゆる実力行使です。なお、引き渡しの直接強制と似た効果をもつ裁判手続きとして、人身保護法2条による人身保護請求という手段もあります。

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5. 子の引き渡し審判とは?

子の引き渡し審判とは、当事者双方の主張や証拠をもとに、裁判所が子どもを申立人に引き渡すことを命じる裁判手続きのことです。子の引き渡しを求める調停から移行することもありますが、必ずしも調停を経る必要はありません。

弁護士である筆者の事務所が依頼を受ける際も、最初から審判を申し立てるケースがほとんどです。どちらが子どもと暮らすかで意見の対立が生じている場合、経験上、話し合いで解決することは見込めない状況であることが多いためです。

5-1. 父母の離婚が成立していない場合

夫婦の一方が子どもを連れて別居した場合、双方が親権者でありそれまで一緒に暮らして世話をしてきたため、子どもと生活する権利(身上監護権)は双方にあります。

そのため、離婚していない場合に一方の親が他方の親に対して子の引き渡しを求める場合は、同時に「監護者指定の申立て」も行う必要があります。監護者とは、別居している父母のうち、子どもと一緒に暮らす親のことです。「自身が監護者であり、他方は監護者ではない」というお墨付きを裁判所からもらったうえで、子どもを引き渡してもらう手続きを踏む必要があります。そうしないと、子の引き渡し命令を双方が繰り返す結果を招くからです。

5-2. 父母の離婚が成立している場合

父母が離婚している場合、身上監護権は原則として親権者にあります。そのため、親権を持たない側の親が引き渡しを求める場合は、同時または事前に親権者を自身に変更するよう求める審判を申し立て、裁判所の審判によって自身が親権者となる必要があります。

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6. 子の引き渡し審判の流れ

子の引き渡し審判は、以下のような流れで進みます。

6-1. 【STEP1】申立て

申立書に子どもの戸籍謄本を添えて裁判所に申し立てます。費用は、引き渡しを求める子ども一人につき1200円で、収入印紙を申立書に貼って納めます。そのほか、通信用の切手が必要ですが、金額と切手の種類の組み合わせは裁判所によって異なります。

6-2. 【STEP2】審判期日

審判期日は、裁判所の法廷で行われます。家事事件は訴訟事件と異なり非公開であるため、法廷に傍聴席はありません。法廷では裁判官が中央正面の裁判官席に座り、当事者は対面で座るのが原則です。

ただし、筆者の事務所が扱ったなかには、夫婦関係が悪く法廷で相手と対面するのが困難な事情があったときに、裁判所が対面を避けて交代で主張を聞く対応をしてくれたケースもあります。

なお、最近は審判期日をオンラインで実施することも多くなりました。その場合、当事者は代理人同席のもと代理人弁護士の事務所からパソコン越しに、裁判所あるいは相手とやりとりをすることになります。

特に子どもの居場所を相手に開示していないケースでは、期日出廷のために裁判所に出向くと、その帰りにあとをつけられて居場所を知られるのではないか、と心配になる当事者も多く、そうした当事者にとってもオンラインの審判期日はメリットがあります。

子の引き渡しは、子どもの生活環境が大きく変化し、子どもの心身に多大な影響を与える可能性が高いため、裁判所は裁判所調査官という専門の担当官による調査を経たうえで、その結果も考慮して審判を下すことがほとんどです。

6-3. 【STEP3】審判の言い渡し

審判期日や調査結果などを総合的に判断し、裁判所が子の引き渡し命令を出すかどうかの審判を言い渡します。

審判は、言い渡されたら即日で効力が生じるわけではありません。当事者は審判内容に不服がある場合には、審判書を受け取った日の翌日から2週間の期間内に限り高等裁判所に即時抗告をすることができます。いずれの当事者も即時抗告をしなかった場合には2週間経過した日に確定します。どちらかの当事者が即時抗告した場合には、高等裁判所の判断が出て確定するまでは、子どもを取り戻すことはできません。

