-
1. 婚姻時の改姓に関する現状|女性が改姓するケースが多い
-
2. 離婚しても苗字(名字)を変えないことは可能?
-
3. 離婚後も苗字を変えない人の割合は?
-
4. 離婚後も苗字を変えない場合、戸籍はどうなる?
-
5. 離婚しても苗字を変えない主な理由
-
5-1. 姓の変更に伴う社会生活上の不便を避けたい
-
5-2. 子どもの姓を変えることを避けたい
-
5-3. 再婚を見据えて、苗字をそのままにしておく
-
6. 離婚後に苗字を変えないことのメリット
-
6-1. 子どもと同じ苗字を使い続けられる
-
6-2. 氏名変更手続きの手間が省ける
-
6-3. 職場で定着した苗字のまま働ける
-
6-4. 婚姻中の苗字で得た知名度を維持できる
-
6-5. 離婚の事実が周囲に知られにくい
-
7. 離婚後に苗字を変えないことのデメリット
-
7-1. 旧姓に戻すのが難しくなる
-
7-2. 自分と親族の苗字が違う状態になる
-
7-3. 元配偶者や再婚相手が嫌がることがある
-
7-4. 元配偶者への意識を断ち切りづらい
-
8. 離婚後に苗字を変えない場合の手続き|婚氏続称届の提出
-
9. 離婚時に苗字を変えない場合、子どもの苗字はどうなる?
-
10. 婚氏続称届を提出した後で、旧姓に戻すことはできる?
-
11. 離婚後の苗字について不安があるなら弁護士に相談を
-
12. 離婚後に苗字を変えないことに関するQ&A
-
13. まとめ 離婚後に苗字を変えるかどうかはさまざまな事情を考慮して慎重に判断を
無料相談OK 事務所も!
離婚問題に強い弁護士を探す
1. 婚姻時の改姓に関する現状|女性が改姓するケースが多い
男女共同参画局の「夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ」によると、2023年に婚姻した夫婦のうち夫の姓を選択した割合は94.5%、妻の姓を選択した割合は5.5%でした。1995年から29年間の推移を見ると、妻の姓を選ぶ夫婦の割合は1995年の2.6%から緩やかに増加しています。しかし、全体的な傾向としては女性側が改姓するケースが依然として多い状況です。
2. 離婚しても苗字(名字)を変えないことは可能?
結婚で苗字を変えた場合、離婚により旧姓に戻るのが原則です。しかし、市区町村役場に「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出すれば、婚姻中の苗字を引き続き使うことができます。婚氏続称届の書き方や提出期限などについては、後述します。
3. 離婚後も苗字を変えない人の割合は?
法務省の戸籍統計(第2表)によれば、2023年度に離婚または婚姻の取り消しをした件数は18万8239件でした。このうち8万6041件、約45.7%が苗字を変えない形で別れています。
4. 離婚後も苗字を変えない場合、戸籍はどうなる?
