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「離婚テック」登場! 離婚後の面会交流や養育費、ITで「感情対立」を軽減

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離婚に伴う課題をITで解決を目指す「離婚テック」が注目を集めつつあります(c)Getty Images
離婚に伴う悩みや課題を、AI(人工知能)などのインターネットテクノロジーで解決を目指す「離婚×テック」(離婚テック)のサービスが日本でも始まっています。元夫婦の感情的な対立をITの力で和らげることで、離婚に伴う負担を軽減できるのではないかと注目されています。
目 次
  • 1. 養育費や面会交流を専用アプリがサポート
  • 2. 元夫婦の感情的な対立をテックで解消する
  • 3. 養育費の計算など離婚準備を支援するサービスも
  • 4. 3組に1組が離婚 離婚テック広がるか

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1. 養育費や面会交流を専用アプリがサポート

離婚や別居後、子どもの面会交流や養育費の支払いを巡り、元夫婦間のコミュニケーションが滞り、その結果として養育費が支払われなくなるケースが少なくありません

厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の面会交流の実施率は約30%、養育費の受給率は約28%と低迷しています。

こうした課題を改善するために2022年8月にリリースされたのが、スマホアプリraeru(ラエル)です。

開発・運営会社は、横浜市西区のGUGEN Software株式会社。電話番号やメールアドレスを交換することなく、子どもの面会交流や養育費支払いに関するコミュニケーションをアプリ上で完結できます。

2024年末現在で約7000人が利用しており、同社のアンケートでは利用者の面会交流の実施率が約80%、養育費の受給率が約84%に達しました。

「raeru」の特長の一つは、アプリでのやり取りをあらかじめ用意された定型文で行うことです。

子どもの面会交流や養育費といった話題は、たった一言の言い方がきっかけで感情的になりがちですが、角の立たない表現で構成された定型文を使うことで攻撃的な表現が届く可能性を排除 できます。

たとえば、「週末の面会交流の希望日を教えてください」「養育費の振り込みをお願いします/振り込みました」といった文面を選択することで、必要なことを簡潔に伝えることができます。

さらに、定型文では伝えきれない内容について自由文で伝えたいときには、AIが送信前に表現をチェックする仕組みが導入されています。AIは乱暴な言葉が含まれていれば自動的に送信をブロックし、文章を修正します

たとえば、「いい加減にしろ!引越し代を出せ」と打ち込んで送信しようとすると、AIによって「いい加減にしろ!」という部分が攻撃的な表現と判定され、「AIフィルターがブロックしました」と警告されます。そのうえで、「引越し代を出してください」という丁寧な表現に修正して送るよう提案がなされます。

「raeru」の操作画面
「raeru」の操作画面。左の画面はメッセージを送信する際のもので、100種類以上の定型文の中から状況に応じたものを選択します。右の画面は子どもの面会交流のスケジュールを作成する画面で、面会場所や時間、交流の仕方などを入力します。どちらも感情を排除して用件を簡潔に伝えられるよう設計されています。(GUGEN Software株式会社提供)

2. 元夫婦の感情的な対立をテックで解消する

「raeru」の開発のきっかけは、境領太(さかい・りょうた)社長が、知人のシングルファーザーから面会交流をするまでの負担が大きいという話を聞いたことです。日程と場所を決めるだけのやり取りにもかかわらず、元妻と毎回けんかになってしまうという話でした。

そこから境社長は「感情的な対立が原因なら、ITの力で解消できるはずだ」 との着想を得たといいます。実際に起きていることを知るため、境社長は離婚後の面会交流の付き添いや受け渡しを支援する一般社団法人でボランティアを体験。子どものための連絡であっても、元夫婦の感情的対立が大きな障壁になる現実を目の当たりに し、アプリの開発に乗り出しました。

アプリの効果について、境社長は「面会交流がスムーズに実施されると、養育費の支払いもスムーズになる傾向がある」と確かな手応えを感じています。

利用者を増やすため、定型文の送受信といった基本サービスは無料で利用でき、AIによる攻撃的表現のチェックなどのフルサービスの利用料も月額500円です。

さらに「raeru」では、元夫婦間の感情的対立が激しく、アプリを介してのコミュニケーションさえ難しい場合に備え、スタッフが連絡調整を代行する「サポーター機能」(月額5000円)も準備しています。スタッフが間に入ることで、当事者同士が直接やり取りをしなくても面会交流の日程を決められます。境社長は「相手とまったく接触したくないが、子どもの予定だけは決めなければならないという方の手助けになれば」と話しています。

こうしたサービスが評価され、横浜市は2024年12月にGUGEN Software株式会社とひとり親家庭の支援に関する連携協定を結びました。市内に住むひとり親家庭にアプリの活用を促し、養育費の確保や親子交流の支援を図っています。

また、境社長は当事者だけでなく、離婚事案を担当している弁護士にも「raeru」を活用してもらうことを想定しています。「面会交流について、元夫婦間の連絡や日程調整を弁護士が担うケースが少なくなく、業務負担になっています。アプリの活用によってその必要がなくなります」と考えるためで、各都道府県の弁護士会で勉強会を開いて利用を呼びかけています。

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3. 養育費の計算など離婚準備を支援するサービスも

離婚に関する負担軽減を目的としたサービスはほかにもあります。東京都港区の株式会社WonderSpaceがスマホのメッセージアプリ「LINE」上で提供するRe:conは、離婚に向けた準備を支援します。

4つの質問に回答するだけで裁判所の養育費算定表に基づいて月額の養育費を試算できる「養育費シュミレーター」や、探偵社監修のパートナーの言動から不倫をしている可能性を簡易的に診断する 機能が利用できます。

また離婚カウンセラーやファイナンシャルプランナーなどの離婚に向けて相談できる専門家を紹介するサービスも備えています。LINE公式アカウントを通じて2022年5月にサービスを開始し、25年1月時点で約5300人が登録しています。

「Re:con」の操作画面
「Re:con」の操作画面。養育費の試算やカウンセラーへの相談予約、離婚後のお金の悩みまで幅広いニーズに対応できるよう機能を備えています

4. 3組に1組が離婚 離婚テック広がるか

日本では年間約18~20万件の離婚があり、「3組に1組が離婚する」ともいわれるほど身近な問題になっています。

しかし、離婚後の面会交流や養育費に関しては、離婚協議で条件が決められていたとしても、円滑に実施されないという課題があるのが現状です。AIなどのテクノロジーを活用した「離婚テック」は、当事者間の感情的な対立を緩和し、子どもの成長環境を整える有力な手段として広がるのか。今後ますます注目されそうです。

(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)

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