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介護を理由に離婚できる? 注意点から離婚が難しいケースまで解説

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単なる介護疲れでは離婚が認められにくいからこそ、弁護士に相談するのが有効です(c)Getty Images
配偶者や義両親の介護に疲れ、離婚したいと考える人は多いものです。夫婦には互いを助け合う義務はありますが、義家族は別問題です。とはいえ、「介護が辛いから離婚したい」と伝えてもなかなか相手には理解してもらえないでしょう。介護を理由に離婚できるケースや、離婚前にしておくべきことを弁護士が紹介します。
目 次
  • 1. 介護離婚とは
  • 2. 介護が原因で離婚に発展するケース
  • 2-1. 義両親の介護の場合
  • 2-2. 配偶者の介護の場合
  • 2-3. 子の介護の場合
  • 3. 義両親の介護義務は誰にあるのか
  • 4. 介護を理由に離婚はできる?
  • 4-1. 介護離婚できるケース
  • 4-2. 介護離婚が難しいケース
  • 5. 介護離婚で請求できるお金
  • 5-1. 慰謝料
  • 5-2. 財産分与
  • 5-3. 養育費
  • 5-4. 介護費用
  • 6. 介護離婚で後悔しないため離婚前にできること
  • 6-1. 配偶者や親族に相談して介護の協力を求める
  • 6-2. 介護サービスを活用して負担を軽減する
  • 6-3. 介護施設に入所してもらう
  • 7. 介護離婚を弁護士に相談するメリット
  • 8. 介護離婚でよくある質問
  • 9. まとめ すぐに離婚を決断せず、まずは親族内で十分に話し合うこと
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1. 介護離婚とは

介護離婚とは、介護そのものや介護疲れを理由に離婚することを指します。厚生労働省の「2022年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」によると、要介護者と主な介護者の関係で「同居」と答えた割合は45.9%でした。つまり、約半数が同居家族によって介護されていることになります。

要介護者から見た介護者との関係では、配偶者が22.9%で最も多い結果でした。そして、同居の主な介護者の性別は68.9%が女性です。この結果から、女性が配偶者や両親、義両親などの介護を担う割合が高いことが分かります。こうした社会的な状況が、介護離婚が生まれる背景にあると考えられます。

2. 介護が原因で離婚に発展するケース

介護が原因で離婚に発展するケースにはどのようなものがあるのか、弁護士の視点で紹介します。

2-1. 義両親の介護の場合

義両親の介護が原因で離婚に至るケースは以下が多いです。

  • 配偶者から介護を押し付けられた、丸投げされた

  • かつて義母や義父に辛い仕打ちを受けた

  • 退職をする等自身のキャリアを犠牲にして介護をしている

  • 介護を引き受けているのに感謝がなく家政婦や便利屋扱いされる

  • 介護中に配偶者が不貞行為に走る、遊び歩いている

介護だけでなく、義両親や夫への不満が募ることで離婚に至りやすくなります

2-2. 配偶者の介護の場合

配偶者の介護で離婚に至りやすいのは以下のケースです。 

  • 介護をしても文句や暴言を言われ、感謝されない

  • すでに愛想をつかしており介護する気が起きない

  • 一人で配偶者の介護をすることが不安

元々不仲だったところに介護がのしかかるケースや、介護が長期間続くことで夫婦でいる意味を見失ってしまうケースなどがあります。

2-3. 子の介護の場合

子の介護で離婚に至るケースの代表例は以下です。

  • 配偶者が介護に協力しない

  • 配偶者と育児や介護の方針が合わない

  • 配偶者が介護以外の家事なども協力しない

子の介護が直接の原因というわけではなく、配偶者が協力的でないことなどが原因で、夫婦が不仲になることが多いです。

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3. 義両親の介護義務は誰にあるのか

法律上、「介護」そのものの義務が直接規定されているわけではありません。

具体的には、民法752条で「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。また、民法877条第1項では「直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある」と規定されています。

つまり、配偶者には生活を援助する義務があるものの、義両親(配偶者の両親)を介護する法的な義務はありません。強いて言うなら、義両親が困っているのであれば、血のつながりのある家族がサポートするべきです。

4. 介護を理由に離婚はできる?

介護を理由に離婚できるケースとできないケースを紹介します。

4-1. 介護離婚できるケース

基本的に、離婚について夫婦で同意できるのであれば問題ありません。離婚届を市役所に提出すれば離婚が成立します。重要なのは、片方は離婚したいが、もう片方が離婚したくないケースです。

このケースでは、相手の行動が法定離婚事由に当てはまっている場合のみ、裁判所が離婚を認めます。法定離婚事由に当てはまる行為は以下の通りです。

  • 不貞行為がある

  • 別居を開始して3年以上が経過している

  • DVやモラハラなどで夫婦関係が破綻している

  • 正当な理由なく生活費を払わない、同居をしない

  • 3年以上の生死不明(2026年5月までに削除予定)

もちろん、これらは証拠がなければ、裁判所には認めてもらえません。本気で離婚を目指すのであれば、探偵に依頼するなどして証拠集めをする必要があります。

4-2. 介護離婚が難しいケース

自分が配偶者に介護を任せている場合は、離婚を求める際に注意が必要です。過去には、専業主婦の妻が子育てと夫の親の介護を担っていたケースで、夫の離婚請求が棄却された判例があります(東京高裁 平成30年12月5日判決)。

