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1. 養育費を取り決める調停とは
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1-1. 夫婦関係調整調停(離婚)
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1-2. 養育費請求調停
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2. 養育費の調停を行う場所と日時
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2-1. 初回の期日は申立てから1~2カ月後
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2-2. 調停日時は基本的に平日の日中
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2-3. 調停場所は相手が住む地域の家庭裁判所
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3. 養育費の調停に相手が来ない場合はどうなる?
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3-1. 待機しても来なければ期日が終了
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3-2. 次回期日の指定|相手の欠席が続くと調停は不成立に
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3-3. 調停不成立後は審判移行または訴訟提起
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3-4. 最終的には裁判官が養育費の内容を定める
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3-5. 養育費を払わない場合は法的手続きへ
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4. 養育費の調停に相手が来ない場合の取り決め額はどうなる?
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5. 養育費の調停を有利に進めるためのポイント
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5-1. 養育費の相場を把握しておく
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5-2. 主張を裏付ける資料を用意する
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5-3. 調停委員を味方につける
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5-4. 将来起こり得る問題も想定しておく
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5-5. 弁護士に依頼する
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6. 養育費の調停に相手が来ない場合についてよくある質問
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7. まとめ 調停に相手がこないと最終的にはこちらが有利になる
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1. 養育費を取り決める調停とは
調停とは、裁判所内で行われる話し合いのことで、調停委員と呼ばれる裁判所の職員を交えて行います。選択すべき手続きは「夫婦関係調整調停(離婚)」か「養育費請求調停」のいずれかです。
1-1. 夫婦関係調整調停(離婚)
夫婦関係調整調停(離婚)、通称「離婚調停」は、養育費を請求したい相手と婚姻関係にある場合に適しています。この調停では、離婚するかどうか、または離婚する場合の条件について話し合います。その中で、養育費の支払い方法も離婚条件の一つとして議論されます。
1-2. 養育費請求調停
「養育費請求調停」は、相手と婚姻関係がない場合や、すでに離婚している場合に利用する手続きです。この調停では、養育費の支払い方法についてのみ話し合います。すでに養育費を取り決めていて、その内容を変更したい場合は、「養育費増額調停」または「養育費減額調停」を申し立てます。
2. 養育費の調停を行う場所と日時
次に、養育費の調停を行う場所や日時、手続きの流れなどを紹介します。
2-1. 初回の期日は申立てから1~2カ月後
養育費請求調停を申立てると、1週間から2週間後に裁判所から連絡があり、申立人と裁判所で第1回期日の日程調整が行われます。裁判所の混雑状況によりますが、提示される日程は通常1カ月から2カ月先です。都市部の裁判所は地方より混雑する傾向にあります。
第1回期日の日程が決まると、裁判所から相手方に、調停の申立てと第1回期日を知らせる書類、調停申立書の写しが送付されます。
2-2. 調停日時は基本的に平日の日中
裁判所の開庁時間は平日9時から17時のため、調停期日は平日の日中に設定されます。一般的な時間帯枠は、「10時から12時(午前)」と「13時15分から15時15分(午後)」です。
平日に仕事などがある人は、休みを取るなどして予定を調整しなければいけません。
2-3. 調停場所は相手が住む地域の家庭裁判所
調停を申立てる裁判所は、法律で「管轄」が定められています。正確には、相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。ここでの住所地とは、実際に住んでいる場所を指し、住民票の住所とは異なる場合があるので注意が必要です。
3. 養育費の調停に相手が来ない場合はどうなる?
