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不倫(浮気)した配偶者にも養育費を支払う必要あり? 慰謝料との関係についても解説

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不倫をされた側でも養育費は支払わなければなりません(c)Getty Images
不倫が原因で子あり夫婦が離婚した場合、養育費の支払いが発生します。養育費は非親権者から親権者に対して支払うもので、不倫をしたのはどちらかなどは基本的に関係ありません。しかし、養育費の他に慰謝料が発生することなどにより問題が複雑になりやすい一面もあります。不倫が原因による養育費の支払義務や金額の決め方について、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 不倫(浮気)をした配偶者に養育費を払う必要はある?
  • 1-1. 不倫と養育費は無関係なので支払い義務が生じる
  • 1-2. 親権は不倫と関係なく子どもの幸せを考慮して決定
  • 2. 不倫で離婚した場合の養育費の支払いはどうなる?
  • 2-1. 妻が不倫をして夫が親権者になる場合
  • 2-2. 妻が不倫をして妻が親権者になる場合
  • 2-3. 夫が不倫をして妻が親権者になる場合
  • 2-4. 夫が不倫をして夫が親権者になる場合
  • 3. 不倫で離婚する場合の養育費の取り決め
  • 3-1. 養育費の相場
  • 3-2. 養育費の支払い期間
  • 3-3. 養育費を支払わなくていいケース・減額できるケース
  • 3-4. 養育費を取り決める際の注意点
  • 4. 不倫・浮気をした配偶者に養育費を払いたくない場合はどうする?
  • 4-1. 配偶者に不倫慰謝料を請求する
  • 4-2. 養育費と慰謝料は相殺できないが調整できる
  • 4-3. 自分が親権を獲得する
  • 5. 共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が不倫した配偶者への養育費に与える影響は?
  • 6. 養育費と不倫に関するよくある質問
  • 7. まとめ 不倫が原因で離婚する場合の養育費で悩みがあれば弁護士に相談を
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1. 不倫(浮気)をした配偶者に養育費を払う必要はある?

養育費とは、一般的に親権者にならなかった親が、離れて暮らす子どものために負担する費用のことをいいます。具体的には、衣食住等の生活費や教育費、医療費などがこれに当たります。離婚をしても親は子どもを養育する責任があり、親は自分と同等の生活を子どもに保障する義務(生活保持義務)を負っています。

1-1. 不倫と養育費は無関係なので支払い義務が生じる

養育費は子どもの権利であり、両親がどのような理由で離婚したかは養育費の支払いに影響を与えません。たとえ親権を持つ側の不倫が離婚原因であったとしても、親権を持たない親は養育費を支払う義務を負っています。不倫をした元配偶者に対してお金を払うことには抵抗があるかもしれませんが、養育費はあくまで子どものための費用であり、不倫とは切り離して考えなければなりません。

1-2. 親権は不倫と関係なく子どもの幸せを考慮して決定

不倫をしたからといって、親権者として不適切と判断されるわけではありません。一般的に、父母のどちらが親権者として相応しいかは、以下の要素を中心に判断されます。

  • 継続性の原則

  • 母性優先の原則

  • 兄弟不分離の原則

  • 子の意思の尊重

つまり、どちらと暮らす方が子どもにとってより幸せかが判断基準となります。

2. 不倫で離婚した場合の養育費の支払いはどうなる?

不倫と養育費には直接の関係がありません。つまり、不倫があったかどうかに関係なく、親権のない方が親権のある方に対して養育費を支払わなければなりません。ここではその具体的なケースや義務について説明します。

2-1. 妻が不倫をして夫が親権者になる場合

妻の不倫が原因で離婚し、夫が親権者となった場合、妻は夫に養育費を支払う必要があります。養育費といえば、夫が妻に支払うケースが比較的多く見られますが、性別は関係なく、親権者でない親は他方に対して養育費を支払う義務を負います

2-2. 妻が不倫をして妻が親権者になる場合

妻の不倫が原因で離婚しても、妻が親権者になった場合には、夫は妻に養育費を支払わなければなりません。夫からすれば、不倫をした妻には1円も払いたくないと思うかもしれませんが、養育費は夫婦のどちらが婚姻関係を破綻させたかという有責性とは関係なく発生します。

なお、不倫をした妻が妊娠中に離婚した場合、離婚後300日以内に生まれた子は元夫の子と推定されます(※)。妻が再婚しない場合には、原則として元夫に養育費を請求することになりますが、血縁上の父親が認知をすれば、その父が養育費の支払い義務を負うことになります。