7. 子の引き渡し審判における判断基準

子の引き渡し命令を出すかどうかは、今後どちらの親と生活することが子の福祉にかなうか、という観点で判断されます。したがって、同時に申し立てられている監護権者の指定または親権者の変更と、実質的に同様の判断基準が用いられます。

引き渡しを認めることが子の福祉や利益にかなうかどうか、裁判所が以下の点などをふまえて総合的に判断します。

  • 連れ去りの態様や違法性の程度

  • 過去の監護状況

  • 子どもの年齢や心身の健康状況

  • 現在の監護状況

  • 双方の親の健康状態

  • 双方の親の収入や住宅事情

  • 現在の通園先や通学先における状況

  • それぞれの親に監護補助者がいるか

8. 子の引き渡し審判で聞かれること

審判手続きでは、子の連れ去りがどのような状況だったのかを含め、審判を申し立てるにいたった事情が聞かれます。

また、裁判所は判断材料の一つとして、双方の親に「子の監護に関する陳述書」の提出を求めるのが通常です。この陳述書は、監護権者や親権者を定めるためにも用いられるもので、記載項目のリストがあり、それに沿って記載します。

審判期日や家庭裁判所調査官の面談では、この陳述書を参考にしながら、判断基準とする内容について確認されます。

9. 子の引き渡し審判にかかる期間

事案にもよりますが、期日は通常、1カ月から1カ月半に1回のペースで、少なくとも3回から4回開かれます。そのため、早くても半年程度はかかります。事案によってはさらに期間がかかることもあります。

子の引き渡しの審判は例外的な場合を除き、同時に監護者指定の申立ても進める必要があるため、どうしても時間がかかってしまいます。そのため、裁判所に早急の引き渡しを認めてもらいたい場合は、引き渡しの審判を申し立てると同時に、次に解説する「審判前の保全処分」を申し立てるのが一般的です。

10. 審判前の保全処分

審判前の保全処分とは何か、解説します。

10-1. 審判前の保全処分とは

審判前の保全処分とは、子の監護者を正式に決定してから子を引き渡すよう命じる審判の前に、子どもを仮に引き渡すよう裁判所に判断を求める手続きです。

審判手続きには半年から1年かかるのに対し、保全処分は申立て後、2カ月から3カ月程度で判断が出されることが多くなっています。

保全処分が認められた場合は強制執行も可能です。

10-2. 保全処分が認められる条件

保全処分は仮の決定であるため、保全処分と異なる審判があとから出れば、審判が優先され仮の処分は効力を失います。そのため、子どもが裁判結果に振り回されるリスクを考え、実際に保全処分が認められるために必要な条件は厳格です。以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。

まず第一の条件は、仮処分の後に判断される引き渡し審判で引き渡しを命じる決定が出る蓋然性が高いと認められることです。これは、申立人が監護者として認められる可能性が高いことを意味します。

第二の条件は、子どもに差し迫った危険を防止するため必要である、という保全の必要性が認められることです。

保全の必要性の判断基準として、裁判例では、以下の点について審理し、総合的に検討する必要があるとしています。

  • 現に子を監護する者が監護にいたった原因が強制的な奪取またはそれに準じるものか

  • 虐待の防止、生育環境の急激な悪化の回避、そのほかの子の福祉のために子の引き渡しを命じることが必要か

  • 引き渡し審判の確定を待つことによって子の福祉に反する事態を招くおそれがあるか

上記の点について審理し、「これらの事情と子をめぐるそのほかの事情とを総合的に検討したうえで、審判前の保全処分により子の引き渡しの強制執行がやむを得ないと認められるような必要性がある」と裁判所が判断した場合に保全処分が認められます。

筆者が関わった事例では、申立人側でも相手側でも、仮処分が認められたケースはありません。裁判例を見ても、第一審で仮処分が認められたものの、抗告審では否定されるケースが散見され、実際のところ仮処分は簡単には認められていない印象です。

前述の裁判例の基準や、筆者の経験から考えると、子どもを連れて別居する際に子どもをだましたり無理やり連れ出したりした場合は、保全処分が認められる傾向があるようです。

