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1. これからの法律事務所運営に必須? リーガルテックとは
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2. 事務所での導入事例の紹介
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2-1. はじめに|事務所の規模や効率化したい業務に合わせて取捨選択
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2-2. リーガルテックやDXツールを導入する際のポイント
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2-3. 事務所で実際に活用しているリーガルテックとDXツール
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3. 離婚案件でDXツールを活用して感じた3つのメリット
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3-1. コミュニケーションの円滑化・資料取り扱いの効率化
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3-2. Web会議期日で移動時間を削減
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3-3. AIツールの活用による作業時間の短縮化
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4. 法曹界にもたらす3つの好影響
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5. まとめ
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1. これからの法律事務所運営に必須? リーガルテックとは
「リーガルテック」という言葉を聞くようになって久しくなりました。今や「何もやっていないよ」という先生の方が少なくなってきているように感じますが、いかがでしょうか。
改めて、「リーガルテック」という言葉について、ChatGPT(これもリーガルテックとして活用できるツールの一つですね)に聞いてみました。
「リーガルテック(Legal Tech)とは、法律業務に関連する技術を活用することを指します。主に法律事務所や企業の法務部門で使用されるテクノロジーで、効率化や自動化、コスト削減を目的としています。具体的には、契約書作成・レビューの自動化、AIによる法的リサーチ、文書管理システム、電子訴訟システムなどが含まれます。
リーガルテックの進展により、法律業界でもデジタル化が進み、弁護士や法務担当者の業務がより効率的かつ迅速に行えるようになっています。また、クライアントにとっても、法的サービスがよりアクセスしやすく、透明性の高いものとなる可能性があります。」
……さすがChatGPTですね。とてもよくまとまっています。
アナログで非効率的であった法律事務所業務が、リーガルテックの進化により、「早く・楽に・確実に」処理できるようになった ことは間違いありません。今後は、「どう使いこなしていくか」ということを考えていく必要があるでしょう。
2. 事務所での導入事例の紹介
法律事務所に特化したクラウドサービスも登場し、煩雑な業務の効率化に一役買っています。ただ、それぞれの事務所にマッチしたサービスを選ぶ必要があるでしょう。
2-1. はじめに|事務所の規模や効率化したい業務に合わせて取捨選択
筆者は比較的新しいもの好きで、かつ事務作業がとても苦手で、極力効率的に進めたいと思うタイプなので、リーガルテックについてはもてはやされた当初からとても気になっていて、新しいツールが出たらいち早くチェックして試してきました。
プロフェッショナルテック総研が公表した「日本のリーガルテックカオスマップ2024」での分類に基づくと、「リーガルリサーチ」「案件管理・法務PF」「文書レビュー」「弁護士業務支援」「電子契約・契約管理」の分野で市販ツールを使用している事務所、あるいは依頼者とのコミュニケーションでChatwork(チャットワーク)・LINEといった一般的なツールを活用している事務所が多いのではないかと思われます。
筆者の事務所でも、さまざま試しに使ってみて、「ちょっと自分には合わないな」とか、「今の事務所規模だと持て余してしまうな」とか「費用が……」とか、いろいろ検討して、取捨選択を繰り返している最中です(試してみてやめたサービスもここに書ければよいのですが、いずれたくさんあります)。
2-2. リーガルテックやDXツールを導入する際のポイント
