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1. 弁護士会照会(23条照会)とは
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2. 弁護士会照会が利用されるケース
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3. 離婚で弁護士会照会を利用した際にできること
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3-1. 配偶者の預貯金口座の照会
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3-2. 配偶者の給料・賞与・退職金の照会
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3-3. 解約返戻金など契約内容の照会
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3-4. 配偶者の保有株式の照会
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3-5. 配偶者の所有不動産の照会
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3-6. 不倫相手の住所特定
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4. 弁護士会照会で調べられない情報
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5. 弁護士会照会を利用する際の流れ
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6. 弁護士会照会の注意点
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6-1. 弁護士に依頼をしないと利用できない
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6-2. 弁護士会照会を利用できないケースがある
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6-3. 回答を拒否される可能性がある
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7. 弁護士会照会にかかる費用
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8. 弁護士会照会に関するよくある質問
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9. まとめ 弁護士会照会は、依頼した案件解決のために利用可能な手段の一つ
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1. 弁護士会照会(23条照会)とは
弁護士会照会とは、弁護士が受任している事案を円滑に進めるため、官公庁や企業などに必要な事項を調査・照会できる制度(弁護士法23条の2)です。具体的には、弁護士が弁護士会に申請を行い、審査を行ったうえで各団体に照会を実施します。
個人情報保護法の「法令(条例)に基づく場合」には、例外的に個人情報の開示が可能であると定められています。これに基づき、弁護士会照会による個人情報の開示は適法とされ、情報の保有者の許可を得ることなく個人情報の開示を受けることが可能です。
2. 弁護士会照会が利用されるケース
弁護士会照会が利用されるケースは、以下のような場面が挙げられます。
離婚における財産分与
未払の養育費の強制執行
不倫慰謝料の請求
相続における財産の使い込みや財産隠し
債権回収の強制執行
交通事故における過失割合の調査
このように、弁護士会照会が利用されるケースは多岐にわたります。
3. 離婚で弁護士会照会を利用した際にできること
弁護士会照会は離婚において以下のようなケースで利用されます。
3-1. 配偶者の預貯金口座の照会
配偶者の預貯金口座が分からない場合、金融機関に対して弁護士会照会をすることで、配偶者の預貯金口座の情報(口座残高、入出金状況など)を把握できる場合があります。例えば、財産分与で配偶者が預貯金口座を隠している場合や、養育費が未払いの際に強制執行をする場合などに、預貯金口座を調査するため弁護士会照会が行われることがあります。
3-2. 配偶者の給料・賞与・退職金の照会
配偶者の勤務先に対して弁護士会照会を行うことで、配偶者の年収が分かる場合があります。例えば、養育費の算定にあたり、配偶者が年収を隠している場合には、勤務先に対する照会を行い、配偶者の年収について情報提供を求めることがあります。また、退職金も財産分与の対象になるため、勤務先に対して退職金の金額を照会する場合もあります。
3-3. 解約返戻金など契約内容の照会
保険の解約返戻金も財産分与の対象です。配偶者がその金額を明らかにしない場合には、保険会社に対して弁護士会照会を行うことがあります。
なお、配偶者が加入している保険会社が分からない場合には、個別の保険会社への照会が必要です。すべての保険会社に照会をかけるのは大変な手間とお金がかかるので、郵便物や保険料の支払い履歴などから、保険会社の名前を特定する必要があります。
3-4. 配偶者の保有株式の照会
配偶者が保有している株式や投資信託も、財産分与の対象になります。証券会社の名前さえ分かれば、詳細な保有内容が不明でも照会が可能です。年末に証券会社から郵便物が届くことが多いため、その際に配偶者が取引している証券会社が分かれば、弁護士会照会によって保有内容を把握できる場合があります。