裁判所は、「離婚を認めると妻が経済的支えのないまま育児と介護を負担することになり、不公平だ」と判断しました。これは、「信義誠実の原則(社会正義に反する結論を防ぐ考え方)」に基づくものです。このような判例があるため、介護を配偶者に任せている場合は、相手の生活や負担への配慮が求められる可能性があります。

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5. 介護離婚で請求できるお金

5-1. 慰謝料

慰謝料とは、精神的苦痛に対する償いとして支払われるお金のことです。慰謝料を請求するには、相手の行為が法的に違法といえるレベルに達している必要があります。

そのため、介護中に暴力を振るわれた場合や、介護の最中に配偶者が外で不貞行為をしていた場合などは、慰謝料が認められる可能性があります。一方で、単に介護を押し付けられた、感謝されなかったといった理由では、慰謝料請求が認められるのは難しいです。

5-2. 財産分与

財産分与とは、婚姻中に夫婦で築いた財産を分け合うことです。介護を理由に離婚する場合でも、財産分与の対象となるのは、「別居時点」もしくは「同居中に経済的協力がなくなった時点」に存在する夫婦それぞれの個人名義の財産です。

財産分与は「夫婦の経済的協力の成果を清算するもの」であり、介護の有無とは直接の関係がありません

5-3. 養育費

養育費とは、夫婦の間にいる未成年の子どもの生活費のことです。通常、養育費は「標準算定表」をもとに算出されます。

しかし、子どもが介護を必要とする場合、標準算定表では考慮されていない特別な医療費などがかかることもあります。そのため、状況によっては養育費が一般的な水準よりも増額される可能性があります

5-4. 介護費用

介護費用を直接法律的に請求することは難しいですが、配偶者や義両親など近い親族を介護して、その親族が亡くなった場合、その親族の相続人に対して「特別寄与料」を請求できることがあります

ただし、「特別」とあるように、通常の親族としての期待以上の貢献をしたと評価される必要があります。

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6. 介護離婚で後悔しないため離婚前にできること

介護が原因で離婚に至る前に、できる限りの対策をしましょう。離婚を決断するのは、その後でも遅くはありません。

6-1. 配偶者や親族に相談して介護の協力を求める

まずは、一人で悩まずに配偶者や親族に相談し、介護の協力をお願いしてみましょう。反応を見てから離婚を判断しても遅くありません。離婚は一度すると取り返しがつかないため、慎重に行動することが大切です。

6-2. 介護サービスを活用して負担を軽減する

限界に達する前に、介護サービスを利用して負担を減らせるか検討しましょう。行政サービスを利用すれば、デイサービスやショートステイなどで費用を抑えつつ介護負担を軽減できます。地域包括支援センターに相談することも有効です。一人で悩まず、専門家の助けを借りましょう。

6-3. 介護施設に入所してもらう

親族間での介護が難しい場合は、介護施設への入所を検討しましょう。介護費用は多くの場合、親の老後資金を使うことになりますが、費用負担が大きい場合は、地域包括支援センターに相談して、特別養護老人ホームなどの月額利用料が抑えられる施設を考えるのも一つの方法です。

7. 介護離婚を弁護士に相談するメリット

介護を理由に離婚を考えている場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。介護が原因の離婚は、相手方の同意を得にくいです。

弁護士からは、それぞれのケースに合った法的アドバイスや情報を得ることができます。もし交渉や紛争に発展した場合も、弁護士に依頼すれば、交渉や調停、訴訟の代理をしてもらえます

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8. 介護離婚でよくある質問

Q. 夫の介護をしたくない、押しつけられるのは嫌、という理由で離婚できる?

相手が離婚を拒否した場合、介護をしたくない、押しつけられるのが嫌という理由だけでは、法律上の離婚理由としては弱いです。そのため、他の離婚理由を準備しておくことが重要です。例えば、長期間の別居は離婚理由として認められ、目安としては3年とされています。離婚を考えているなら、別居を始めることも検討してみましょう。

Q. 配偶者が亡くなった場合、義両親を介護する義務はある?

法律上、義両親を介護する義務はありません。さらに、制度上は任意で姻族関係終了届という書類を提出して、義両親との親族関係を明確になくすこともできます。義両親との関係性やご自身の心情を踏まえて検討することがよいでしょう。

Q. 介護疲れで離婚したいが配偶者が認知症の場合はどうしたらいい?

「自分で離婚するかしないかを決めることができる力」を意思能力といいます。意思能力がある場合は、通常と同じように離婚について話し合い、合意することを目指しましょう。

 

意思能力がない場合は、離婚についての話し合いなどは、家庭裁判所において成年後見人を選任する手続きを経てからとなります。

Q. 自分の親の介護を拒否されて離婚を求められたらどうすべき?

まず、離婚を求められた理由が義親の介護をしたくないことなのか、それとも他に理由があるのかを確認しましょう。また、自分自身が離婚に応じるべきか、離婚したくないのか、気持ちを整理することも大切です。

9. まとめ すぐに離婚を決断せず、まずは親族内で十分に話し合うこと

介護を理由に離婚を考える人は少なくありません。離婚には、夫婦の同意もしくは、相手の行動が法定離婚事由に該当している必要があります。義両親の介護をしなければならないという法的な義務はありません。

介護サービスなど頼れるものには頼り、自分が困っていることをしっかり伝えることが大切です。介護が原因で離婚を決断する前に、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。弁護士からの適切なアドバイスを受けることで、法的な手続きをスムーズに進めることができます。

(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)

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