まずは取り入れやすいツールから一歩踏み出してみる とよいでしょう。弁護士業ではアナログな方でもプライベートでLINEを使っている方は多いでしょうから、まずは依頼者や所内の連絡でLINEを使ってみる、という程度でも良いと思います。
さらに、DX化を進める際は、目的を明確にすること 、そして現状の業務をできるだけ細かく、具体的に、可視化し、棚卸しを進めましょう 。そのうえで、ITで効率化できる業務を洗い出していきます。
筆者の事務所でも弁護士および事務局のタスクをそれぞれ箇条書きで洗い出して、ここは事務局が対応できる、ここから先は弁護士で……という分業化とともに、「この作業はこのITツール」でできるよね、という具合で段階的にIT化を進めています。
2-3. 事務所で実際に活用しているリーガルテックとDXツール
現在、筆者の事務所で業務効率化のため使用しているリーガルテックやDXツールは以下の通りです。最初にリーガルテックを3つご紹介します。
【Armana(アルマナ)】
株式会社 カイラステクノロジーが開発した、法律事務所に特化したクラウド型案件管理システムです。友人の紹介で利用し始め数年来、こちらのシステムでスケジュール、案件管理、To do(するべきこと)の管理、業務全般を行っています。
Armanaと以下でお伝えするDropboxで、ペーパレスかつ場所を選ばず、業務を行うことができるようになりました。スマートフォンでも操作できるので、パソコンを広げられない移動中の電車内でも仕事ができ、大変助かっています。
いくつか案件管理システムは使ってみたのですが、直感的に操作できることと、必要な機能を取捨選択でき、ニーズに併せて月額費用も抑えられること、要望を伝えると機能を追加してもらえて使えば使うほど便利になっていくこと、などからこちらのシステムを愛用しています。
【OLGA(オルガ)】
業界内では著名なGVA TECH株式会社が提供しているAI契約レビューサービスです。
書式がとても優れてますし、チェック品質も信頼でき、使いやすいので、契約書のレビューサービスに悩まれている方はおすすめです。
【LEGAL LIBRARY(リーガルライブラリー)】
法律書に特化した電子書籍閲覧サービスです。弁護士業にリサーチはつきものですが、「本を買うほどではないんだよな……」というレベルの調べものがあったときや、「顧問先が『今日中に回答して!』と言ってきたけれど、書籍を買っている暇がない」というときに非常に便利です。あと、シンプルに書籍購入コストが浮きます。

相談アリ
得意な弁護士
探せる
以下はリーガルテックに限りませんが、事務所で活用しているDXツールです。
【Dropbox】
今更説明する必要はないように思いますが、クラウドデータ管理のサービスです。
【LINE公式アカウント・LINE WORKS(ワークス)】
皆様ご存じのLINEです。事務所用のLINEアカウントを作成しており、依頼者との連絡もLINEで対応できるようにしています。
また、所内のコミュニケーションは「LINE WORKS」で対応しています。掲示板機能もありますので、共有したい情報や書類をLINE WORKSにアップするなどしています。
【Chatwork】
こちらもかなり有名ですが、ビジネス用チャットツールです。筆者の事務所では顧問先とのコミュニケーションで使うことが多いです。
【Zoom】【Google Meet】
コロナ禍で一気に浸透したオンライン会議システムですね。当事務所では、ZoomとGoogle Meetを併用しています。
【クラウドサイン】
電子契約サービスです。ペーパーレス化に併せて導入しました。印刷・押印の手間も省けますし、だれでも操作できますので、IT化、ペーパーレス化を進める第一歩としておすすめです。
【PLAUD(プラウド)】
AIボイスレコーダーです。AI自動要約機能が付いていて、録音した内容の文字起こしだけでなく、要約もしてくれます。専門用語についてはしばしば誤記があったりしますが、精度も一定程度は信頼できます。
打合せの議事録作成の効率化にとても良いと思います。
【Gamma(ガンマ)】
AIでスライドを作成してくれるサービスです。セミナー等で使用するスライドのテキストをまとめて、入力すると、よい感じの写真やイラストもチョイスして、スライドを作成してくれます。デザインセンスのない自分にはとてもありがたいサービスです。基本使用料も無料なので、求人資料や顧問先での研修資料等の作成で、結構使っています。セミナー資料の作成は、内容の推敲以外の部分にも地味に時間を取られるのですが、Gammaを使うことで資料作成の時間が大幅に短縮できます。
3. 離婚案件でDXツールを活用して感じた3つのメリット
実際に離婚案件でリーガルテックやDXツールを活用した事例をもとに、その効果についてお話しします。
3-1. コミュニケーションの円滑化・資料取り扱いの効率化