私が過去に担当した、配偶者の保有株式の詳細が分からなかった事案でも、年末に特定の証券会社から郵便物が届いていたため、その証券会社に対して弁護士会照会を行い、株式の詳細を把握できたケースがありました。
3-5. 配偶者の所有不動産の照会
配偶者が投資用不動産などを保有している場合、「名寄帳」(固定資産税台帳)を取得することで、不動産の所在地が分かります。「名寄帳」は不動産の管轄区域の都道府県税事務所などに保管されており、弁護士会照会を通じて開示を求めることができる場合があります。
3-6. 不倫相手の住所特定
不倫相手の住所が分からず慰謝料請求ができない場合でも、不倫相手の携帯電話番号が判明していれば、携帯電話会社に対する弁護士会照会により契約者住所の開示を受けることが可能です。
ただし、不倫相手のフルネームが分からない場合、開示が認められない可能性があります。私が過去に担当した事案でも、不倫相手の下の名前しか分からない状況で弁護士会照会を行ったところ、開示が認められなかったことがありました。そのため、不倫相手の携帯電話番号から携帯電話会社に契約者住所の照会を行う際は、不倫相手のフルネームを把握しておくことが重要です。

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4. 弁護士会照会で調べられない情報
一方で、以下のようなケースでは、弁護士会照会によっても財産状況を調査することができません。
本人以外の名義の口座に預貯金を移動させている場合
タンス預金をしている場合
預貯金を価値のある美術品などに換価している場合
また、外国の金融機関では、顧客情報保護の観点から、弁護士会照会に応じてもらえないケースが多いです。私が以前に担当した事案では、配偶者が保有している外国の銀行に対して、配偶者名義の預金口座の情報開示を求めましたが、預金者の承諾がない限り開示には応じられないと拒否されたことがありました。
5. 弁護士会照会を利用する際の流れ
弁護士会照会を利用する際の流れは、以下のとおりです。
弁護士に具体的な事件(離婚、遺産相続など)を依頼する
弁護士が所属する弁護士会に対して、弁護士会照会の申出書を提出する
弁護士会での審査(場合によっては電話での聞き取り調査あり)
弁護士会から紹介先の各機関に対して照会が行われる
照会先から弁護士会に対して回答がある
弁護士会から弁護士に対して回答がある
弁護士会照会は弁護士会の審査を経て行います。手続きは弁護士が行うので、依頼者で対応すべきことは特にありません。
6. 弁護士会照会の注意点
依頼した案件の必要な情報を照会できる弁護士会照会は非常に便利です。しかし、以下のようにいくつか注意点もあります。
6-1. 弁護士に依頼をしないと利用できない
弁護士会照会は、弁護士のみに認められた権限です。そのため、弁護士ではない人が利用することはできません。また、具体的な事件の依頼が必要であり、弁護士会照会のみを目的とした依頼では利用できません。
6-2. 弁護士会照会を利用できないケースがある
弁護士会照会は、照会の必要性と相当性が認められなければ利用できません。この「必要性」とは、弁護士会照会でなければ証拠が得られないことや、事案の解決に必要不可欠な証拠であることを指します。「相当性」は、照会理由と照会事項が整合しているかです。
また、照会を行う銀行の支店名が分からない場合にも照会は認められません。ただし、銀行によっては「全店照会」をかけることで、口座情報の調査が可能な場合もあります。
財産分与などで相手の財産を調べるには、相手の利用する金融機関や保険会社が分からないと弁護士会照会は利用できません。日頃相手に届く郵便物などから、どの金融機関や保険会社から通知が届いているのか確認しておくことが重要です。
6-3. 回答を拒否される可能性がある
弁護士会照会を受けた団体は、正当な理由がない限り回答を拒否することはできません。ただし、回答拒否に対する罰則は特に規定されません。また、個人情報を理由とした回答拒否が認められた判例もあります。そのため、弁護士会照会を行ったからといって、必ず回答が得られるわけではないことに注意が必要です。
なお、以前は、郵便局が「顧客情報保護の観点」から郵便の転送先住所の開示に応じませんでしたが、2023年6月1日からは転居先住所の開示が可能になりました。このように、運用可能な範囲が広がった事例もあります。弁護士会照会が可能かどうかは、弁護士に確認しましょう。
7. 弁護士会照会にかかる費用
照会にかかる費用は、照会内容や照会先によって異なりますが、1件あたり1万円弱です。なお、紹介先から回答を拒否された場合でも、調査費用が返還されることはありません。
また、弁護士会照会にかかる費用を配偶者などに請求することはできません。弁護士会照会のみを弁護士に依頼することはできず、依頼する際には着手金や報酬金がかかります。
たとえば、弁護士会照会まで含めて、協議離婚を弁護士に依頼した場合の費用の相場は以下のとおりです。
【協議離婚で弁護士会照会と財産分与で500万円を得たケース】
・着手金 :30万円から40万円
・報酬金 :40万円(協議離婚成立に対する報酬)
・成功報酬金 :50万円(財産分与500万円獲得に対して10%の報酬金)
・弁護士会照会手数料:1万円弱
8. 弁護士会照会に関するよくある質問
9. まとめ 弁護士会照会は、依頼した案件解決のために利用可能な手段の一つ
弁護士会照会は、弁護士が依頼を受けた案件解決のために必要な情報を、弁護士会を通じて照会できる制度です。特に離婚事案では、配偶者の財産状況や不倫相手の住所が不明だと、手続きが進まない場合があります。弁護士へ依頼しなければ利用できませんが、財産調査や住所確認が必要な人にとっては心強い制度です。離婚や不倫の慰謝料請求などで行き詰った場合は、弁護士会照会の利用を含めて弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)