調停は裁判所内で行われる話し合いの場ですが、相手が来ないと話し合いが進みません。このような場合にどうなるのかを説明します。
3-1. 待機しても来なければ期日が終了
調停の第1回期日は、申立人と裁判所の都合で決まるため、相手が第1回期日を欠席することはそう珍しいことではありません。したがって、一度期日を欠席しただけでは、調停は終了しないことが通常です。
期日当日は、裁判所で待合室に待機し、調停委員から呼ばれて調停室に入ります。30分程度、調停申立ての理由を話した後、相手と交代するために待合室に戻りますが、相手が来ていなければその旨が告げられ、さらに30分程度待つように言われることが多いです。それでも相手が来なければ、その期日は終了します。
3-2. 次回期日の指定|相手の欠席が続くと調停は不成立に
第1回期日に相手が欠席しても調停は終了せず、再度日程調整を行い、第2回期日が設定されます。それ以降も相手の欠席が続けば、話し合いができないため調停は不成立となります。
3-3. 調停不成立後は審判移行または訴訟提起
調停が不成立になると、養育費請求調停の場合は自動的に審判に移行します。審判に移行した場合、調停不成立までの経緯や案件の内容によって、裁判所は相手が裁判所からの通知をきちんと受け取っているか確認することになります。この確認のために、相手が現住所に居住しているかどうかの調査が必要となる場合があります。
この調査は自分で行うことも可能ですが、調査の方法には注意が必要です。相手の現住所を確認する際には現地を訪れる必要があり、そこで相手と直接出くわす可能性や、不審者と間違われるリスクがあるため、専門の業者に依頼する方が安全で効果的です。
一方、申立てが離婚調停の場合、調停が不成立になると裁判所での手続きはそこで終了します。その場合、次のステップとして、改めて自分で離婚訴訟を提起し、裁判所に離婚に関する判断を求める必要があります。この訴訟提起では、離婚の条件の一つとして養育費の支払いについても審理されることになります。
3-4. 最終的には裁判官が養育費の内容を定める
養育費請求審判に移行した場合、相手が「調停や審判の手続きをきちんと認識している」と裁判所が判断し、それでも相手が欠席を続けているとき、最終的に裁判官が養育費の内容を決定します。裁判官は、申立人の主張や提出された資料など、すべての事情を総合的に考慮して判断します。
なお、離婚訴訟を提起し、離婚条件の一つとして養育費を求めた場合でも、最終的には裁判官が判決として養育費を決定します。
3-5. 養育費を払わない場合は法的手続きへ
相手に養育費を支払う義務を課す審判が確定すると、それは相手にとって守るべきルールとなります。相手が養育費の支払いをしない場合、強制的に支払いをさせる手続きが可能です。
手段としては、履行勧告、履行命令、強制執行があります。まずは手数料不要で裁判所に連絡するだけで行える履行勧告を選択するのが一般的です。ただし、履行勧告には強制力がなく、義務を果たすよう勧告するだけです。
これに従わない場合、履行命令や強制執行を検討します。履行命令も強制力はありませんが、強制執行には強制力があります。例えば、相手の勤務先が分かれば給与を差し押さえて養育費に充てることが可能です。
4. 養育費の調停に相手が来ない場合の取り決め額はどうなる?