筆者が関わったケースでは、連れ去りのあと3カ月以上たってから子の引き渡しの審判とその仮処分を申し立てたところ、時間がたっていることを理由に保全処分が認められなかったことがありました。

子どもを連れ去られた場合は早急に弁護士に相談し、監護者指定や子の引き渡し審判申立てとセットで保全処分をすみやかに申し立てることが重要です。

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11. 子の引き渡しの強制執行とは

子の引き渡しの強制執行には、引き渡しまで金銭の支払いを命じて心理的圧迫を加え、相手に子の引き渡しを促す間接強制と、裁判所の執行官の実力行使で引き渡しを実現する直接強制があります。

それでも子の引き渡しが実現されなかった場合には、最終手段として人身保護請求を行います。

12. 国境をまたぐ子の連れ去りとハーグ条約

ハーグ条約とは、国境を越えて子どもが不法に連れ去られたり、留め置かれたりした場合に、子どもを元の居住国に返すための手続きや、国境を越えた親子の交流について定められた国際条約です。1980年に採択された条約ですが、日本が締約国となったのは2014年です。

ハーグ条約に基づく子の返還命令が確定したにもかかわらず、子を連れ去った親がその命令に従わない場合、連れ去られた側の親は、子の返還の強制執行を裁判所に申し立てることができます。

その方法は、間接強制と代替執行の2種類です。代替執行は、子の引き渡し審判の直接強制に似た方法です。

なお、ハーグ条約は元の居住国や連れ去られた国が未締約の場合は、適用されません。元卓球選手が元夫の許可なく子どもを台湾から日本に連れて戻った事件では、台湾はハーグ条約に加盟しておらず、元夫は子の引き渡しを求めて日本の裁判所に申し立てました。

13. 子の引き渡し案件のハードルはなぜ高い?

経験上、子の引き渡しの申立てが認められるケースはあまり多くありません。その理由はいくつか考えられますが、日本の裁判所に申し立てられる子の引き渡し請求は、妻が子どもを連れて別居を始めたことから、夫が監護者指定と子の引き渡しをセットで申し立てるケースが多いことが影響しているように思います。

監護者指定の判断では、過去の監護実績を重視します。日本では今でも育児を多く担っているのは母親の場合が多く、その実績が反映されると夫が監護者に指定されるケースはどうしても少なくなります。

それに加え、日本の裁判所は監護者の指定にあたり調査官調査などを実施するため、時間がかかります。その間に子どもは新しい学校や生活環境になじむため、子の環境を再度変えることは子どもの利益を損なう、という判断に結びつきやすいのでしょう。

14. 子の引き渡しについて弁護士に相談するメリット

家事事件に精通した弁護士であれば、どのような条件がそろっていれば子の引き渡し請求が認められるか、また手持ちの事情や事実のうち、どれを強調すれば申立てが認められやすいかなどについて、経験をもとに的確なアドバイスができます。

これは反対に、子連れでの別居を考えている人にも同様のことが言えます。特に裁判などで子どもの意思が考慮されない12歳未満の子どもを連れて別居する場合は、後に配偶者から引き渡しを求められないか、求められた場合に勝てるかなどを事前に弁護士に相談し、アドバイスを受けておくと有益です。

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15. 子の引き渡しに関する弁護士費用

子の引き渡しに限らず、弁護士の相談料は30分5000円(以下、金額は消費税別)が一般的です。着手金は20万円から30万円ですが、監護者指定の申立てとセットの場合は30万円から40万円になります。依頼が成功した場合に支払う報酬は、着手金と同額程度であることが多いようです。

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16. 2026年5月までに導入される共同親権制度が子の引き渡しに与える影響

2026年5月までに、離婚後に子どもの父母双方が親権を持てる共同親権を認める制度が発効します。

共同親権制度は離婚前の別居中に申し立てる子の引き渡し請求には影響しませんが、問題なのは、離婚時に共同親権の同意をしたり、裁判で共同親権と決定されたりしたあとの扱いです。

