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1. 夫婦の危機とは
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2. 夫婦の危機が訪れるのは結婚何年目? 必ずある?
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3. 夫婦の危機につながる原因は?
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3-1. モラハラやDVなどの虐待
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3-2. 不貞行為やセカンドパートナーの発覚
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3-3. 意見の相違
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3-4. 義理の家族との対立
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3-5. 借金や使い込みなどのお金の問題
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4. こんな夫婦は離婚する? 離婚する夫婦の特徴とは
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4-1. コミュニケーション不足
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4-2. 相手に対して気遣いや思いやりがなく馬鹿にしている
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5. 夫婦の危機を乗り越えられないとどうなる?
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5-1. 家庭内別居や仮面夫婦に陥ってしまう
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5-2. 不倫をしてトラブルになる
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5-3. 離婚の危機につながる
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6. 夫婦の危機をきっかけに離婚を考えるべきケース
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7. 夫婦の危機の乗り越え方
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7-1. 夫婦で話し合う
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7-2. いったん別居して距離を置いてみる
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7-3. カウンセリングを利用する
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7-4. 夫婦以外の家族を交えて話し合う
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7-5. 弁護士への相談や法律による解決をめざす
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8. まとめ 夫婦問題はこじれる前に弁護士に相談を
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1. 夫婦の危機とは
結婚当初は一生この人と添い遂げると誓い合い、お互いを思いやっていた2人。ところが、日常生活を送るなかでいつしか慣れ合いが生じ、ささいな意見の食い違いが大きな喧嘩(けんか)に発展したり、相手の嫌な面が目について我慢できなくなったりする場合があります。
相手と一緒にいる意味が見いだせず、「離婚」という二文字が頭の中にちらついてくるような状況……つまり、婚姻関係の破綻まではいかないにしろ、破綻の一歩手前の危機的な状況、もしくは婚姻関係に悪影響を及ぼしているような状況はまさに「夫婦の危機」 に該当すると言っていいでしょう。
2. 夫婦の危機が訪れるのは結婚何年目? 必ずある?
厚生労働省による「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」の「5 離婚」を見ると、2022年(令和4)時点の離婚件数は同居期間5年未満が5万2608組と最も多く、続いて同居期間20年以上が3万8990組で2番目、同居期間5年~10年未満が3万3141組で3番目となっています。
この調査は、結婚してから比較的年数が浅い時点で危機が訪れ、同居10年を超えるといったん落ち着くものの、同居20年を超えると再び夫婦の危機に見舞われ熟年離婚に至るケースが少なくない傾向を示しています。
同居期間5年未満の夫婦に関しては、私が代表弁護士を務める法律事務所へ来た相談者を見ても、あっさりと離婚を選択するという印象が強いです。「早めに相性が合わないことがわかってよかった」という声も聞かれます。夫婦としての時間や絆(きずな)が浅いため、婚姻生活にあまり執着する必要がなく、「まだやり直しがきく」という気持ちが大きい点も理由の一端だと思われます。
厚生労働省のデータが示唆するように、どの夫婦にも多かれ少なかれ夫婦の危機があるのは間違いありません。危機がない夫婦は稀にみる「超円満」なケースか、お互いに無関心であるため危機が表面化していないだけのケースかのどちらかだと考えられるでしょう。
3. 夫婦の危機につながる原因は?