離婚すると、夫婦の戸籍は分かれます。夫婦が元々いた戸籍に残るのは、結婚時に苗字を変えなかった側(=筆頭者)です。結婚時に苗字を変えた側は、結婚前の戸籍に戻るか、新たに戸籍を作成することになります。
なお、子どもは何もしなければ離婚後も元の戸籍に残ります。元の戸籍から抜けた側が、子どもを自分の戸籍に入れたい場合の手続きについては、後ほど解説します。

相談アリ
得意な弁護士
探せる
5. 離婚しても苗字を変えない主な理由
離婚後も旧姓に戻さず、婚姻中の苗字を使い続ける理由には、以下のようなものが挙げられます。
5-1. 姓の変更に伴う社会生活上の不便を避けたい
離婚時に旧姓へ戻すと、預貯金口座や利用中のサービスなどで多数の氏名変更手続きを行う必要があり、手間がかかります。また、仕事で旧姓へ戻す場合、婚姻前後で同一人物と認識されず、不利益が生じるおそれがあります。例えば、海外で論文を発表する研究者は、姓の変更前の実績は引き継がれません。このような社会生活上の不便を避けるため、離婚後も婚姻中の苗字を使い続ける人がいます。
5-2. 子どもの姓を変えることを避けたい
離婚後に子どもの親権者となる側が旧姓に戻る場合、子どもを自分と同じ戸籍に移すには子どもの苗字を変更する必要があります。子どもの苗字が変わると学校生活へ影響が生じることを懸念して、離婚後も婚姻中の苗字を使い続けるケースがあります。
5-3. 再婚を見据えて、苗字をそのままにしておく
離婚時に旧姓に戻し、その後再婚で相手の苗字に変えると、氏名変更の手続きが多く面倒です。また、短期間で苗字が2度変わることを周囲に不審がられるかもしれません。比較的短期間での再婚を見据えている場合、旧姓に戻さず苗字をそのままにしておくケースがあるようです。
6. 離婚後に苗字を変えないことのメリット
離婚後も婚姻中の苗字を使い続けることには、以下のようなメリットがあります。
6-1. 子どもと同じ苗字を使い続けられる
父母が離婚しても、子どもの苗字は変わりません。親権者が旧姓に戻ると、子どもの苗字を変更することもできますが、親権者でない場合は難しいです。婚姻中の苗字を使い続ければ、自分が親権者でなくても、子どもと同じ苗字でいることができます。
6-2. 氏名変更手続きの手間が省ける
離婚時に旧姓に戻すと、預貯金口座や利用中のサービスなどで氏名変更手続きが多く発生し、手間がかかります。離婚後も婚姻中の苗字を使い続ける場合は、これらの手続きが不要になるため、手間が省けます。
6-3. 職場で定着した苗字のまま働ける
結婚後に就職した場合や、長く婚姻中の苗字で働いている場合、職場ではその苗字の方が馴染んでいることが多いでしょう。このような場合、離婚後も婚姻中の苗字を使い続ければ、職場で定着している苗字のまま仕事を続けられます。
6-4. 婚姻中の苗字で得た知名度を維持できる
個人事業主など自分の名前で仕事をしている場合、旧姓に戻ることで築いてきた知名度が低下するリスクがあります。離婚後も婚姻中の苗字を使い続ければ、これまでに得た知名度を維持でき、仕事への影響を抑えることができます。
6-5. 離婚の事実が周囲に知られにくい
苗字が変わると、「離婚したのではないか」と周囲から勘ぐられることがあります。離婚後も婚姻中の苗字を使い続ければ、苗字の変化をきっかけに離婚が周囲に知られる可能性を減らせます。
7. 離婚後に苗字を変えないことのデメリット
一方で、離婚後も婚姻中の苗字を使い続けることのデメリットとしては、以下が挙げられます。
7-1. 旧姓に戻すのが難しくなる
離婚後に婚姻中の苗字を使い続ける場合、その後に旧姓に戻したいときには家庭裁判所の許可が必要です。しかし、希望しても必ず許可が得られるとは限らないため、この点には十分注意しましょう。
7-2. 自分と親族の苗字が違う状態になる
離婚時に旧姓に戻さないと、親族の中で自分だけ苗字が異なる状態になる場合があります。婚姻中は気にならなくても、離婚して独身になると、親族と苗字が異なることに違和感を覚える人もいます。
7-3. 元配偶者や再婚相手が嫌がることがある
離婚後も同じ苗字を使い続けることに対し、元配偶者から不快感を示されることがあります。旧姓に戻すかどうかは個人の自由ですが、元配偶者から嫌味を言われるなどストレスを感じるケースもあるようです。また、再婚相手が元配偶者の苗字を使っていることに不快感を抱く場合もあります。
7-4. 元配偶者への意識を断ち切りづらい
離婚後も婚姻中の苗字を使い続けると、自分の名前を目にするたびに元配偶者のことを思い出し、新しい生活へ踏み出しにくいと感じることがあります。元配偶者への意識を断ち切りたい場合には、旧姓に戻すことも検討しましょう。
8. 離婚後に苗字を変えない場合の手続き|婚氏続称届の提出
離婚後も婚姻中の苗字を使い続けるには、市区町村役場に「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出する必要があります。婚氏続称届の用紙は、市区町村役場で入手できるほか、こちらのリンクからダウンロード可能です。必要事項を記入し、市区町村役場に提出しましょう。
婚氏続称届は、離婚届と同時に提出するか、離婚の日の翌日から起算して3カ月以内に提出しなければなりません。3カ月を過ぎると、婚姻中の苗字を名乗ることができなくなるので注意が必要です。
9. 離婚時に苗字を変えない場合、子どもの苗字はどうなる?