※2024年(令和6年)公布の民法改正(2026年5月までに施行)により、離婚後300日以内に生まれた子でも母が再婚していれば新しい夫の子と推定されるようになります。

2-3. 夫が不倫をして妻が親権者になる場合

夫が不倫をして離婚となり、妻が親権者となるケースは、最も多いパターンといえるでしょう。このような場合、当然、妻は夫に対して養育費を請求できます。また、妻は夫に対し、養育費に加えて不倫の慰謝料も請求することができます

2-4. 夫が不倫をして夫が親権者になる場合

夫の不倫が原因で離婚となっても、夫が親権者となる場合には、原則として妻は夫に対して養育費を支払う必要があります。ただし、夫の収入に比べて妻の収入が著しく低いような場合には、敢えて夫から養育費を請求しないということもあるでしょう。

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3. 不倫で離婚する場合の養育費の取り決め

ここまで、不倫と養育費には直接の関係がないことを説明しました。次は、養育費の金額や支払い期間について説明します。

3-1. 養育費の相場

養育費の金額は、基本的に当事者同士の話し合いで自由に決められます。しかし、一般的には裁判所が公表する「養育費算定表」に基づいて決められることが多いです。

不倫をされた側から「不倫をした配偶者には養育費を払いたくない」や「養育費を減額すべき」といった主張が出ることもありますが、養育費はあくまで子どものための費用です。不倫の有無とは関係ありません。不倫をした配偶者に支払う場合でも、養育費の相場が変わることはありません

3-2. 養育費の支払い期間

家庭裁判所の実務では、養育費の終期は20歳が原則ですが、当事者が自由に決めることができます。子が大学に進学する場合には、大学を卒業する3月までと合意することも多いです。

なお、20歳になる前に子が就職したり、結婚したりして経済的・社会的に自立すれば、その時点で養育費の支払義務は消滅します。

3-3. 養育費を支払わなくていいケース・減額できるケース

養育費の取り決めをしたあとに予測できなかった事情の変更があった場合には、養育費をゼロまたは減額することができます。事情変更として一番多いのが、当事者の再婚です。

親権を持つ側が再婚し、その再婚相手と子が養子縁組をした場合には、再婚相手が第一次的な扶養義務を負うことになります。そのため、元配偶者は養育費を支払わなくてよいか、または大幅に減額できる可能性があります。

反対に、親権を持たない親が再婚し、扶養対象者が増えた場合にも養育費が減額となる可能性は高いでしょう。

3-4. 養育費を取り決める際の注意点

養育費の取り決めをしたら、出来る限り公正証書に残すようにしましょう。公正証書があれば、将来養育費の不払いがあった際、相手方の預貯金や給与などを差し押さえることができます

逆に支払う側の親にとっては、公正証書を作成すると強制執行を受けるリスクがあるため注意が必要です。公正証書を作成した以上、約束どおり養育費を支払うようにしましょう。

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4. 不倫・浮気をした配偶者に養育費を払いたくない場合はどうする?

「相手の浮気が原因で離婚となったのに、相手に対して養育費を払いたくない」と考える人も少なくないでしょう。ここまで説明した通り、不倫と養育費は直接関係がないため、養育費の支払いを避けるのは難しいです。ただし、何も対処法がないわけではありませんので、できることを紹介します。

4-1. 配偶者に不倫慰謝料を請求する

不倫をされた側であり、かつ親権を持たない場合は、不倫をした配偶者に対して養育費を支払う義務があります。ただし、不倫による精神的苦痛については、別途「慰謝料」として請求が可能です。

不倫が原因で離婚に至った場合、慰謝料の相場は約150万~300万円と比較的高額になることが一般的です。慰謝料を請求する方法としては、以下の手段があります。

  • 内容証明郵便を送る

  • (離婚)調停を申し立てる

  • 裁判を起こす

相手が不倫を認めている場合を除き、慰謝料請求には客観的な証拠が必要です。また、慰謝料請求権は離婚後3年で時効となるため、早めの対応が重要です。

4-2. 養育費と慰謝料は相殺できないが調整できる

慰謝料と養育費は本来、目的が異なるため、法律上は相殺が認められません。ただし、双方が支払い義務を負う場合、相殺を認めないと二重の支払い手続きが発生したり、無駄な振込手数料がかかったりする可能性があります。そのため、実務では合意書を作成し、双方の支払い義務を明記したうえで、事実上の相殺を行うケースがあります。