夫婦の危機を生み出す原因としては、主に以下の5つが挙げられます。
モラハラやDVなどの虐待
不貞行為やセカンドパートナーの発覚
意見の相違
義理の家族との対立
借金や使い込みなどのお金の問題
3-1. モラハラやDVなどの虐待
夫婦の危機につながる原因として近年特に多いと感じるのは、パートナーからのモラハラ(モラル・ハラスメント)やDV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)です。
モラハラの特徴は「相手をコントロール(支配)する言動」ですが、相手の人格を否定する発言を日常的にしていたり、暴言を吐いて相手の自己肯定感を低くしたりすることで、相手を自分の意のままに操ろうとします。ただし、今まではひたすら我慢してきた状況でも「これってモラハラでは?」と気づく場合が増えてきており、夫婦の危機につながりやすくなっています。
DVも、暴力によって相手を支配している状況です。夫婦の危機ではあるものの、「暴力を振るったあとは優しくなる」「泣いて謝ってくるので許してしまう」といった理由で離婚に至らないケースもよく見られます。
3-2. 不貞行為やセカンドパートナーの発覚
不貞行為や、肉体関係はないものの恋愛感情をともに抱いているという「セカンドパートナー」の発覚も、夫婦の危機をもたらす大きな原因となります。
以前は不倫と言えば職場や同窓会での出会いがほとんどでした。一方、最近は出会いのハードルが下がっています。特にはマッチングアプリで知り合った不倫カップルが多く、誰でもその気になれば不倫ができるような環境になっています。
3-3. 意見の相違
価値観や意見の違いが夫婦の危機につながるケースはよくあります。
夫婦はもともと育った環境や考え方も違う他人であり、意見の相違があって当たり前です。うまくいっている夫婦は、価値観や意見の相違があってもコミュニケーションをとることで解決しています。
ところが、一方が話し合いを拒否したり、日常的にコミュニケーションが不足していたりする夫婦だと、夫婦の危機が訪れやすくなります。特に家事や育児に対する姿勢の違いがあり、一方が負担を感じているケースでは、夫婦の危機につながりやすいと言えるでしょう。
3-4. 義理の家族との対立
義親(配偶者の親)との関係も夫婦の危機を引き起こしやすい原因の一つだと言えます。特に義親との関係が悪化した際にパートナーが味方につかず、自分の親側についた場合は問題です。義親が離婚を勧めるケースもめずらしくありません。
3-5. 借金や使い込みなどのお金の問題
借金や浪費癖などのお金の問題も夫婦の危機につながる大きな原因となり得ます。お金の管理を完全にパートナーに任せていると、その浪費癖や借金になかなか気づくことができません。
筆者の扱った事件では、結婚10年以上の夫婦で、まじめに働いていたためかなり貯金ができているだろうと思っていたら、相手の浪費で実は借金まみれだったというケースがありました。
4. こんな夫婦は離婚する? 離婚する夫婦の特徴とは
夫婦の危機はやがて離婚に発展するケースも少なくありません。離婚を選択せざるを得ない夫婦には主に2つの特徴があります。
4-1. コミュニケーション不足
離婚する夫婦の特徴として、共通するものは何と言ってもコミュニケーション不足 です。対照的に、普段から会話や話し合いをしている夫婦が離婚に至るケースは少なくなります。コミュニケーションがとれていれば離婚したとしても円満離婚で、離婚後もよい関係を築いている場合が多いです。
筆者の扱った事件では、夫の不倫が発覚して離婚した夫婦に関して、離婚の本当の原因は夫の不倫ではなく、夫婦のコミュニケーション不足ではないかと思われたケースがありました。
夫はマッチングアプリで知り合った女性と不倫をしていたのですが、不倫をした理由として「家庭に居場所がなかった」「家族から無視されていると思っていた」と言ったとのこと。不倫相手に思い入れはなく、発覚後はすぐに関係を解消し、できれば妻と復縁したいということでした。
一方の妻側は、夫の仕事は激務で毎日疲れて帰ってきていると思っていたので、あえて話しかけずにそっとしていたそうです。ただし、食事はいつも夫の好物を用意していたのもあり、「家事も手を抜かずにやっていたのに不倫をするなんて許せない!」と当初は怒りが収まらない様子でした。
相手がどう思っているかがわかったのは、離婚調停の場。お互い弁護士を立てていたのでもはや引くに引けないところもあり、調停離婚に至ったものの、もう少し夫婦間でコミュニケーションがあれば離婚が避けられたのではないかと残念に感じたのを覚えています。
4-2. 相手に対して気遣いや思いやりがなく馬鹿にしている
いわゆるモラハラに該当するケースです。実際に人格を否定する発言や暴言まではないとしても、パートナーに対する思いやりや気遣いが一切なく、言葉の端々に馬鹿にしていたり、下に見ていたりする感じがあると良好な夫婦関係を続けるのは難しくなります。
LINEなどのメッセージを見るとよくわかりますが、相手が自分の意に沿わないことを言ったとたん、長文のLINEが続々と来て、何度もスクロールしないといけないほどの事例もあります。このようなモラハラ傾向があるパートナーだと、最初は何とか我慢しているのですが、いつか我慢の限界が来て、離婚という結末になりやすいです。
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5. 夫婦の危機を乗り越えられないとどうなる?