離婚をしても、子どもの苗字は変わりません。そのため、旧姓に戻さず婚姻中の苗字を使い続ける場合は、自分と子どもの苗字は同じままです。
ただし、子どもは婚姻中の両親が入っていた戸籍に残ります。自分が筆頭者でなかった場合、苗字が同じでも、子どもと別々の戸籍になります。
自分が子どもの親権者であれば、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を求める審判を申し立て、許可が下りた後に市区町村役場へ入籍届を提出することで、子どもを自分と同じ戸籍へ移すことができます。
10. 婚氏続称届を提出した後で、旧姓に戻すことはできる?
市区町村役場に婚氏続称届を提出し、婚姻中の苗字を使い続けた後で、また旧姓に戻すには、家庭裁判所の許可が必要です。氏の変更は、「やむを得ない事由」がある場合に限り認められます(戸籍法107条1項)。
旧姓に戻す場合も同様ですが、通常の氏の変更に比べて、旧姓への再変更は許可されやすい傾向があります。例えば、家業を承継する場合や、子どもが成人して同じ苗字でいる必要性がなくなった場合などには、旧姓への再変更が認められやすいです。
11. 離婚後の苗字について不安があるなら弁護士に相談を
「離婚後も苗字をそのままにしたいが、手続きが不安」「離婚に際して、旧姓に戻すかどうか迷っている」などの悩みを抱えている場合、弁護士に相談することをおすすめします。苗字に関する手続きや注意点などを、丁寧にアドバイスしてもらえます。
また、弁護士には苗字に関すること以外にも、離婚手続き全般について相談可能です。特に、相手が離婚に応じない場合や離婚条件でもめそうな場合などは、早めに弁護士に相談しましょう。

相談アリ
得意な弁護士
探せる
12. 離婚後に苗字を変えないことに関するQ&A
再婚した場合、再婚相手の苗字か、自分の現在の苗字のどちらかを選択します。旧姓に戻すことはできません。
旧姓に戻すには家庭裁判所の許可が必要です。氏の変更は「やむを得ない事由」がある場合にのみ認められ、旧姓に戻したい場合も必ず許可されるわけではないので、注意しましょう。
通称名の使用が認められるかどうかは、職場の規則によります。勤務先の人事担当者などに確認しましょう。
家庭裁判所の許可を得られれば旧姓に戻せます。ただし、氏の変更は「やむを得ない事由」がある場合に限り認められ、旧姓に戻す際も「やむを得ない事由」が必要です。一般的には、子どもが成人していれば旧姓に戻すことが認められやすい傾向にありますが、必ずしも許可が下りるとは限らないため、留意しておきましょう。
離婚後、自分は旧姓に戻っても、子どもだけが元夫の苗字を名乗ることは可能です。特に手続きをしない場合、子どもは婚姻中の父母と同じ戸籍に残り、苗字も筆頭者である元夫の苗字のままとなります。
旧姓に戻った親が子どもの親権者であっても、手続きを行わない限り、子どもの苗字は元夫のもののままです。もし子どもを自分と同じ苗字にしたい場合は、家庭裁判所の許可を得て苗字を変更の手続きを行う必要があります。
13. まとめ 離婚後に苗字を変えるかどうかはさまざまな事情を考慮して慎重に判断を
結婚の際に苗字を変えた人は、離婚時に旧姓に戻るのが原則です。ただし、市区町村役場に「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出すれば、婚姻中の苗字を名乗り続けることができます。婚氏続称届の提出期限は、離婚の日の翌日から起算して3カ月以内です。
離婚時に旧姓に戻すかどうかは、メリットとデメリットを総合的に考慮して判断することが大切です。離婚後の苗字について不安がある人や、離婚手続きで悩んでいる人は、弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)