まだ制度が開始されていないため、実際の細かい裁判所の扱いは不明確ですが、離婚にあたり共同親権に合意する場合は、実際に子どもと生活する主たる身上監護者はどちらなのかを取り決めておく必要が出てきます。観念上の親権は2分の1ずつ平等ですが、身上監護は子どもの状況に合わせて割合的に決めなければ、生活に支障が出るためです。

その結果、主たる身上監護者でない元配偶者が、主たる身上監護者の意に反して子の身上監護を物理的に開始した場合、つまり連れ去って帰さない場合、子の引き渡し請求が認められるようになると考えられます。

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17. 子の引き渡しに関してよくある質問

Q. 子の引き渡しに相手が応じない場合はどうする?

子の引き渡しの審判が出たにもかかわらず相手が応じないときは、裁判所に子の引き渡しの強制執行を申し立てたり、人身保護請求をしたりして、子の引き渡しを実現することになります。

Q. 子の引き渡しの強制執行が失敗するパターンとは?

子の引き渡しの間接強制が失敗するケースとしては、強制金の支払いが命じられても相手が支払わなかったり、逆に制裁金の支払いが負担に感じられず心理的圧迫の効果が生じなかったりする場合があります。


直接強制は、原則として執行官が相手の住所で子どもを受け取ること、また、子どもの心情に配慮することとされています。そのため、執行官が相手の住所を訪問しても子どもがいなかったり、子どもが泣き叫んでそこから出るのを嫌がったりすると、強制執行ができずに終わることがあります。

Q. 子の引き渡しを子ども自身が拒否した場合はどうなる?

間接強制については「子ども自身が引き渡しを拒否しても、それを理由に間接強制ができなくなるわけではない」という2022年11月30日の最高裁判例が存在します。一方で直接強制では、子どもの抵抗により引き渡しが実現しない可能性はあります。

Q. 子の引き渡しは母親が有利? 父親が成功する例もある?

子の引き渡しは、監護者指定の判断に連動します。その監護者指定の判断は、過去の主たる監護者が誰であったか、という点を重視して判断されます。そのため、父親と比べて母親が子どもの世話をする傾向が強い日本の慣習を考えると、母親の主張が通る結果になりやすいのは事実です。


しかし筆者の経験上、父親も積極的に子育てに関与するようになった近年では、必ずしも母親だから有利という結果になるわけではありません。筆者は近年、父親が子を連れて家を出たケースを複数扱いました。それらのケースでも、どちらが主として子どもの世話をしてきたか、親と子の関係、子どもが新しい環境になじんでいるか、という王道の基準で裁判所は判断していますが、なかには父親に有利な決定も出ています。

18. まとめ 子の引き渡し請求には専門的な知識と技術が必要

配偶者や元配偶者に一方的に子どもを連れ去られた場合に子どもを取り戻すための子の引き渡し請求ですが、条件が厳しく、認められない可能性も相当程度あります。

有利な決定を得るためにどのように主張を組み立てるかという点には、知識と技術を要します。場合によっては、請求を断念して別のアプローチを模索するなどの検討も必要です。

子どもを連れ去られて悩んでいる場合は、まずは信頼できる弁護士に相談することをお勧めします。

ところで、江戸時代の名奉行、大岡越前という名前を耳にしたことがあるでしょうか。奉行とは、現代の裁判官に近い役職です。子の引き渡し請求事件にかかわるたびに、筆者の頭には大岡越前の名裁きが浮かびます。

その事件は、夫婦間ではなく、母親と称する二人の女性が一人の子を取り合ったものです。大岡越前は二人の女性に、それぞれ子の両側に立ち、子の左右の腕をつかんで力づくで取り合うよう指示しました。二人の女性は当初、子どもの腕を持って左右に引き合いましたが、その後一方の女性が子の手を放してしまいました。もう一方の女性は自分が勝ったと喜んだのもつかの間、大岡越前は手を離したほうの女性を母と認める判断をしました。

なぜ大岡越前はこのような判断をしたか、みなさんも考えてみてください。同様の争いは、父と母の間にも置き換えることができます。大岡裁きは、子の取り合いで一番苦しむのが誰であるか、我々に示してくれています。

(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)

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