かつては依頼者との打ち合わせは電話が事務所で、証拠資料は紙ベースで郵送や持参が当たり前でした。離婚事件の打ち合わせは得てして、離婚そのものとは直接関係のない感情論や、些末な問題にも話が逸れがちで、対面の打ち合わせは長時間になる傾向があります(もちろん、口頭・対面でのコミュニケーションが一定の信頼関係構築に有用であることは言うまでもありませんが)。また、特に財産資料は量が膨大で、紙ベースだとファイリングや保管の手間が大きくなりがちでした。
しかし、事務所公式LINE、メール、ZoomやGoogle Meetの活用により、時間的・場所的制約なく、依頼者とコミュニケーションを図ることができるようになりました 。テキストベースなので情報の取捨選択も容易ですし、打ち合わせで時間を拘束されることもないのは業務効率の観点からは助かります。依頼者様としても、「平日日中は仕事なので、メールやLINEで連絡が取れるのは助かる」「遠方なので、打ち合わせがオンラインでできて負担が少なく、ありがたい」という声は実際多く、DX化は、依頼者の利便性向上にもつながっています 。DXが迅速な案件処理に役立っていると実感しています。
また、源泉徴収票等の収入資料や預金明細等の財産資料もPDF等のデータで受け取ることが増えました。これにより紙ベースの資料の保管の手間が省けますし、何より郵送にかかる時間がなくなりますので、養育費の計算や財産一覧表の作成、主張書面の作成が一層スピーディーになりました 。
3-2. Web会議期日で移動時間を削減
家庭裁判所でも、ようやく一部の裁判所でWeb会議による調停期日、離婚訴訟の弁論準備期日が実施されるようになりました。数分の期日のために往復1時間以上かけて移動する……という弁護士業務の最大の無駄とも言える時間がなくなり、とてもありがたいと感じています(ただ、裁判所によって使うシステムがまちまちなのはどうにかしてほしい、というのが正直なところです)。
3-3. AIツールの活用による作業時間の短縮化
例えば、移動中に連絡事項の確認や返事、チェックや簡単な起案ができれば、事務所に戻って些末な作業に追われず、重めの起案など思考を巡らせなければならないタスクに集中できます。また、資料作成や打合せ内容のまとめはAIサービスを活用すれば作成の時間は大幅に短縮でき、その時間を重要なタスクに投下できます。
ITツールの活用は、無駄な時間をなくすだけではなく、価値を生むタスクにその分の時間を投下できるようにすることで、より高い付加価値を提供することが可能 になっています。
4. 法曹界にもたらす3つの好影響
こうした円滑化・効率化は、弁護士や法律事務所、ひいては法曹界にも、以下のような好ましい影響をもたらすでしょう。
①業務効率化
まずはやはり、業務効率化があげられます。かつてのように、郵便、電話、FAXがなければ仕事が回らない、ということがなくなり、事務局の仕事の合理化、効率化が実現できます。結果、弁護士は「弁護士でなければできない業務」に注力することが可能 となります。
②働き方改革
次に、多様な人材確保と働き方の実現が可能 になると考えます。クラウドシステム、Web会議システムによる期日実施や依頼者・相談者との面談により、リモートワークが可能となります。これにより、子育て中の弁護士でも自宅や外出先で業務が可能となり、また住む場所も自由になり、ワークライフバランスを取りやすくなりますので、多様な人材の確保、働き方が実現できるでしょう。
③弁護士の付加価値の向上
最後に、「リーガルテックやAIの進化で弁護士が淘汰されるのでは」、という懸念を持ってらっしゃる先生もいるかと思いますが、筆者はそのようには思っていません。
弁護士がより弁護士業に集中できるようになるわけですから、弁護士としての自身の付加価値を発揮しやすくなる 、むしろチャンスではないかと考えています。
もちろん、AIでもできるレベルの回答しかできないということであれば、クライアントに選ばれるのは難しくなるとは思いますが、そこはプロフェッショナルとして自己研鑽が欠かせないということでしょう。
5. まとめ
リーガルテックやDXツールの発展で、法律事務所の仕事は迅速化や効率化が飛躍的に進みました。
離婚案件は特に打ち合わせが長くなったり、取り扱う資料が膨大だったりという傾向が強く見られる分野でしたが、さまざまなツールを要所で取り入れることで、スピーディーな対応ができるようになりました。
その恩恵はそれぞれの案件にかけるエネルギーの効率化・省力化にとどまらず、依頼者のニーズへの柔軟な対応や、顧客満足度の向上にもつながります。また、弁護士が本来業務に集中できるようになれば、業務の質も上がりますので、法律事務所がクライアントに提供できる価値向上が期待できます。また、業務効率化により、弁護士一人当たりが対応できる案件の量も増やすことができますから、結果として相談者や依頼者が弁護士にアクセスしやすくなることも期待できます。
まずは事務所内のできるところから、自分たちの仕事を楽にしてくれるツールを探してみることをおすすめします。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)