通常、養育費の金額は裁判所が作成した「標準算定表」を基に、当事者の年収や子どもの人数・年齢を考慮して決定されます。しかし、相手が調停の期日に欠席すると、相手の年収がわからないことがあります。
その場合でも、厚生労働省が発表している「賃金センサス(賃金構造基本統計調査)」を使って解決するのが一般的です。この「賃金センサス」は、日本人の平均賃金に関する統計資料です。例えば、相手が「男性・大卒・40歳~44歳」であれば、その属性に該当する人たちの平均年収を相手の年収とみなします。

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5. 養育費の調停を有利に進めるためのポイント
5-1. 養育費の相場を把握しておく
養育費の相場は、「標準算定表」を見れば比較的簡単に知ることができます。相手が欠席したり、出席しても合意に至らない場合、最終的には「標準算定表」に基づいた金額が認められる可能性が高いです。したがって、この算定表に沿った主張をすることで、調停が早期に解決する傾向があります。調停申立て時には、相場と自分の主張とのズレを把握し、今後の見通しを立てることをおすすめします。
5-2. 主張を裏付ける資料を用意する
「標準算定表」を超える支払いを求める場合、法的に妥当であることを示す裏付け資料が必要です。例えば、相手が子どもを私立に進学させることに同意していたことが分かる資料や学費の詳細などです。また、相手が欠席する可能性が高い場合は、相手の年収が分かる資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細など)も提出することをおすすめします。
5-3. 調停委員を味方につける
調停委員は中立な立場ですが、一般的な礼儀や分かりやすいコミュニケーションを心がけることが重要です。例えば以下のような点に注意しましょう。
必要最低限の礼儀や身だしなみを整える
分かりやすいコミュニケーションを心がける
調停委員に対して怒りを向けない
自分に対して都合の悪い話をされても、調停委員に対して感情的にならないよう注意し、裏付け資料を提出して主張に説得力を持たせましょう。これにより、調停委員が相手に対して説得してくれることもあります。
5-4. 将来起こり得る問題も想定しておく
調停は、相手がいることではじめて成立します。なので、まず調停を申し立てる段階で、相手の現住所に間違いがないか確認しましょう。もし相手の住所が不明で、調停に欠席が続くような状況になった場合には、裁判所が調査を依頼する可能性もあります。この場合、どのように調査を進めるかをあらかじめ考慮しておく必要があります。
また、調停や審判の場で相手がどのような態度を取るか、どのような言い分を述べるかも予測しておくことが大切です。相手が調停や審判で決定された義務を守らない場合、どのように対応するかも見据えておくべきです。
例えば、強制執行を行う場合、相手の勤務先を特定できるかどうかを確認することが必要です。勤務先が分かれば、給与を差押えられる場合もありますが、不明であれば、別の手段を検討しなければなりません。
このように、調停の進行中やその後に起こり得る問題についてできる限り想定し、事前に準備しておくことで、予想外の事態に対処しやすくなります。
5-5. 弁護士に依頼する
自分だけで解決が難しい場合や、相手が調停を欠席しそう、または義務を守らなさそうで不安な場合は、早期に弁護士に相談しましょう。弁護士に依頼することで、よりスムーズに進めることができます。
6. 養育費の調停に相手が来ない場合についてよくある質問
一般的には、調停は相手と直接顔を合わせず、調停委員を介して互いの言い分を相手に伝え合う方式で進められます。
調停は裁判所が最終的な判断を下す場ではなく、あくまで話し合いの場です。そのため、調停期日に欠席してもすぐに不利になるわけではありません。ただし、養育費請求調停の場合、欠席が続くと調停が不成立となり、その後は審判に移行します。審判においては、欠席した側の意見が考慮されない可能性が高く、結果的に不利になることもあります。
もし、何かしらの結論が出ても受け入れる覚悟があるのであれば問題ありませんが、自分の意見や立場をしっかり伝えたい場合は、調停段階からきちんと出席し、相手や裁判所に自分の言い分を伝えることが重要です。
基本的に、養育費が全くもらえなくなることはありません。しかし、相手が「賃金センサス」の平均年収よりも高い収入を得ている場合、その年収に関する資料が手元にないと、相手の年収が「賃金センサス」の平均値とみなされ、その結果、本来求められた金額よりも少ない金額が算定されることがあります。
自分が申立人側の場合、基本的には裁判所との間で日程調整が可能なため、欠席は避けるべきです。体調不良などでどうしても出席できない場合は、調停期日の開始時間までに必ず裁判所に連絡をしましょう。相手方が欠席する場合、日程調整を行う機会がないため、不利に扱われることはありません。ただし、常識的には、事前に裁判所に欠席の連絡をすることが望ましいです。
7. まとめ 調停に相手がこないと最終的にはこちらが有利になる
調停で相手が欠席しても直ちに不利になるわけではありませんが、何度か欠席して調停不成立になった場合、審判や裁判に移行します。審判や裁判では申立人側の主張や証拠が参照され、最終的には有利な結果になる可能性が高いです。また、養育費が支払われない場合は強制執行も可能なので、詳細については弁護士に相談することをおすすめします。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)