夫婦の危機を乗り越えられないと、さらに状況は悪化します。一生この人と添い遂げると誓い合ったときとは全く別の状態にはまり込んでしまいます。
5-1. 家庭内別居や仮面夫婦に陥ってしまう
夫婦の危機を乗り越えられなかった場合には、夫婦の危機を解決しようという意欲が消失してしまいます。その結果、夫婦間の会話が極端に少なくなり、家庭内別居や仮面夫婦になってしまう可能性が高いのです。
5-2. 不倫をしてトラブルになる
家庭内に居場所がないと感じると、心の安らぎや愛情を外に求めることで、不倫に走るケースも多いです。恋人やセカンドパートナーを家庭外でもつことで心の平穏を保ち、たとえば「子どもが成人になるまで」「夫が定年退職するまで」といった期限を心のなかで設定して何とか婚姻生活を続けている人もいます。
家庭内別居や仮面夫婦と言っても、不倫は民事上の不法行為に該当するため、配偶者から不倫相手に慰謝料請求がされるなどトラブルになる場合がある 点は認識しておきましょう。
5-3. 離婚の危機につながる
夫婦の危機を乗り越えられないと、最終的に離婚に至る可能性が高いと言えます。
夫婦関係が破綻していても、どちらかが単身赴任をしていたり、あまり顔を合わせなかったりしている場合は何とか仮面夫婦を続けられることもあります。しかし、単身赴任がなくなり、いざ同居するとなるともう耐えられないということで、離婚に至る夫婦もいます。
また、夫婦のどちらかに恋人やセカンドパートナーができた場合には、今までの結婚生活をリセットして、第二の人生を歩みたいという気持ちが強くなるため、相手に離婚を要求するケースが多いです。
6. 夫婦の危機をきっかけに離婚を考えるべきケース
夫婦の危機の原因が相手のDVや不貞行為など法定離婚事由にあたる場合には、離婚を検討したほうがよいかもしれません。特に相手のDVなどは、基本的に改善されることが期待できないため、早めに離婚して縁を切ったほうがよいと思います。
モラハラ傾向のある相手も同様です。日常的に嫌味や暴言を受けていると「自分はダメだ」「自分が悪い」などと思い込まされてしまい、自己肯定感が低くなり幸せを感じにくくなります。ひどい場合にはうつ症状なども発症するため、早めに離婚を考えたほうがよいでしょう。
また、「相手と暮らす老後を想像できない」「ひどい仕打ちをしてきた相手の介護をすることができない」といった思いを抱いている場合は、離婚を考えたほうがよいケース と言えます。弁護士としての経験上も、夫婦の危機をきっかけに離婚した人たちは「相手と老後を過ごす未来が考えられなかった」「今離婚しないと死ぬときに絶対に後悔すると思った」と声をそろえます。
夫婦の危機は、このまま結婚生活を続けるべきか、離婚して別の人生を歩むべきかを考えるきっかけになる とも言えます。
7. 夫婦の危機の乗り越え方
夫婦の危機を乗り越え、離婚という事態を避けるためには、主に5つの方法があります。
夫婦で話し合う
いったん別居して距離を置いてみる
カウンセリングを利用する
夫婦以外の家族を交えて話し合う
弁護士への相談や法律による解決をめざす
7-1. 夫婦で話し合う
夫婦の危機の乗り越え方としては、やはり夫婦間での話し合いが一番有効です。
相手から話がしたいと言ってきたときには、仕事で疲れていて面倒だと思っても、応じるほうがよいと思います。というのも、話し合いをしたいと言ったのに、相手が応じてくれず無視されたために最終的に離婚に至ってしまうケースが本当に多いのです。
なお、相手に弁護士がついてしまってからでは直接の話し合いは難しいと言えます。相手はもはや直接話をしたくないので弁護士に依頼しているのであり、その時点ではすでに離婚したい気持ちは固まっています。まず、揺らぐことはないと思って間違いないでしょう。相手の家族や弁護士などの第三者を交えた話し合いという事態になるまでに、夫婦間での話し合いを重ねることをお勧め します。
7-2. いったん別居して距離を置いてみる
