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1. 「私の母親業、終わったな」と思った
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2. 娘と通じ合えている時間
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3. 家族ではないけど、運命共同体みたいな感じ
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4. 「離れたほうが彼のためになるのでは」と考えることも
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27歳で1度目の結婚をし、35歳で離婚。その後再婚し、38歳で第一子を出産した島田珠代さん。長女が生後8カ月のときに、がんが発覚した元夫は余命5年との宣告を受けました。そして、娘が3歳のときに離婚を決断し、親権は父親側に。離婚時に取り決めた「娘が中学生になったら、本人がどちらの親と暮らすかを選べるようにすること」という約束の時期がまもなく訪れるころ、元夫は息を引き取りました。中学生になる12歳の娘との共同生活が突如始まり、当初はうまくいっていたようだったのですが……。
1. 「私の母親業、終わったな」と思った
――離婚した後も、名古屋で元夫と暮らす娘さんとたまに会って食事をしたり、遊びに行ったりされていたようですね。娘さんが中学生になるタイミングで、大阪で一緒に暮らし始めたときのことを教えてください。
思い返してみると、私も娘もうまくやっていこうと意気込んでいたと思います。しばらくは、私の言うことを機嫌良く聞いてくれた娘だったのですが、お互いうわべだけの関係だったと感じます。そして中学2年のときに、彼女の中で溜まっていた不満が爆発しました。
「ママは私が大変だったとき、何もしてくれなかった! 小学生のとき、友達と色々あったし、生理もきたし、本当は遊びたかったけど家事をしないといけなかった! ママは私にばかり指示して、自分が悪いときも謝らない!」と、思いの丈をぶちまけられました。私は母に厳しめに育てられ、親は100%正しいと思って生きてきました。なので、そんな反抗的な娘の態度を許せなかったんです。「親に対して何てこと言うの!」と、娘の気持ちを受け止められませんでした。
その一件の後、娘は自室に閉じこもってしまい、2カ月経っても私と顔を合わせてくれませんでした。娘と口をきかなかった2カ月間は、今までで一番つらかったと感じます。
歩み寄っても娘は心を開いてくれなくて、食事も自室でしか食べない状態でした。そうなると私の母が「もう私じゃないとダメね〜」と腕まくりをする感じで孫の世話を積極的にしようとして、ちょっと若返るんですけど(笑)。それを見たとき、「私の母親業、終わったな」と思ってしまって。しばらくふさぎ込んでいました。
――その一方、お客さんを笑わせるために舞台で明るく振る舞うことは本心と乖離(かいり)していて、つらかったのではないでしょうか。
仕事の手を抜いたら今まで積み上げてきたことが水の泡になってしまうし、私にとって仕事をすることは生きることだから、何とか切り離して奮闘してきました。でも、舞台裏では落ち込んでいて。そんな私を気にかけて、子育て経験のあるあきえ姉さん(浅香あき恵さん)が相談に乗ってくれました。「珠ちゃん、世の母親は子どもの言動にカッとなるけど、やりたいようにやらせているよ。もう時代が違うの。腹は立つけどね」って。
また涙が溢れてくるんですけど……(涙する島田さん)。それは、娘が赤ちゃん返りというか、本当は私に甘えているんだなということに気付きました。特に、娘は口が達者な面があり、すごく腹の立つことを言うんです……。でも、その本当の姿は「ママ! ママ!」と叫んでいる小さい女の子なんだ、私に喧嘩を売っているんじゃなかったんだということがわかって。そのとき改めて、子どもの本心に気付く難しさに「あぁ、子育てって大変だな……」って思いました。そして、娘に謝ろうと思いました。
――島田さんも娘さんもつらかったと思います。お互い本気でぶつかって、だからこそ、氷が溶けるように打ち解けていったのではないでしょうか。
そうですね。その後、「親の言うことが正解だという考えはもうやめよう」って思いましたね。すべて本人の言う通りとまではいかないけど、「これはやめときや」と伝えた後は、本人のしたいようにさせるようにしました。
私には今、「ひろし」というパートナーがいるのですが、彼からは「放っておきなさい。母親が言ったことが世の中的に正解なのだということは子どももわかってはいる。けど、やってみたいようにさせてやれ」と教わりました。腹が立つこともあるし、「これは言っておきたい!」と思うこともありますが、ぐっと飲み込む。簡単なようですごく難しい。それも親の仕事でもあるんだなと、今では思っています。

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2. 娘と通じ合えている時間
――娘さんは今、おいくつになりましたか?