例えば、妻が不倫をして親権者となった場合、夫に支払う慰謝料を分割払いとし、その金額を夫が支払う養育費と相殺する方法が考えられます。この場合、慰謝料の支払いを長期分割とし、その期間中、養育費を慰謝料分だけ減額するという形を取ることになります。

4-3. 自分が親権を獲得する

相手に養育費をどうしても支払いたくない場合、自分が親権を獲得する必要があります。親権者を判断する際には、これまで主にどちらが子どもを養育してきたかという「監護実績」が重視される傾向があります。

特に男性の場合、子どもの年齢が低いほど監護実績で不利になることが多く、無理に連れ去りを試みるケースも見られます。しかし、違法な連れ去りは問題を複雑化させるだけです。正当に親権を獲得するためには、まず弁護士に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。

5. 共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が不倫した配偶者への養育費に与える影響は?

現行の単独親権制度では、不倫を理由に親権争いが激化するケースが少なくありません。特に、妻が不倫をして離婚に至った場合、子どもの年齢が低いほど妻が親権を獲得することが多い一方で、夫が「不倫をした妻は親権者にふさわしくない」として違法な連れ去りを行ったり、「不倫した妻には養育費を支払いたくない」と支払いを渋るケースも見られます。不倫による被害と子どもの養育を分けて考えることが難しいのが現状です。

こうした問題は、共同親権制度や法定養育費制度の導入によって、ある程度緩和される可能性があります。共同親権であれば、夫が無理に連れ去りをして監護実績を作る必要がなくなります。また、夫が養育費の支払いを拒否した場合でも、法定養育費と先取特権によって強制的に回収する仕組みが整備されるため、争いを減らす効果が期待できます。

6. 養育費と不倫に関するよくある質問

Q. 養育費を不倫の慰謝料としてもらうことはできる?

養育費と不倫の慰謝料は全く別物であり、養育費のほかに別途、慰謝料を請求することができます。もちろん、養育費の金額は当事者間で自由に設定できるため、実質的に慰謝料分を上乗せして、相場より高い養育費として合意することも可能です。

Q. 不倫相手に養育費を請求できる?

養育費は親権者とならなかった親が他方の親に支払うものであり、不貞相手に対して養育費を請求することはできません。ただし、不貞相手に対して不倫の慰謝料を請求することはできます。

Q. 親権を取った相手が婚姻期間中に不倫をしていたことが離婚後に判明。養育費の減額などは可能?

養育費は子どものための費用であり、元配偶者の不倫とは無関係です。そのため、離婚後に不倫が判明しても、そのことを理由に養育費を減額することは認められません。ただし、不倫の証拠がある場合には、離婚後でも慰謝料を請求することは可能です。なお、不倫の事実を知ってから3年で時効となるので注意が必要です。

Q. 既婚者との不倫の末に妊娠した。結婚していなくても養育費はもらえる?

養育費の請求は可能ですが、その前に不倫相手に子どもを認知してもらう必要があります。認知には、任意認知と強制認知の2つの方法があります。

 

任意認知は、父親が自分の意思で子どもを認知する方法です。父親が認知届を役所に提出するだけで認知が成立します。ただし、子どもの出生前に認知する場合は、母親の同意が必要です。

 

強制認知は、父親の意思に関係なく裁判で認知させる方法です。いきなり裁判を起こすことはできず、まずは調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。

7. まとめ 不倫が原因で離婚する場合の養育費で悩みがあれば弁護士に相談を

養育費とは、離婚後に夫婦の子どもを育てるために必要な費用のことです。一般的には、子どもを引き取った親(親権者)に対して、引き取らなかった親(非親権者)が養育費を支払います。例えば、妻の不倫が原因で離婚し、かつ妻が親権を持つ場合、夫は養育費を支払う義務があります。夫は不倫の被害者ですが、養育費の支払いには不倫の有無は関係ありません

養育費の金額は、不倫の有無にかかわらず変わることはありません。ただし、養育費とは別に慰謝料が発生することがあり、実質的には相殺や上乗せなどの形で養育費の増減につながる可能性もあります。

親権や養育費に関する問題は離婚時に大きな争いになることがあるため、悩みや不安がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。

(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)

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