「子どものために離婚しない」と考える人へ　離婚の判断基準を解説

1. 「子どものために離婚しない」よくある理由とは？

夫婦関係が悪化していても、子どものために離婚はしない方がいいと考える人は多いのではないでしょうか。実際、当事務所でも、そのような相談を受けることがよくあります。理由としては以下のようなものが多いです。

1-1. 子の成長のためには両親が必要と思っている

「家族はこうあるべき」といった理想の家族像を持ち、健全な子どもの成長には両親がそろっていることが不可欠だと強く考える人も多いです。また、親の離婚が子どもの結婚観に悪影響を及ぼすのではないかと懸念する人も少なくありません。

1-2. 片親を奪うのはかわいそうに感じる

配偶者が子どもにとってよい親であり、子どもが配偶者に懐いている場合、離婚によって片方の親を奪うことになるのではないかと不安に思う人もいます。その結果、「子どもがかわいそうだから」と離婚に踏み切れないことがあります。

1-3. 経済的に苦労をかけたくない

離婚後も自分が子どもを育てたいと思っても、収入に不安がある場合や専業主婦（主夫）である場合、子どもに経済的な負担をかけてしまうのではないかと不安に感じることがあります。また、収入がある場合でも、子どもの教育費や生活費を十分に確保するために、離婚を避けることもあります。

1-4. 進学への影響

子どもが受験を控えている場合、離婚が子どもの精神面に与える影響を心配することもあるでしょう。親の離婚で、受験を控えた子どもに余計なストレスを与えたくないことを理由に、離婚を先延ばしにすることも多いです。

2. 「子どものために離婚しない」ことのデメリット

確かに、離婚は子どもの生活に大きな変化を与えることが多いでしょう。しかし、「子どものために離婚しない」ことが、かえって子どもに悪影響を与えることもあります。

例えば、両親が毎日のように罵り合い喧嘩が絶えない状況が続けば、子どもにとって非常につらい生活になります。子どもは家庭に居づらさを感じ、将来的に結婚生活に対してネガティブなイメージを持つ可能性もあります。

また、子どもが「自分のせいで両親が喧嘩しているのではないか」と自分を責めたり、「自分がいるせいで親が離婚を我慢しているのではないか」と悩んだりすることもあります。

3. 子どものために離婚した方がいいケース

以下のようなケースでは、「子どものために離婚をしない」という考え方よりも、「子どものために離婚する」という選択肢を検討した方がよいかもしれません。

3-1. 夫婦喧嘩をやめられない

子どもの目の前で頻繁に夫婦喧嘩をしたり、子どもを喧嘩に巻き込んだりする場合は、そのような状況下で一緒に生活していることが子どもに悪影響を及ぼす可能性があります。

常に争いが続く環境では、子どもは双方の親に気を遣いながら生活しなければならず、心身への負担も大きくなります。子どもの前で争いのない状態でいられないのであれば、別居や離婚を検討した方がよいでしょう。

3-2. DVやモラハラがある

配偶者が子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたりする場合は、子どもの心身の安全を第一に考え、一刻も早く配偶者から避難するべきです。また、たとえ子どもに暴力を振るっていなくても、自分が被害に遭っている場合には速やかに避難してください。

親が暴言を吐かれる状況は子どもにとってもつらいものです。さらに、子どもの目の前で配偶者に暴力を振るう行為は「面前DV」と呼ばれ、子どもに対する心理的虐待とされています。物理的・精神的な暴力によって子どもに悪影響が及んでいる場合には、子どものためにも離婚した方がよいでしょう。

3-3. 生活費を一切入れない

働いているにもかかわらず生活費を一切入れない場合や、ギャンブルや借金癖、浪費癖がある場合も結婚生活を続けることのデメリットを考えた方が良い場合があります。子どものための生活費や貯金まで使われると、むしろ子どもに金銭的な負担をかけることになります。

3-4. 不倫が絶えない

配偶者が不倫を繰り返す場合も、このまま結婚生活を続けるのが良いのかどうかを検討した方がよいでしょう。子どもが親の不倫を知ることで親への信頼関係を失ったり、心理的な影響を受けたりする可能性があります。その結果、子どもの性格形成や価値観にも悪影響を及ぼす恐れもあるでしょう。また、夫婦としての信頼関係が壊れ、家庭内の雰囲気が悪くなるなど生活の安定が保てなくなることもあります。

3-5. 子が親を嫌っている

子どもが配偶者を嫌っている場合も、状況によっては子どものために距離を置くことも選択肢の一つです。

例えば、親の自分勝手な言動によって子どもが傷つき、親を拒絶することがあります。それにより親子関係が断絶状態となり関係の修復が難しい場合には、配偶者と距離を置く必要があるかもしれません。