16歳の高校1年生です。今は大阪在住で、今回は東京公演があるので数日間家を空けています。内科医として働くひろしと同居しているので夜は一人ではないのですが、「(大阪在住で島田さんの実母の)おばあちゃんに手伝いに来てもらう?」と尋ねると、「全部一人でやるから大丈夫」とのことです。娘は料理、洗濯物、一通り全部できますね。
この前、仕事が遅くて帰宅が夜中になったときは「朝はゆっくり寝てね。お弁当は自分で作るから」って言ってくれて。その娘の手作り弁当をSNSに投稿したら、バズりました。
そんな娘は、小学校時代に父方の祖父母、そして、父親を亡くしました。当時のことを「私の黒歴史(思い出したくない過去)」と言っています。立て続けに身近な人の死を目の当たりにして、当時は感情が「無」という感じだったそうです。
娘にとって転機になったのは、中3のときにお笑いライブに行き始めたことです。私が芸人だからというわけではなく、大阪という土地に住んでいることで、おのずと若手芸人の番組などを目にする機会が多く、一度劇場に行ったそう。そこで、「こんなに人を笑顔にしてくれる人がいっぱい近くにいるんだ」と思い、その空間で笑っている時間は何からも解き放たれて気持ちが楽になったようです。好きな芸人さんの話を一生懸命話してくれるときが、私たちにとって通じ合える貴重な時間となっています。
3. 家族ではないけど、運命共同体みたいな感じ
――思春期の娘さんには、パートナーであるひろしさんをどのように紹介されましたか?
ひろしとは、二人目の夫と別れた後に出会い、10年近く交際を続けています。娘には、「あなたがいなくてやりきれなかったときに、精神的に助けてくれた人だよ」と伝えました。亡くなった元夫は、どちらかと言うとはっきり物事を言う人で、抗がん剤の影響もあってか感情の起伏が激しいこともありました。ひろしは穏やかな性格なので、娘の第一印象は「感じのいい人だね」でした。
「ママの性格上、そういう人がいたほうがいいし、私と女二人だけだと殺伐(さつばつ)とするから、私たちの生活においてワンクッションになる存在としていてもらったほうがいいかもしれないね」と、すごく大人な意見をもらいました。「お父さん」とは多分一生呼べないけど、ママの精神面や、私とママの女二人だけの生活の中にいてもらったらいいかも、って。なので、ひろしとは家族というより運命共同体みたいな感じですね。
4. 「離れたほうが彼のためになるのでは」と考えることも
――現在、娘さんとひろしさんと暮らされているそうですが、3人の関係性が良いことは結婚を決断する上での重要なポイントにはならないのでしょうか?
結婚の決め手は、3人の関係性ではないところにあるのでしょうかね。ひろしに出会ってから、私は人として向上しました。これまで生きてきた中で、私には本当に必要な人だと思うからこそ、このままの関係のほうが良いのかなと思ってしまって。
それと、私が彼からもらってばっかりで、ひろしには返せていないとも思うんです。もしかしたら、彼は与え過ぎて精神的な部分がすり減るばかりなのではと想像してしまい、「離れたほうが彼のためになるのでは」などあれこれ考えてしまうんです。
昔は愛をもらってばっかりでも「グー!(good)」みたいな感じだったんですけど、今は好きになればなるほど、愛について考えてしまいます。本当にひろしのことが好きだったら、彼をもう少し自由にしてあげたほうがいいんじゃないかなとか。そういう気持ちを持たせてくれたのが、彼でした。
――パートナーシップを解消する可能性もあると考えますか?
仮に、ひろしを手放しても私は人間力が上がっていると思うんですよね。離婚を経験して、相手も人間であること、相手の存在の大切さ、私がやきもちやきであることがわかるようになりました。もし輪廻転生(りんねてんしょう)があるのだったら、私の代で妬み(ねたみ)や「私だけを見て!」といった、相手を自由にさせてあげられない気持ちを克服してみせようと思っています。
――最後に、結婚、離婚、そして子育てと、酸いも甘いも経験している島田さんだからこその伝えたいメッセージがあったら教えてください。
そうですね……(考え込んで沈黙)。難しい……。(しばらくの沈黙後、ゆっくりと話し始める)
私の中に「離婚=働くこと=生きること=笑顔」という方程式がありました。もし、同じように考えて離婚を検討している方がいれば、「この方程式を現実に成立させるのは簡単ではないですよ」ということをお伝えしたいです。私は2回離婚して後悔はしていませんが、やっぱり離婚をしなくて済むならしないのが一番だと思うので。
もし、お子さんを連れて離婚しようとされている方は、独りになっても子どもを守るリボンの騎士(手塚治虫の漫画に登場する悪と戦う女性)でいてください。子どもはかけがえのない、弱い存在だから。姫や王子を守るライオンになってください。守るべき存在を傷つけようとする人がいたら、戦ってください。大事なもののために戦うときって、人は限りなくすごい力が出るので。どうか大切なものを守って生きていってください。
●島田珠代(しまだ・たまよ)さんのプロフィール
お笑いタレント。吉本興業所属。1970年、大阪府生まれ。17歳で芸人デビューし、現在はよしもと新喜劇をはじめ、お笑い番組やテレビドラマの俳優としても活動中。2024年秋、初のエッセイとなる『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』(KADOKAWA)※を上梓。
※著書『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』(KADOKAWA)
17歳で芸人デビューした島田珠代さんは50歳を迎え、「かっこ悪いところも弱いところも、今では見せられる」と半生を振り返ります。よしもと新喜劇では人気を集め、「パンティーテックス」も話題になる一方、二度の結婚と離婚を経験。プライベートにおけるリアルな心情、そして元夫が亡き後に引き取った、一人娘との関係性に悩んだ日々が綴(つづ)られています。仕事、結婚、離婚、そして子育てについて、改めて考えさせられる一冊です。
(記事は2025年3月1日時点の情報に基づいています)