いったん別居して距離を置いてみる方法も有効です。ただし、別居期間をあらかじめ決めておき、期限が来たら再度話し合う条件を設けておくことをお勧め します。期間を決めておかないと、結局そのまま離婚を前提とした別居に移行するケースが多いためです。
7-3. カウンセリングを利用する
当事者とカウンセラーの3人で話し合う「夫婦カウンセリング」は、特に一方に精神的な問題がある場合などは有効です。相手がなかなかカウンセリングに行ってくれないケースが少なくないものの、夫婦の危機を何とかして乗り越えようという合意があってのカウンセリングはかなり効果があります。実際に夫婦カウンセリングで離婚を回避した事例は豊富にあります。
7-4. 夫婦以外の家族を交えて話し合う
お互いの親を交えての話し合いが一般的で、ともに義親との関係が良好であれば、夫婦の危機を乗り越えられる可能性は低くありません。
ただし、両方の親を交えた話し合いは諸刃の剣です。うまくいくこともある一方、お互いの親が互いに悪感情を抱き、交渉が決裂すると、その後の修復はほぼ不可能です。親族で話し合ってから弁護士に依頼するという夫婦も多いのですが、お互いの両親の話し合いが決裂していると、その後に弁護士に依頼しても修復は非常に難しいのが現実的なところです。
7-5. 弁護士への相談や法律による解決をめざす
弁護士が間に入ったことで、お互いの思いを確認し、修復に努めて解決に至ることができた事案もあります。
妻が一方的に子どもたちを連れて別居し、離婚調停を申し立ててきたケースで、夫から筆者の法律事務所が依頼を受けました。夫にとってはまさに寝耳に水の話です。子どもたちを連れていかれているため、子どもを監護する親を指定する監護者指定に加え、子の引き渡しの審判を申し立てました。当初は夫があせった結果、妻側に猛アプローチをしていましたが、こうした解決法は逆効果になる場合もあり注意が必要です。
当事者同士では感情がじゃまをして率直な話ができないこともありますが、第三者が相手だと正直な思いを吐露できることがあります。
この件ではその後に弁護士から妻に連絡をとり、話をする機会を設けたところ、妻からは、別居を強行したものの果たしてこのやり方であっているのか、正直悩んでいるという気持ちを聞き出すことができました。いったん離婚を決意した以上、突き進んでいきたいという気持ちを強くもっていた一方、夫は育児に協力してくれていたし、自分だけの経済力ではやはり不安な面もあるとのことでした。
このケースでは弁護士に依頼したことでお互いの本音がわかり、また適度な時間と距離を置くこともでき、妻側の気持ちが徐々にクールダウンしていきました。結果的に、妻からあらためて夫と修復したい、別居は解消したいとの申し出を受け、夫婦の危機は間一髪で解消することができました。
8. まとめ 夫婦問題はこじれる前に弁護士に相談を
弁護士としての経験上、私はどんな夫婦にも大なり小なりの夫婦の危機は必ず訪れる と思っています。
夫婦の危機について、自分たちだけで解決したいという気持ちをもつのは当然のことです。もちろん通常の夫婦げんか程度であれば、第三者を巻き込まない解決がベストであることは間違いありません。
ただし、夫婦の危機にも程度があり、修復不可能になるレベルの危機が存在 します。それを放置するとまず間違いなく、離婚や家庭内別居、あるいは仮面夫婦の状況に至ります。いったん夫婦関係が冷え切ってしまうと修復はほぼ不可能です。なぜなら、人間は感情の動物であり、他人の感情を変えることはできないからです。
多くの弁護士事務所や法律事務所は無料相談を行っています。弁護士が仲介したことで、夫婦の危機を乗り越えたケースは少なくありません 。筆者の事務所でも無料相談にお越しになり、「相談をして気持ちが軽くなった」と言ってお帰りになる方も多いです。
夫婦問題は、こじれてしまう前に弁護士に相談をすることをお勧め します。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)