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4. 子どものために離婚しない方がいいケース

離婚が子どもにとってよい選択かどうかは、一概には言えません。しかし、以下のような事情がある場合は、すぐに離婚を決断せず慎重に考えた方がよいでしょう。

4-1. 夫婦関係修復の余地がある

お互いに話し合うことで関係を改善できる余地がある場合、すぐに離婚を決断するのではなく、夫婦関係の修復を試みることも一つの選択です。双方が子どものために関係改善を考えている場合、夫婦の在り方や子どもの前での対応について意見をすり合わせることで、問題を解決できる可能性があります。

4-2. 離婚後の生活の見通しが立たない

自分に収入がなく、離婚後の生活の見通しが立たない場合は、就職活動や資格取得など、生活基盤を整える準備から開始する必要があります。また、離婚後に受けられる公的制度などについても事前に把握しておきましょう。

4-3. 子に不安を与えるべきではないタイミングのとき

子どもが両親の離婚に反対している、あるいは精神的に不安定な時期である場合、離婚のタイミングを慎重に検討した方がよいでしょう。たとえば、受験期は避けるといった考え方をする方もいます。

子どもが話し合いに参加できる年齢であれば、十分な時間をかけて子どもの気持ちを確認し、親の気持ちを伝えた上で判断することが望ましいです。

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5. 「子どものために離婚しない方がいい？」と思ったら考えるべきこと

「子どものために離婚しない方がよいのだろうか」と思ったら、以下の点をじっくり考えてみましょう。

5-1. 子ども自身の本音はどうなのか

親が「子どものために離婚しない方がいい」と考えていても、子どもの本音は異なる場合があります。例えば、一方の親が「自分のために無理をして夫婦生活を続けている」と理解していて、それを負担に感じていることもあります。

また、日常的に不仲である状況を見て、その環境から解放されたいと考えている場合もあるでしょう。子どもが話せる年齢であれば、ゆっくり時間を取り、子どもの気持ちや考えを丁寧に確認することが重要です。

5-2. 離婚しないことが、子にとって本当によいことなのか

今の状況を考慮して、離婚しないことが子どもにとって本当によいことなのかじっくり考えることも大切です。

例えば、子どもの前でつい相手の悪口を言ったり、夫婦喧嘩を繰り返したりする場合、子どもに悪影響を与えている可能性が高いです。喧嘩を避けていても夫婦の会話が少なく、よそよそしい態度や険悪な雰囲気である場合は、子どもが両親の不仲に傷つき、居心地の悪さを感じているかもしれません。

5-3. 離婚が与える子への悪影響を防ぐ手立てはないか

子どものために離婚しない方がよいと考える人の多くは、離婚による悪影響を心配しているのではないでしょうか。しかし、事前に対策を講じることで、離婚によるデメリットを軽減できる可能性があります。例えば、金銭的な不安がある場合は、就職や転職、行政支援を確認しておくことが考えられます。

また、子どもと配偶者の関係が良好な場合、離婚によってその関係が絶たれることを心配する場合もあるでしょう。その場合は、子どもが双方の家を行き来できるように、自由な面会交流を認める方法もあります。離婚後も親として子どもの成長に関わることを相手に伝え、お互いに協力できる関係を築くことが望ましいです。

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6. 子どものために離婚せず別居するメリット・デメリット

子どものために離婚せず、別居を選択するケースもありますが、別居にもメリット・デメリットがあります。

【メリット】
別居していても、離婚せず夫婦のままでいれば相手から婚姻費用を受け取れます。婚姻費用には養育費の他に生活費も含まれるため、離婚後の養育費よりも高い金額になります。そのため、別居により経済的に安定した生活を継続できる場合もあります。

また、一時的に距離を置くことで、お互いが関係を冷静に見つめ直すことができます。離れてみて初めてお互いの大切さに気づき、夫婦関係の修復につながることもあります。

【デメリット】
別居を続けても、将来について話し合いができていない場合は問題が解決しないままです。また、長期間の別居により、予期しないタイミングで相手から離婚を求められることもあります。

さらに、別居中は共同で子どもの親権を持つことになりますが、一時的な別居を想定して子どもを置いて自分だけが家を出ると、最終的に離婚となった際に親権獲得において不利になる可能性があります。別居中にどちらが子どもと暮らすか、子どもとの関わり方について夫婦で対立し、争いに発展することもあります。

7. 「子どものために離婚しない」に関連して、よくある質問

8. まとめ 離婚すべきかどうかは子どもを最優先に考える

「子どものために離婚しない」と考えても、状況によってはかえって子どもに悪影響が生じ、苦しめる結果となる可能性があります。特に、夫婦喧嘩が絶えない場合や、配偶者から暴力や暴言がある場合は、「子どものために離婚する」ことを検討しましょう。

子どもは親が思っている以上に、状況をよく理解しているため、両親の不仲に強い不安を感じています。ある程度会話ができる年齢であれば、子どもの気持ちを受け止める時間を持ちましょう。夫婦が離れても親であることは変わらず、大切に思っていると伝えて安心させることが重要です。

（記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています）