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1. 依頼者が幸せな選択をするために
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2. 危険信号が現れている夫婦の特徴
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3. 浮気相手と縁が切れてからこそが本番
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4. 沈黙は金なり 修復を望むなら大切なこと
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離婚問題に強い弁護士を探す
1. 依頼者が幸せな選択をするために
――最初に「離婚カウンセラー」のお仕事について教えてください。
離婚カウンセラーは、夫婦関係に悩む依頼者の相談を受け、「夫婦関係の修復」や「離婚の進め方」についてアドバイスします。相談のゴールはあくまで、依頼者が幸せな選択をすること。離婚を無理にすすめたり、背中を押すことが目的ではありません。まずは悩みを丁寧に聞き、ご本人が本当はどうしたいのか、幸せになるには何が必要なのかを一緒に整理していきます。
――必ずしも離婚のアドバイスをするわけではないのですね。
はい。離婚して幸せになりたいのか、修復して幸せになりたいのか。夫婦問題の解決策は人それぞれです。どの選択が自分にとってベストなのかを、相談者の方と共に考えていきます。
仮に離婚を選ぶ場合、その後の人生設計まで見据える必要がありますよね。でも、離婚となると気持ちを整理する時間もないまま、法律的な手続きなど現実的な問題に向き合わなければいけません。だからこそ、法律の手続きに入る前に自分の気持ちを整理し、どんな未来を描くのかを考える時間が重要なんです。
――離婚カウンセリングには、どんな方が相談に来られますか?
性別は6対4の割合で女性が多いのですが、最近は男性の相談者も増えてきています。以前は40〜50代が中心でしたが、近年は60代以降の相談が目立つようになりました。離婚件数全体は減少傾向にある一方で、熟年離婚はむしろ増えており、その影響で60代以降の方からの問い合わせが多くなっていると感じます。
「離婚したいので相談したい」というよりも、「夫婦関係を修復したい」というご相談のほうが実際には多いですね。
2. 危険信号が現れている夫婦の特徴
――具体的にはどのような相談内容があるのでしょうか?
女性からは「夫の浮気」や「夫のモラハラ」に関する相談が多いですね。一方で、最近は男性からのモラハラ相談も増えてきました。「妻からモラハラを受けている」というものです。たとえば、給与などの収入はすべて妻が管理しており、夫には自由に使えるお金がほとんどない。一生懸命働いても感謝されるどころか、家では邪魔者のように扱われたり、暴言を浴びたりするケースです。
――これまで約4万件の相談にのってきたということですが、関係がうまくいっていない夫婦に現れる兆候などあれば教えてください。
そうですね。うまくいっていない夫婦には次のような兆候がよく見られます。
【 一緒にいてもスマホばかり見ている】
相手への興味や気遣いが薄れているサインです。
【言い争いになると一方が黙る】
口論になるのは、まだ相手に期待しているからこそ。黙ってしまうのは、相手に理解してもらうことを諦めたサインでもあります。
ここからは、特に夫側に現れやすい兆候になります。
【一人になりたいと言うようになる】
離婚や別居に向けて準備を始めているケースが多く見られます。
【実家に頻繁に帰るようになる】
両親に離婚の相談をしている可能性があります。
【発言に“とは”が出てくる】
これは私が「“とは”の法則」と名付けているのですが、「お前“とは”やっていけない」「お前“とは”暮らせない」など、発言に“とは”が出てくる場合、浮気している可能性が極めて高いんです。
というのも、“とは”という言葉は 誰かと比較しているときに出てくる言葉だからです。「お前“とは”やっていけない」。では、誰“となら”やっていけるのか?という話になりますよね。
――たしかにそうですね。行動だけではなく、言ってしまうと夫婦関係が悪化する禁断のセリフもあれば教えてください。
当たり前のことかもしれませんが、喧嘩をして感情的になり、極論を口にするのはNGです。
離婚だ
(家から)出ていきます
(家から)出ていけ
感情が高ぶると、本意ではなくても強い言葉が出てしまいますよね。けれど、その場の勢いで発した一言でも、受け取る側には深く突き刺さり長く残ります。「あの言葉を言われてから離婚を考え始めた」「気持ちが戻らなくなってしまった」というケースは本当に多いんです。
また、人格を否定する発言も避けたいですね。
だからお前はだめなんだ
そんなこともできないのか
稼げないくせに
これは夫から妻への言葉に限らず、妻から夫へ向けられる場合もあります。以前、男性の相談者が夫婦喧嘩の様子を録音した音声を聞かせてくれたことがありました。ふだんはとても物静かな妻が、喧嘩になると「テメェ、ふざけんな!」「だからお前は稼げないんだよ!」と激しい言葉を投げかけていました。性別に関係なく、言い争いの場面では人格を否定する発言や暴言が出てしまうケースは実際に多いんです。
3. 浮気相手と縁が切れてからこそが本番
――夫婦関係の修復を望む相談者には、どのようなアドバイスをされるのでしょうか。
まず、長年のモラハラが積み重なって相談に来られる場合、関係を修復したいと望む方は多くありません。一方、夫の浮気が発覚したケースでは、関係の修復を望む方が大半です。この場合に最も重要なのは、夫と浮気相手の関係を完全に断つこと。
多くの場合、浮気相手に慰謝料を請求すると「これ以上巻き込まれたくない」と考えて身を引きます。そのタイミングで「夫とは二度と会わない」と約束させ、確実に縁を切ってもらいます。
それでも関係が続く場合には、夫や浮気相手の親族、あるいは知人に協力を求めて関係を断ち切ることもあります。でも、本当に大切なのは夫が浮気相手と別れた「その後」 なんです。
――どういうことでしょうか?
浮気相手と別れさせただけでは、夫が家庭に戻ってくるとは限りません。なぜ夫が浮気に走ったのか。その根本原因を、妻側も一度立ち止まって見つめ直す必要があります。もちろん「浮気をした夫が悪い」という前提は変わりません。
しかし、例えば文句や愚痴、喧嘩が絶えない家庭に帰りたくない、などという夫の心理を理解することも大事です。家でずっと不機嫌な態度をとられたり、責められたりする環境では、誰でも家に足が向かなくなりますよね。ですから、浮気相手と縁を切らせると同時に、家庭の雰囲気を整えることも、関係修復において非常に重要なんです。
4. 沈黙は金なり 修復を望むなら大切なこと
――たしかに、夫にいつまでも怒りをぶつけていては関係改善は難しいですよね。
浮気相手が身を引いた段階で、夫は居場所を失います。そこで、家庭で妻が落ち着いて優しく接してくれる環境が整っていれば、家が夫にとって最も居心地の良い場所になります。そうなると、夫は自然と家庭に戻り、結果として夫婦関係も回復していくんです。このパターンで関係が改善された夫婦を多く見てきました。
――帰りたいと思える家にすることも大事なんですね。
そうなんです。夫に文句を言いたくなるのも当然の気持ちです。でも、怒りを鎮めることも大切です。まさに「沈黙は金なり」ですね。修復を望んでいるのであれば、形だけでも夫を優しく迎える。それだけでも家庭の空気が大きく変わります。
――修復を望んでいるのであれば、できることをしてみるということですね。
実際、こんな相談者もいました。夫が浮気をしていたのですが、関係を立て直すために、妻は感情を抑えて夫に優しく接し続けたそうです。ところが、その過程で妻の中では「もう、この夫にこだわらなくてもいいかもしれない」「嫌い」という思いが次第に強くなっていきました。
それでも、「沈黙は金なり」と家庭の雰囲気を穏やかに保つことを意識して過ごし続けたところ、家の空気が変わったことで夫自身も浮気相手と縁を切り、自然と家庭へ戻るようになりました。
――その後、妻はどうされたんでしょうか?
夫は家に戻り、妻への気持ちも戻ったのですが、妻のほうは夫への嫌悪感が強くなっていました。結果、妻は離婚という選択肢を選びました。妻は、「関係修復のために自分ができることは全部やった」と思えたことで、後悔はないとおっしゃっていました。
修復するか離婚するか、どちらになるかはわかりません。でも、できることをまずやるというのは、自分の気持ちを整理する上で大切なプロセスなんです。
――なるほど。
繰り返しになりますが、浮気をした側が悪いのは大前提です。ただ、自分はどうしたら幸せになれるのかと考えたとき、修復を望むのであれば、相手にだけ変化を求めるのではなく、自分自身もできることをする覚悟が必要です。
離婚カウンセリングでは、まずご夫婦の状況を丁寧に伺い、どうしたいのかというご本人の気持ちを整理することを大事にしています。そのうえで、必要な情報の提供やアドバイス、フォローを行っていき、納得できる未来の選択ができるようにしていきます。
●岡野あつこ(おかの・あつこ)さんのプロフィール
「岡野あつこの離婚相談救急隊」代表。夫婦問題研究家・離婚カウンセラー、公認心理師として数多くの離婚相談を受ける。人生経験を生かせる「離婚カウンセラー養成講座」でカウンセラーをを育成。YouTube「岡野あつこチャンネル」は登録者数7万人。近著に「なぜ『妻の一言』はカチンとくるのか?」(講談社+α新書)。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)